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THE ROAD FOR SHOGO~浜田省吾への道 Vol.3田家秀樹その4

浜田省吾の魅力を、浜田省吾を取り巻くさまざまな人たちと浜田さんとのエピソードトークから紐解く特別企画。8月のインタビューゲストは、浜田省吾の“はじまり”から“いま”に至るまで、すべてをルポルタージュしてきた音楽ライター・作家の田家秀樹さん。4回目は、2011年震災直後の4月に行われた、ON THE ROAD 2011。戸惑いの向こうに見えたものは?!

インタビュー:屋形英貴(広島FM)


「このコンサート会場には、何が通い合っているんだろう?」ってことがわからないまま始まった、不思議なコンサート

田家
音楽に関わってる人間として、とっても大きな転機になったのが、 2011年、ontheroad2011ですね。震災の後のツアー。こんな時期に音楽をやっていいのか、 コンサートツアーはできるのか、、、
 
―震災直後に、ツアーには出るっていうことを、この時皆さん決めてらっしゃるんですよね。
 
田家
岩熊さん初め、浜田さんとの話の中で、「こういう時期だからやろう」っていうことになった、そういう始まり方でしたね。
初日が静岡のエコパアリーナで、まだ、東京は計画停電で、余震がかなりあって、 で、東京駅に行くときの電車が、こう、暗くはないですけど、照明が半分ぐらいしかないんですよ。東京駅がまだ余震があったりするっていう、新幹線が出るのか?走るのか?っていう中で、まあ、向かったんですね。
で、初日ですから、始まる前から、ファンの方が会館の周りに集まってくれてはいたんですけど、ホントに始められるかな?っていう空気が、こう、会場の外にも漂ってて。もちろん、(会館の)中にも。
リハーサルの時から、あんな緊張したリハーサルは、ミュージシャンも含めて、 この場にいた人は、全員そうだったでしょうね。

(ライブが始まっても)お客さんが拍手していいのかどうかわからないっていう、そういう、こう、不思議な、 これをこう、「待ってました!」とも言えない、「ハマショー!」「浜田!」とかっていう風に言ってはいけないみたいな空気がね、 会場に。ずっと漂っていましたね。
それで、まぁ、コンサートが進んでいくんですけど、お互い、やる側も、どういう、こう、力の入れ具合でライブをやればいいんだろうかっていう。
客席の反応が違いますから。「ウワァー」とか「オーッ」とかって声が返ってこない。でも、こう、 みんなこう、なんかこぶしを握ってるみたいな感じがあるっていう。で、中には腕組みしてる人がいるみたいな。お互いが、こう、「今、何をやってるんだろうか?」ってことを探りながら、「このコンサート会場には、何が通い合ってるんだろう?」ってことがわからないまま 始まったっていう、不思議なコンサートでしたね。


ホッとするような、救われたような、 生まれ変わったような、うん、そういうアンコールでしたね。

それがね、途中から、ほぐれてくんですよ。うん、そのほぐれ方が、すごく、こう、 まあ、愛おしかったっていうのかな。特に、それは、まあ、アンコールになってからなんですけど。
コンサートの中盤に、「A NEW STYLE WAR」から「僕と彼女と週末に」にって流れがあって、 その時のね、こう、不思議な気分。客席も、この歌を 今、どういう風に聞けばいいんだろうっていう。
まぁ、「A NEW STYLE WAR」にしても、「僕と彼女週末に」にしても、現実が起きちゃってるわけですね。歌の中の現実が目の前に降りかかってて、こう、ニュースでやってるようなことが歌になってる。
で、この歌を歌として受け止めきれないみたいな。この歌を聞けてよかったっていう反応ができないみたいな。 もう、もう、重苦しいコンサート。

それがね、アンコールでね、弾けたんですね。
あれはやっぱり、「あ、コンサートってのはこういうもんなんだ」っていう、ホッとするような、救われたような、 生まれ変わったような、うん、そういうアンコールでしたね。
それは多分、あの時にツアーやった人たちは、まあ、皆さんそうだったんでしょうけど、浜田さん(ツアーをやったのが)早かったですからね。
で、(ツアーを)辞める人たちがいっぱいいる中で始めちゃったっていうことの気負いと覚悟と、それと、自分たちが歌ってきたことを背負ってるっていう、 その、まぁ、責任感もあったんでしょうね。それが全部爆発したアンコールでしたね。

曲はね(アンコールで演奏した)「I am a father」ですね。
あれでみんな、もう、解決したっていうか、ここに来て、報われたと思ったんじゃないでしょうかね。


「THE ROAD FOR SHOGO~浜田省吾への道」8月は、浜田省吾さんのライブを最もレポートしてきた音楽ライター・作家の田家秀樹さんが、浜田さんのこれまでのライブについてたっぷり語ってくれます。次回は、広島FM「#PUSH」で2023年8月30日(水)OA予定


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