TottenhamHotspur-ManchesterUnited

ひっさしぶりだなァ！！！！！

ユナイテッド戦マッチレビューです。スタメンはこちら。

逃した魚は大きい

コロナウイルスの影響によるフットボールの中断が長く続き、やっと再開した最初のゲームの入り方はスパーズにとって理想的なものであったと言えます。ジョゼが試合後の会見でユナイテッドにボールを持たせて彼らの得意なカウンターアタックを牽制したんだ、的なことを言っていましたがまさにその通り。まずケインとラメラの二人はマクトミネイとフレッジの前に立ってCBからボランチを経由した前進のルートを遮断しました。横からのルートはソンとベルフワインで塞ぎ、バイタルエリアはシソコウィンクスの二人でリスク管理をしっかりこなしました。

単に配置以外の話だとベルフワインの器用さが攻守ともに効いていました。ここでは守備面での話をします。CBがボールを持った時にはビルドのルートを徹底的に外に逃がしていたこの日のスパーズですが、ベルフワインはルークショーと同列を取り、ショーに出ればすぐにプッシュできる(この時縦のルートはオーリエが塞ぐ何気に気の利いた位置取りをしていました)準備、且つフレッジ(orマクトミネイ)へのルートも遮断する本当に100点満点の立ち位置をキープし続けました。ここまで話し続けた中央へのルートを塞ぐ話は全て1人のプレーヤーのためのブロック形成だったと思われます。それこそスパーズが逃した魚、ブルーノフェルナンデスです。前半20分頃までは中央を塞ぎつつサイド奥まで入り込まれたときはウィングとサイドバック、ダイアゴナルで入ってきた中央の選手はウィンクスが塞いで対応していたのですが、20分を過ぎた辺りからブルーノがユナイテッドの中央2枚の列まで降りてボールを持ち始めます。ボールを持つこと自体は特別問題視されるようなものでもないのですが、それで前を向かせるとまあ面白いように縦パスが代わりに前に出たマクトミネイやらラッシュフォードやらマルシャルやらに通ります。前半、ユナイテッドに中央ルートから前進されたときは全てブルーノからの供給であったと言っても差し支えないでしょう。また、先ほど述べたようにダイアゴナルに入ってきた選手にはウィンクスがついていく、それ自体はリスク管理の一環として問題ないのですがその時ペアのシソコの意識もウィンクスが流れたサイドに向いてしまうのです。これに起因してバイタルを空けてしまう案件がいくつかあり、そのうちの一つがラッシュフォードの決定機に結び付きました。それを演出したのもブルーノフェルナンデスなんですから、こんなに恐ろしい話はありません。

前半特筆すべきピンチはそれだけであとはブロックの外からの望みのあまりないクロスからでしたから、ソリッドなブロックに基づいた安定した守備が出来ていたと言えるでしょう。ショーの動きについて言及すべき点があるのですが、後半により顕在化するので後半のチャプターでお話しすることにします。

得た魚も大器

スタメン発表の時点で分かってはいましたが、スパーズはビルドアップ時にデイビスを吸収した3バック形成でビルドを行いました。しかしこれまでと異なったのは主な出口を右サイドのキプチョゲではなく左サイドのデイビスからソンorラメラに設定したいた点です。これはこの後語る前進した後の組み立てにもかかわってきたりします。出口の先でソンが持ち、スパーズの攻撃のほとんどは左サイドから始まります。ラメラが左に寄って2人がクロスオーバーして空いたスペースを代わる代わる突くように前進します。ケイン、ラメラを2CBで監視するような形を取ったユナイテッドの守備組織の意識は右寄りに向いていきます。加えてベルフワインが右ワイドではなく右HSに位置どったことでショーも絞らざるを得ず、そうなると大外のセルジュオーリエが空くわけです。ちなみに前半のガチャは全敗でしたが。ラメラに関してはソンの連携、というかラメラの球離れのタイミングがいまいち周りとあっておらず攻撃を止めてしまうことも多々ありました。それ以外の面では引き出す動きも前を向く技術もしっかり発揮されていただけに残念だなあという雑感です。

話を戻します。前半スパーズの前進が円滑に進んだ理由にデイビスのサポートの存在も挙げられます。当然ラメラとソン2人で前進していれば詰まることもあります。そんな時縦を通したデイビスがそのまま出て後ろで構えサポートを行い、カウンターの阻止にも一役買っていたと言えます。中央でボールを保持したときに一番貢献したのはハリーウィンクスでしょう。ほぼすべての場面に顔を出し、狭いスペースで受けた時には視野を広く持って広いスペースに自ら運ぶ、簡単に叩いてもう一度受けなおすの判断が完璧、サイドに散らすときの回転も理想的で中断前より中距離のパスの質が上がっていたように見えました。球種が増やせたのは彼にとって大きな進歩と言えるのではないのでしょうか。そして得点シーンですが、あれは完全にデザインされた攻撃の外からユナイテッドの守備を文字通り破壊してもぎ取った一点でした。ああいう風にデザインされた攻撃を持ちつつ理不尽にもぎ取れる攻撃を有しているのは非常に重要であると思います。てなわけで前半1点リードして後半を迎えます。

