ホジホジとアーン

入院翌日からオムツを穿いた。
膀胱直腸障害で、便も出ず、尿も出なくなっていたからだ。
オムツを穿いた時、「いい歳した大人が、、、。」と、なんかすごく恥ずかしかった事を覚えている。
その後90日くらいはオムツ生活が続き、今もパンツに尿漏れパッドを付けて生活している。
今は浣腸の力を借りて、便は出る。
尿は急な尿意に襲われ、1分くらいしか我慢できず漏れてしまうのでパッドは必需品なのだ。
もっぱらユニチャームさんにお世話になっているのだが、今の科学技術は本当にスゴい。
めちゃ薄で、パッドは付けていてもほとんど目立たず、しっかり吸収してくれる。
その上、吸水後もサラサラなのだ。
今の時代の、日本に生まれて良かったとしみじみ思う。

恥ずかしいと思う出来事は入院してから次々訪れた。
入院初期の方が未経験な事に遭遇し易いので、印象深い出来事が多い。
恥ずかしい出来事にもベクトルはあるのだが、ピークを超えるとそれ以下は大体が平気になる。
「アレよりはマシ理論」である。

入院から3日ほど経った頃、「あれ、ウンが出てねぇなぁ、、、。」とふと気付いた。
僕は朝飯後、昼飯後と1日2回の快便派だったのだ。
これはマズいのではないかと、看護師さんに声をかけてみる。
「あの、3日くらい便が出てないんですけど、大丈夫なんですかねぇ?」
「あ、じゃあちょっと見てみますねー。」
と言われしばらく待っていると看護師さんが現れ、シャっとカーテンを閉めると「失礼しますね〜。」と下半身を丸出しに。
「ちょっと詰まってないか調べますね〜。」と言われ、「え、調べる??」と考えていると、「身体横に向けますね〜、指を入れるので力抜いてくださいね〜?」との事。
機械とかじゃないんだ、そうか、そうよね、そうしないとわかんないもんね。
この時期は触覚も鈍く、力も全く入らないので正直指を入れられてもそんなに感覚はなかった。
さよなら羞恥心。
どんどん恥ずかしいことが無くなっていく気がした。
「あー、ちょっと詰まってるみたいなのでテキベンしますね〜。」
「あ、はいー。」と答えたものの、テキベンという単語がわからなかった。
摘出&便=摘便という事に、ホジホジされてから気付いた。
「はい、終わりましたよ、お疲れ様でした〜。」
「ありがとうございました。」
と言いながら、恥ずかしいやら、申し訳ないやら、色んな感情が入り混じった。
「でまもまぁ、病人やし、仕方ないよな、、、。」と思いながら心の整理をしていると、程なく夕食の時間になった。
いつものように、ベッドに食事がセットされ、食べさせてもらう為に看護師さんを待っていた。
すると、先程の看護師さんが来てくれた。
ホジホジしてもらった人に、アーンしてもらう事になるとは、、、。
そりゃ、ホジホジだけ担当する人なんていないもんね。
恥ずかしさを紛らわす為に看護師さんに何か気の利いた事でも言えればと思ったが、そんな大喜利の才能もなく、「さっきはありがとうございました。」なんてお礼の言葉も言えなかった。
「あ、飲み物から時計回りでお願いします、、、。」
と、いつも通りの言葉を発するのが精一杯だった。

この日僕は「アレよりはマシ理論」における、相当高い基準値の「アレ」を手に入れた。

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