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定額減税額の給与明細への明記(急に決まったわけではありません)

(注 この記事には実務的な情報はありません) 
 定額減税の給与明細への金額明記が批判を浴びています。
 確かに面倒だし、恩着せがましい。「でも、急に決まったことだったっけ?」と思って経緯を見直してみました。

昨年末の自民党税制改正大綱に記載あり
 昨年末の自民党税制改正大綱に記載がありました。最初からその予定だったのです。与党案の段階であって決まる前とは言えます。

上記イの給与等の支払者は、上記イ又はロによる控除をした場合には、支払明細書に控除した額を記載することとする。
(注 上記イ 令和6年6月1日以降最初に支払いを受ける給与等の源泉徴収税額からの、定額減税による控除
上記ロ 控除しきれない場合、令和6年中に支払われる給与等の源泉徴収税額から順次行われる、定額減税による控除

自民党 令和6年度税制改正大綱 27頁 注は筆者作成

令和6年2月の国税庁のQ&Aにも記載あり
 
令和6年2月5日の国税庁の「定額減税Q&A」にも記載がありました。最初に公表されたQ&Aです。この時点では法案可決前とは言えます。

10-4 給与支払明細書への記載事項
〔A〕給与支払明細書には、実際に控除した月次減税額の金額を「定額減税額(所得税)×××円」「定額減税×××円」などと、適宜の個所に記載していただくことになります。

令和6年分所得税の定額減税Q&A 令和6年2月5日付

改正省令は6月1日から適用 改正日付は3月30日
 給与明細は法律上は「給与支払明細書」と言い、記載義務や記載内容が法律で決まっています。定額減税の税額明記は「所得税法施行規則」の3月30日改正分で追加されています。

第百条 給与等の支払いをする者は、次に掲げる事項を記載した支払明細書を、その支払いの際、その支払いを受ける者に交付しなければならない。
一 給与額 二 控除額 三 還付額
四 定額減税の金額(新規項目)
附則 令和6年3月30日財務省令第十四号
第一条 この省令は令和6年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第百条第1項の改正規定 令和6年6月1日

所得税法施行規則 令和6年財務省令第十四号による改正から筆者要約

急に決まったかのような報道
 この一週間ほど急にいろいろ報じられるようになって「だいぶ前から分かっていたのに今頃なんで?」と思っていました。
 5月21日の読売新聞オンラインとNHKの報道について、急に決まったかのような報道がされていると感じました。
 読売新聞オンラインでは
「政府は(中略)義務付ける方針を決めた。(中略)減税額の明記義務化は、6月1日施行の関係省令改正で行う」
との書き方で、5月21日に決まったような書きぶりです。でも、関係省令改正は3月30日で、施行が6月1日なのです。

 NHKオンラインの記事では
「来月から実施する定額減税について、政府は(中略)給与明細に所得税の減税額を明記するよう義務づけることにしています。
「減税額を給与明細に明記するよう義務づけるため、関連する法律の施行規則を改正しました。」(3月30日に改正とは書いてない)

 読売新聞ほどではありませんが、やはり「直前に急に決めた」と思わせようとしているように感じます。

 定額減税については、多くの人が批判しているとおりと思います。私も「定額減税でなく定額給付のほうがよかったのでは?」と記事に書きました。でも、あたかも「減税額の明記のような、恩着せがましいことを、実務負担も考慮せずに直前に急に決めた」と誤解させるような報道には賛成できません。
 全てのマスコミ報道を確かめたわけではありませんが、読売新聞オンラインとNHKオンラインの記事を見て、そのように感じたので記事にしました。

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