ドバっと出てスパッとね

後半開始時にメンバー変更は無く両チーム前半と同じメンバーでスタートしました。スパーズの方は守備時ケインとラメラが並ぶ形は変更ありませんでしたが、ユナイテッドはマクトミネイを一列下げて3CBとまではいきませんが、ビルドアップを円滑に進めるための策を打ってきました。前半でいうところのブルーノが時々降りて受けていたムーブをマクトミネイが約束事として実行し始めた、というイメージです。真ん中のフレッジはある程度省略することを前提に、ルークショーに内気味の位置を取らせて進めたりジェームズの斜めの動きを生かしてスパーズの2ボランチのラインまで押し上げることをひとまずの目標として、進めた先で横からブルーノの動き出しを利用したスピードアップを図ります。しかし前半同様ソリッドなブロックを作って入れ込む隙を与えず、最後はブロック外からのクロスを出させて封殺するという対処をしていました。流れとして異なった点はユナイテッドが保持してスパーズがブロックを敷くという展開に加えて短いトランジションを繰り返すショートカウンターの打ち合いが多くなった点です。ユナイテッド相手にその展開になるのはあまり好ましくありませんが、そんな展開で無双するのがシソコです。50:50のボールは全て刈り取り、運べるスペースがあれば運ぶ彼のダイナミズムがふんだんに発揮される展開がやってきます。前半はなかなか苦しかったシソコですが後半はトランジションの応酬の中でかなり存在感を放っていたと思います。

共通項は国籍とポジションのみ

後半の展開に大きな変化が生まれたのはポールポグバがフレッジに代わって出てきてからです。ポグバが出てきて以降彼の降りて受ける、シンプルながら的確な展開に重心を下げることを余儀なくされました。そうなると増えるのがマグワイアの持ち出しです。63分のシーンなんか特にそうで、マグワイアの持ち出しに合わせてブロックをずるずると押し下げてしまいポグバがバイタルエリアでフリーになるという最悪のシチュエーションに置かれました。ポグバ→ブルーノ→マルシャルの順で繋がれてビッグチャンスを作られました。ポグバとブルーノに余裕を与えればそりゃそうです。このシーンはダイアーがチームを救い、以降は持ち上がりに合わせてブロックを下げることはなくなりましたがあの一本が決まっていたらその後の展開がどうなっていたか正直考えたくもありません。

ポグバが前で持つと厄介なのはブルーノだけではありませんでした。前述したショーの話が出てくるのはここです。ポグバは運びもできるのでチェックに来たシソコを連れて外に出て、真ん中を空ければほぼ確実にショーはそのスペースを認知して入り込んできます。前半から繰り返された動きではありましたが、ポグバの動きにつられてより大きなポケットを作ってしまう場面もありました。そこから際どい場面を作られたこともありましたし、やはり今回の試合で最も大きかったのは空けたスペースもカバーできる密度の高いブロックを形成できていたという点でしょう。ま、PKのシーンはダイアーが振り切られた後に誰もいなかったんですが。せっかく密度の高いブロックを作れていたんだからあそこを防げなかったのは痛かったなと思います。その後試合はよりオープンになりシソコ無双の様相を呈していましたが結局最後までお互いビッグチャンスを作ることは出来ず。ロチェルソは違いを見せる場面がいくつかありましたが得点には至らず。ジェドソンも適性のないように見えたポジションで苦しみました(追いつかれてからソンとケインの前残しで左サイドに回ったときはちょっとかわいそうでした)オーリエに断罪チョップを喰らわせたくなる場面がいくつかありましたが最後までこのまま進み痛み分けとなりました。ケインに関しては、約半年ぶりのゲームで試合勘が恐らく死んでおり殆どチャンスにも絡めませんでした。2CBを引き連れて前に出ることでことでスペースを作り出す動きはありましたが、今後に期待です。というか彼の場合今はまだ休むのが仕事な気もしますが、、いや、こんなこと言ってもしょうがないですね。

うわ、次火曜試合なの？草

再開初戦にしては出来すぎくらいの試合だったと思いますが、ユナイテッドもそれなりのクオリティを見せたのでまあ引き分けで妥当かな。と思います。再開したとたんドバっとミッドウィーク祭りなのでしっかり休んで西ハム戦に備えてほしいですね。次はケインのゴールが見たいです。てなわけで長々とお付き合いいただきありがとうございました！

COYS