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「探求のススメ」からのまなび

敬愛する大先輩であり、HUG for ALLの理事としてもお世話になっている宮地さんの著書「探求のススメ」。3月に入手してから何度も繰り返し読んだのですが、じっくり時間をとれるときにレビューを書きたい!と思って、ゴールデンウィークまで寝かせてしまいました。

HUG for ALLとして子どもたちにかかわるときにも大切だなと思ったことがたくさんありました。第1章と第2章の内容を中心に、備忘録としてまなびをメモしておきたいと思います。

◆子どもが自ら学び始めるために重要なこと
「大人が教えない」ということ。未来に向けて「決められた正解」なんてものはなくて「自分で正解を作っていいんだ」と、子ども自身が気づくことができるようにすること。

◆そのための大人の役割
探求の伴走者であり支援者。子どもが自分で調べたり考えたりしたくなる環境を整える人。ファシリテーター。
※「知の番人」として、自分の知識を伝えたり、教えたり導いたりする存在ではない。

◆大人がファシリテーターとして大事にすべきこと
1)信じること:子どもの可能性を信じる
2)感じること:子どもの繊細な心の動きを感じる
3)待つこと:計画通りにいかなくても信じて待つ
4)一緒にいること:正解のない道を子どもとともに楽しむ

◆第一章を読んで
私がHFAで実現したい「まなび」とか「子どもとHUGメンバーの関係性」のイメージって、まさにこんな感じだなと思います。

「正解」に向けて、舗装された道を前に進んでいるわけではない。どこに正解があるのか、大人もわからない。子どもたちといっしょに迷ったり悩んだりしながら、子ども自身が道を切り拓いていくことができるように、子どもを信じて、子どもの繊細な心の動きを感じて、自分は子どものあとからついていくくらいの気持ちで、子どもが主体的に学べる環境だけは整えていく。

普段会社の仕事で「子ども主体の保育」についてお話させていただくことが多いのですが、実は考え方って全く同じ。対象が乳幼児であっても小学生、中高生であっても、本質は同じなんだなと改めて感じています。

そして、これって別に子どもに限ったことではないんですよね。大人同士でも同じだなと思います。

なにか「正解」があって、誰かに「これは正解じゃない」って評価される環境って結構ストレスフルで、楽しさよりもしんどさを感じやすい。でも「正解」がない中で、仲間といっしょに「どうやって道を切り拓いていこうか」と一緒に相談できて、一人ひとりが主体的に動いていくのって、すごくワクワクするしたのしい。

だから「大人になったって正解なんてないんだよ」って言葉を、「正解がないから不安だよね」じゃなくて「正解がないから楽しいよね」って気持ちで言えるようになりたいなと思います。

そしてもう一つ、自分の中の「正解」をほかの人に押し付けないように、という自戒。そもそも自分の中に「正解」がある時点で、そこに「探求」がなくなっているのかもしれないですよね。

私自身がたまに陥りがちなのが「私だったらこうするのに、なんでそれをしないの?」って思考回路。これって無意識に「私だったらこうする」を「正解」だと思っているんだろうなと思います。でもそのときにその正解を押し付けるんじゃなくて、興味関心を持って「何であなたはそう考えたの?」って聞いてみることが大事なんだろうな、と。

その過程で「AとBのAを優先したんだね」とか、「Cっていう情報が伝わってなかったね」とか、相手との考え方の違いや情報量の違いがわかってくる。その違いを受け止めつつ、よりよい結論って何だろうね?と一緒に考えていく。こういう対話ができる人になりたいなーと思います。

子どもたちの周りにも、そんな対話ができる大人がいっぱいいるといいですよね。HFAを通して、子どもたちとそんな大人たちとの対話の機会をたくさん作っていきたいなと思います。

◆学びに向かう動機
人は誰でも、生まれ持っての「知りたい・わかりたい」欲求がある。でも、毎日決められたことに取り組まないといけない環境の中で、学びの先にある成績や受験に囚われる中で、「まなびの魅力」が失われて、「知りたい・わかりたい」という気持ちが減退する。

