オーリエ

TottenhamHotspur-Liverpool

本文長すぎます。結構こってりと書いてますが、よろしければ覗いてって下さい。現在プレミアリーグの首位を無敗で快走するリヴァプールとスパーズの大一番、マッチレビューです。

スペシャル🐶が用意したサプライズ

スタメン発表がされてからバックラインの配置の予想合戦が起こっていましたが、結局ガスペリーニのアタランタを彷彿とさせるオールコートマンツーで試合は始まります。マネにタンガンガ、サンチェスにサラー、ロバートソンにオーリエをつけ、ローズにTAAをマークさせる、

普通に嵌めていくならフィルミーノはトビーが捕まえるはずなんですが、彼のプレーは中盤エリアまで降りて前進に貢献するという性質を持っているのでマンツーには行かず常にバランスを見た位置取りをしてサンチェス、タンガンガがノンストレスでマンツーに臨めるある種保険のような存在としてサポートを行っていました。この意図が上手くハマりサンチェスはいつも以上のパフォーマンスを発揮できていたと思います。タンガンガに関しては、筆者の予想を軽々と超えるパフォーマンスであのサディオマネに対し前半前を向かせたのは最初ファウルで止めた一本だけだったと思います。それ以外は前を向かせず、きっちり奪取してそのまま運び、前線に届ける場面もありました。1minのシュートブロックのシーン、フィルミーノが切り返してフォームに入った瞬間にシュートコースに入り、しっかり反応してブロックを出来たことでうまく試合に入ることが出来たのも大きかったと思われます。この大一番で我らがスペシャルワンが用意していたサプライズは、見事に形となり機能したわけです。表記上は3バックでしたが、蓋を開けると基本陣形は4バック、ローズがTAAを見つつサラーを見るサンチェスのサポートができる位置に立ち、タンガンガはマネ監視のために右ワイド気味に出てオーリエを前に出しオーリエはロバートソンの監視を主なタスクとして請け負っていました。リヴァプールはビルドアップ時にヘンダーソンが落ちて3バックを形成、スパーズの2トップに対して数的優位を取り余裕を持った保持を行うとともに武器である両サイドバックに少し高い位置を取らせてロングボールメインで前進してくるので、マネ、サラーだけでなく両SBにもデート相手を設けたのはサイドチェンジからの高精度クロスを牽制するという意味で構造と成果が一致していると思いました。ただ、リヴァプールもそのまま抑えられるほど簡単な相手ではありません。彼らが狙ったのは守備時にファジーなエリクセンのポジショニングとウィンクスでした。エリクセンはマンツーマンの守備によって必ず生まれる余るプレイヤー、ここでいうワイナルドゥムが右HSに陣取ることでそれに釣られて右に位置取りがズレます。するとウィンクスのカバー範囲が広大になり、さらに右HSにはチェンバレンが居てそちらのケアもしなければなりません(ここはデレ、ソンが降りてきてカバーしてくれる場面もありました)。加えて最前線の自由なあの人がウィンクスの脇に入り込んであっさり前進していこうとするのでたまらずついていく場面が多くありました。しかしその時点で後手を踏んでいるので追いかける形になり、トビーの脇を取られる場面というのも多かった印象です。ですが全体的に見るとウィンクスは随所に顔を出してプレス回避に貢献し、「展開」を意識した無難なパスではなく「打開」を念頭に置いたボール保持を意識しているように見えました。前半タンガンガ、サンチェスの活躍の活躍に隠れて一番リヴァプールという組織全体と闘っていたのはウィンクスだったのかもしれません。前線で最も厄介だったのは間違いなくフィルミーノでした。前述しましたが、タイミングよく脇に流れて空けた真ん中にサラー、マネが侵入して自らはずれたマンマーク、トビーの脇を狙って常に走り続けていました。

35min当たりのこのシーンが最もわかりやすいプレーだったと思います。マネを注視するタンガンガの横に入っていって最後はマネのシュートを演出しました。失点シーンに関しては本当にフィルミーノをほめるほかないと思います。トビーの絞りが甘かった等細かいことを言い出せばきりがないかもしれませんが、とにかくあのシーンはタンガンガが自信を失わないかが心配でしたが、そんなこともなくその後もしっかりプレーしていたので杞憂に終わりました。

