【回想レビュー】TAILS NOIRをクリアしたとき【ネタバレ有】
・去年の秋頃にクリア
・トロコンはしていません
ストーリー
皮肉屋のアライグマ探偵が、いつもと変わらない些細な依頼をきっかけに大きな陰謀に巻き込まれていく話。
こういう展開が嫌いな人間は僅かだと思っていますが、このゲームが「ノワール」という題を冠している通り、勧善懲悪!的なスッキリ爽やかな終わり方ではないのが特徴でした。
主人公はただ巻き込まれるだけ。抜け出そうにも抜け出せないし、立ち向かえるわけもない。一介の探偵ごときに世界の陰謀や真実は暴けなくて当然だから。
ちょっと前に流行った(まだ流行ってる?)いわゆるメタ視点ではない、フィクションの中からこういう現実的な部分をジワジワと突き付けられるのはある意味新鮮ですね。
本作の問題点は、多分やったことある人なら全員が感じている、想定外の方向への舵取りなのだろうなあと思う。私もプレイしていて「あれ…??」という顔をしてしまった記憶が鮮明に残っています。
個人的にはそれを「悪い点」とは思っていません。初めこそビックリはしたものの、考察の余地があるわね〜〜程度かなあ。インディーズだからこそ許される急ハンドルも含めて楽しんでいるし、むしろこういう粗削りな部分を味わいたくてPS Storeのセール一覧を限界まで下にスクロールしているまである。
ゲーム
選択肢を選んで会話を進めていくのがメイン。一瞬ステルスしたり一瞬パズルしたりはありますが、あくまでもオマケ程度(特にパズルはいきなり始まるのでインパクト自体はオマケ以上にありますが)。会話パートもなかなか面白く、ゆっくり丁寧に相手から話を引き出したり、脅したり。素直に探偵と名乗ってもいいし、嘘をついて素性を誤魔化してもいい。
ただし、何を選んでも結末は変わらない。
このへんは去年プレイした別のゲーム『The red strings club』に近いですね(これもいつか語りたい!)。
主人公のハワードがこれまた皮肉屋さんなので、洋画を見ているような嫌味ったらしいセリフ回しも度々見られます。味があって好きです。
その他
グラフィックがすごい。私はそこまで芸術面に明るくはないですが、そんな私にでもわかるような恐ろしく緻密なピクセルアートで、廃れたカナダの街を再現しています。
雨が降ったときに画面に水滴が付くような演出も良い。オシャレで好き。
音楽も魅力的。ハードボイルドなミステリー映画のOSTにありそうなダークジャズ(ノワールジャズとも言うらしい。知見だ!)がふんだんに使われていて、曲からどっぷり世界観に浸れる感じ。作中でクラブに潜入する場面があるのですが、キャストの女性が歌うナンバーがすごい。セクシーでダーティーで、ずっと聴いてられる。もう、とにかくすごい。
↑辛抱たまらず共有
そんなテイストの曲が多いですが、1ヶ所だけ毛色の違う曲が流れるシーンがあります。普通にプレイしているときは「お〜、素敵だな」程度にしか思わなかったんですが、クリア後にあのアコギを聴くと主人公のことを思ってじんわりと切なさがこみ上げてくるような…ここは、できればご自身で体験してもらいたいのでこのへんで。
まとめ
問題点もわかるにはわかりますが、退廃的かつハードボイルドな雰囲気を楽しむ分には素晴らしい作品だったと思います。
恥ずかしながら私は本作をクリアするまで「ノワール」の意味を知らずにいて、クリア後に調べて「そういうこと〜!?」と得心がいきました。だからってあんな…あんな結末は…。
ストーリー進行で人を選ぶのは、それはそう…なので、合いそうだな〜と思った方はぜひプレイしてみてほしいです。