だから、「まなびは楽しい!」という原初的な体験や、子どもの内なる野性的な探求心に目を向けることで、子どもが自ら学ぶ力を取り戻すことが重要。

◆子どもの自ら学ぶ力を取り戻すために
子ども自身の感情や体験を大切にした「子どもが学びの起点となる設計」、正解や成功がなくて自分自身で考えるしかない「生きた題材で学ぶこと」、終わりがないRGPのような「一貫したストーリーで学ぶこと」、自分の心を解き放てるように「心理的安全性が担保されること」の4点が重要。

◆「一貫したストーリーで学ぶ」ために意識するべきデザイン
1)子ども自身の役割
2)大人の役割
3)ルールの設定
4)目的やゴールの設定(ゴールは広がってもOK)

そのうえで、子どもが「自由に動ける環境」を準備し、多少の脱線や逸脱はおおらかに見守り、ただしルールやゴールは折に触れて確認していく。

◆「心理的安全性を担保する」ために大切なこと
1)ルールを明示的に宣言する
2)大人が勇気ある自己開示をする
3)ブレストでは大人からレベルの低いアイデアを出す

◆第2章を読んで
「知りたい・わかりたい」という気持ちが失われていくというストーリー、個人的にはすごく納得感が高いです。さらに「やらなきゃいけない」という中で、うまくいかないことが多いと「楽しい」とは思えなくなる、ということもあると思います。

それに、児童養護施設でくらす子どもたちは、多少なりともしんどい体験をしているはずで、その中で「知りたい・わかりたい」のきもちを押し殺すことに慣れてしまっている可能性もあるんですよね。

そう考えると、私たちはHFAの活動の中では、より子どもたちが「学ぶ楽しさ」を感じられるように、子ども自身の「知りたい・わかりたい」という気持ちを見逃さないようにしなくてはならないのだと思います。

だからこそ、そのための「まなびのデザイン」や「場のルール」は、HFAのプログラムとして、しっかり作っていきたいです。

そして、こうやって子どもたちに向き合っていくことは、大人にも変化をもたらすような気がします。第3章でも書かれていましたが、こうやって子どもたちに関わっていくことにより、「伴走型のリーダーシップ」を習得する機会が得られるということかもしれません。

・考えるのではなく感じることで変化の兆しを感じ取る
・それぞれの人に多様な能力があると知る
・信頼・安心・楽しさなどの心の基盤を大事にする
・みんなの力を掛け合わせて目標に向かっていく

「効率」や「べき論」では「創造」は生まれない。という言葉も、本当にそうだなと思います。私たちの日常は「効率」を求めて「べき論」で語ってしまいがちな社会。でも、この答えのない時代に、効率やべき論だけでは片づけられないことがあるんだと思います。

そういえば、幸福学研究の第一人者である前野隆司先生は、どんなときでも「いいねー」「おもしろいねー」「やってみましょう」「どんどんやりましょう!」と前向きな言葉をかけてくださいます。前野先生が「それは効率が良くない」とか「~べきだからそれはダメ」とかおっしゃるのは聞いたことがありません。わくわくすること、楽しむこと、みんなの強みを活かすこと。前野先生ってそれを体現されているんだなと思います。

◆最後に
第1・2章からのまなびだけを簡単にまとめるつもりが、なんだかんだものすごく長くなってしまいました。「探求のススメ」は全部で第8章まで。今回は紹介していない第3章以降もものすごく読みごたえがあって、何度も読んでしまいます。

私自身、クエストカップ全国大会は何度かお手伝いをさせていただき、たくさんの心が動く体験をさせていただきました。第4章の常翔学園と第5章の西大和学園は、クエストカップの常連校です。そして第6章に書かれている千葉県立特別支援学校流山高等学園。2017年にグランプリをとったときの彼らの発表は、本当に素晴らしかった。何度動画を見ても心が震える発表なのですが、その背景にある実践とストーリーを改めて知って、もう一度ダイジェスト動画をみたくなりました。(https://questcup.jp/archive/#pos2017)

第7章のシヅクリプロジェクト。静岡県の校長先生だったお二方の挑戦。八木先生には私もいつも刺激をいただき、大切なご縁も結んでいただいていることもあって、心にぐっとくるストーリーでした。

宮地さんの熱い思いとまなざしの温かさ、教育現場の先生方の奮闘。何度読んでも新たな発見があるような気がします。まだ読んでいない人にはぜひおすすめしたい1冊です。

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