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元ひきこもり嘘ばかりつく。

ハゲ発作

私は元ひきこもり。

突然の話だが、発作のように自分の髪の毛がボロボロと抜けて、ハゲてしまうという妄想がひきこもり期間中の私にはあった。

ハゲるのが怖いので、自分でバリカンを使ってスキンヘッドにして現実逃避を行っていた。

「社会的ひきこもり」の人たちが通うフリースペースがあって、私はそこに数年通っていた。その時にもハゲ発作があったので、突如としてスキンヘッドになって通所することがあった。

スキンヘッドの私の姿を見て他のメンバーは一瞬だけ鎮まる。
しーん!という音が聞こえてきそうなほどの鎮まりっぷり。

その10年後。今度は職場の同僚がハゲ発作(?)なのか何なのかわからないが、突如スキンヘッドになって出勤してきたことがあった。昔の私を見ているようだった。

この時も私を含めて同僚たちはしーん!としたのだった。かける言葉が見つからないのだ。一瞬鎮まった後に何事もなかったかのように皆仕事に戻った。

最初の嘘

外に出る機会が増えていくと精神も安定してきてハゲ発作も少なくなっていった。

そうなると本心としては髪の毛を伸ばしたかったので、少しずつ外出する機会が増えていくと共にオシャレをしたくもなっていった。

しかし美容院に行って4000円近く支払った翌日にハゲ発作に襲われてスキンヘッドになる恐れもあったので、ひとまず1000円カットの理髪店に赴くことから始めた。


1000円カットの店員さんは意地の悪そうな顔つきの男性に見えた。

店員「学生さん?」

私「はい・・・学生です・・・・。」

店員「〇〇大学?(近所の大学)」

私「いえ・・・市内の大学です・・・・」

このように私は咄嗟に嘘をついた。

ひきこもり生活を正直に言ってしまうとお説教されてしまう恐れがあるので、学生ということにした方が都合が良い。

しかし今後もこの1000円カットに通う可能性があるわけで、咄嗟に学生と言ってしまったので次回に備えて大学の知識をある程度入れておかないといけない。

そこで理髪店に行っていない時に「大学の文学部」という設定にすることに決めた。

もっと私の嘘のパーソナリティーを作り込んでも良かったのだが、やはり嘘を吐くことに罪悪感もあったので、そこまで積極的に創作する気になれなかった。

しかしそのような心配は杞憂に終わり、その後は私の素性を探るような質問をしてくることはなかった。

当たり前なのだ。店員さんは会話をするために「学生さん?」と聞いてきただけであって、私に関心があって深掘りしたいから聞いてきたわけではない。

だから質問自体に特に意味はないわけで、そのようなことがわからないほど当時の私はウブだった。

履歴書作り

フリースペースに通い始めた後に職安に通うようになった。

その職安の面接担当者の中にひきこもりに対して理解をしている方がおり、履歴書の作り方の相談を行うことになった。

その履歴書作りでは空白期間をいかにして埋めるかということが大きなテーマだった。

履歴書なんて会社に入るための手段であって、入ってしまえばこっちのもんなのであるが、当時の私はこれまたウブ過ぎて、空白期間を埋める作業が「ひきこもり」を否定するようで苦しくなっていた。

面接担当者「このひきこもり期間で得たものはある?」

私「簿記3級とヘルパーの資格。あとボランティアを半年続けていました。」

面接担当者「それ使おう!」

ボランティアの期間を伸ばし、簿記やヘルパーを取得するために勉強をしていたということで空白期間を埋めていった。

ひきこもり期間で得たことは本音を言うと、自身の本心がわかったことや、能動性を取り戻したこと。また自分を愛することや大切にすることが大事ということにも気付いた。

このように「ひきこもり」は自身を見つめて自分を知る期間だった。しかし、そんなことは世の中に出たら何の価値もないようだった。

出来上がった履歴書は嘘まみれの代物で、私には何の価値も感じられなかった。

なぜ空白期間を埋めないといけないのか?これじゃあ刑務所に入っていたのと変わらない。

職安からパートの仕事を得たので成果は出たわけだが、私には受け入れられないものがあった。

正直に答えると面倒なことになる

四国のお遍路をしていた時に民宿のおばちゃんに何をしている人なのかと聞かれたことがあった。正直に答えてしまうと一般的な答えが返ってきた。

「そりゃあいけん!私なら無理やりにでも(学校に)行かせるね!」

このおばちゃんが私の親でなくて本当に良かった。
中学時代に無理やり学校に連れていかれそうになった時に父と殴り合いの喧嘩になった。

ひきこもり当時から私は両親が無理やり学校に行かせなかったことに感謝していた。無理やり何かをやらせていたら私はますます心を閉ざしてひきこもり期間が長引き、犯罪を犯していただろうな・・と思っていた。

見守るということはすごく忍耐が必要なことで、見守り続けた両親は立派だと思う。

「ひきこもり」が終わり、今は「何故結婚していないのか?」問題が浮上している。

たまに聞いてくる人がいる。「結婚してないんですか・・?」「彼女はいないんですか?」という無神経な質問。

「彼女はいるよ!」と答えたら最後「女性には適齢期があって・・」と偉そうに言ってくる。そんな時は黙って時間が過ぎるのを待つ。

決して私の彼女が神経の難病があって車いすユーザーで、同居するとなると・・なんて一切言わない。黙っていると女性からは露骨に軽蔑の眼差しを喰らうわけだ。

所詮職場の仲の人なので、軽蔑されようが説教されようがどうでも良い。

しかし最近は彼女とか結婚とかは立派な何かしらのハラスメントになるそうなので、その辺の発言はデリケートな問題になってきており、以前より慎重になってきた。良い時代だ。








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