一発狙いのアタッキングとルーカスモウラ

リアルタイムで観戦してるときは基本脳筋観戦なのでこんなんアタッキングで書くことねえやんバーカ!!!!!!と思って観てたんですけど、意外とありそうです。基本的に引いて守っていたこの日のスパーズの攻撃手段は主に3つ。ひとつはガッザニーガからのロングパントをルーカスに蹴りセカンドボールを回収、ソンかデレが保持してそのままフィニッシュに持っていく形です。ルーカスの空中戦がぶち壊れレベルで強いのは有名な話ですが、さすがにファンダイク、ジョーゴメス相手に競ったうえでマイボールにしろ、というのは無理な話です。ですが何やかんやフィニッシュまでたどり着く場面はあったので破綻はしていなかったかと思います。もうひとつは外のレーンで受けたソンの単騎突破です。これに関しては望みが薄かったのですが、失点後ルーカスと配置を入れ替えることで純粋な突破能力では勝るしこの日パスとトラップ以外は仕上がっていたルーカスの方がするすると抜け出してチャンスの雰囲気を作っていた感じがしました。そして最後、これが一番効率が良かったヘンダーソン狙いのショートカウンターです。リヴァプールがネガティブ志向のパスで後退していく時、必ずと言っていいほどヘンダーソンは最初から後ろ向きでボールを保持します。スパーズが狙ったのはこの受けた瞬間です。ヘンダーソン自体に隙があればそのままかっさらってゴールに向かう、ヘンダーソンからさらに後退していく素振りが見えたら全体で押し上げてスペースを圧縮し苦し紛れに外に蹴らせる、アバウトなボールを蹴らせてマイボールにする場面が何度かありました。前節までのプレッシングの構造同様単発のプレスを打ち込んでいたら簡単に往なされてスカスカになったミドルゾーンを蹂躙されていたと思うのでプレスを上手く行っていたのが押し込まれる展開とはいえ対等な戦いが出来ていた理由だと思います。

変化の小さな後半、嵐の前の静けさ

後半始まってソンとルーカスの配置が元に戻ったこと以外は配置変更は無しです。マンツーの構造を生かしてフィルミーノにより自由を与えるためにサラー、マネが降りてきてボールを引き出す、サンチェスとタンガンガを引きずり出す動きも同様です。ただスパーズ側には攻撃守備ともに変更点がありました。プレッシングのフェーズでは前半2トップはCBの前に構えてある程度引いた守備を行っていましたが後半に入りCBに徐々にプレスをかけヘンダーソンが入って3バック形成する余裕を奪い、縦パスを防いでいきます。これによってリヴァプールはフィルミーノの列下げを利用した前進が出来なくなっていきました。攻撃手段として加わったのがウィンクスのドリブルでの前進からの縦パスです。ロングボールをルーカスにあてるだけでなくデレの動き出しの多さを無駄にせずしっかり活用するウィンクスのパスが増えたことで深くまで侵入できる機会は徐々に増えていきます。ですがここが通っても厄介なのがワイナルドゥムのボール奪取能力です。デレ、ウィンクスからルーカスに入ってドリブルを開始してもワイナルドゥムに引っ掛けられてこぼれも回収される場面が多くありました。それもあって膠着状態がしばらく続いた後モウリーニョはミドルスブラ戦と同様アルゼンチン人コンビを入れて前線の活性化を図ります。

積極的な仕掛けと用意した罠

ラメラ、ロチェルソを入れたのち配置が大きく変わります。オーリエをSBに降ろしてタンガンガを左SBに、中盤は守備時デレを降ろした4231、攻撃時はウィンクスをアンカー配置して4141を形成して前線の厚みを作ります。前線からのプレスもより強くなり、リヴァプールが後ろ向きになった時点で「守備時」の442から「攻撃時」の4141に切り替えて積極的に仕掛けます。リヴァプールはより保持を失いラメラが空けがちな右外レーンを使った前進しかできなくなります。前線の枚数を増やす事で、ルーカスのドリブル突破を引っ掛けるワイナルドゥムがこぼすボールを回収できるようになっていき、そこから残った前線の選手たちが裏抜けしてシンプルにSBの裏を使う、DFラインの後退を利用して大外のオーリエを活用するなど多く選択肢を作ります。ソンの決定機もロチェルソのボール奪取からですし、ロチェルソの決定機は外に余ったオーリエを使った攻撃から生まれたものでした。どちらも一世一代の決定機でしたがどちらも枠に飛ばすことが出来ずそのまま力尽きました。

認めるということ

あの時あれが入れば、もっとやれることが確かにあったかもしれませんが、そんなことお構いなしに試合は進んでいくサッカーというスポーツの中で、状況に対応してうまく戦っていたのはリヴァプールであったと思います。しかし、スパーズがこの試合から得たものはリヴァプールのそれより大きいと筆者は信じてやみません。シーズンはこれからも続いていきます。シーズンが終わったとき、みんなで笑えるかどうかはその時にならないと分かりませんが、それでもこれまで作ってきたものを信じ、All or nothingを「あんなこともあったね、」と観られる日を目指してこのチームを追い続けます。次は再試合となったミドルスブラ戦です。こんな試合ができるチームが勝てないわけがありません。だいぶ長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました!COYS!!!

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