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リさんから "Dへの一連の対応こそ植民地主義的では?"

リさんは、ソウルを中心に幅広く韓国の社会運動や国際連帯運動に関わっている女性です。2017年のノーリミットソウルでは、ソウル側の中心メンバーでした。「インタビュー」や「経緯」でも明らかにしているように、2019年の夏、「反五輪の会」はDに対し、一方的に反五輪イベントに参加しないよう求めます。このことについて、リさんが個人的に「反五輪の会」宛に送った手紙をここに掲載します。彼女はこの手紙で、「反五輪の会」のDへの一連の対応こそが日本中心の発想、植民地主義的発想からくるものではないかと疑問を投げかけています。
「反五輪の会」からリさんに対し、現在まで返事はありません。
(注:本人の了承のもとに一部、翻訳を改めています)

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こんにちは。フェミニストで活動家の「リ」といいます。わたしは2010年から、ソウルで反性差別・反権威主義運動に参加する一方で、地域コミュニティの形成活動に関わってきました。2016年に、高円寺の人たちに興味をもち、地域ぐるみで交流をしながら、ノーリミットソウルを企画しました。ノーリミットソウルのソウル事務局は、当時、このイベントのために一時的に集まったものであるため、今は存在しません。その後、わたしは再び社会運動とコミュニティ活動に戻り、香港、インドネシアなど、さまざまな地域のフェミニスト/地域活動家たちとの連帯活動を行っています。

さて、わたしは貴団体のノーリミットソウルへの見解について、非常に残念に思っています。貴団体がDさんに対して表明している見解は、ノーリミットソウルに参加したわたしたち全員に対して表明しているものだと理解していいのでしょうか。

ノーリミットソウルは、京義線共有地、中浪民衆の家(訳注:中浪はソウルの北東部に位置する区)をはじめとするソウル各地のコミュニティや、フェミニズム団体が参加したイベントです。これらの団体は、東京のコミュニティを知って間もなかったわたしが参加を呼びかけたものです。ノーリミットソウルを開いたからといって、東京のコミュニティにしたがう人々であるかのように考えないでください。

わたしたちも、貴団体が「東京の植民地主義的な性差別発言」と規定している発言については、看過することは絶対にできないと考え、批判を行ないました。その一方で、問題の発言をした東京の参加者たちは謝罪もしており、交流をつづけることで変化し発展できると考え、イベントを実施することにしました(その影響や結果について、検討したり批判することは可能だと思います)。このイベントの重要な企画の一つであったフォーラムは、韓国のキャンドルデモ、台湾の反資本主義抵抗運動、中国上海の農民工コミュニティ支援活動などについて議論をするというものであり、社会運動の交流と発展を目的にしていました。実際のところ、わたしはこのフォーラムを開きたくて、ノーリミットソウルを主催したともいえます。その際に、Dさんにも多くの助力をいただきました。

もちろん、どのような目的をもったイベントであれ、その趣旨のとおりに実施されるとは限りません。不測の事態が生じるかもしれませんし、最善を尽くして対応する過程において、さらなる問題が生じたり、対応が十分でない場合もありえます。わたしたちは責任をもって問題の解決に取り組むことを表明したうえで、イベントの企画をすすめました。

しかし、貴団体は、ソウルのイベントが東京の植民地主義と性差別を擁護したものだと認識しているようです。そのことは貴団体の公式見解からわかります。交流がなかったのでご存知なかったと思いますが、ノーリミットソウルは、ソウルや釜山の活動家たちが企画し、参加したイベントです。東京チームはさまざまなチームの内の一つにすぎませんでした。ソウルでは「ジェンダーコミュニケーション・チーム」が結成され、「自治区平等規約」を発表し、イベント全般を調整・モニタリングするなど、万が一の事態に備えていました。このチームには経験豊かなフェミニストたちが参加していました。

こうした事実をすべて無視し、ノーリミットソウルの参加者たちを独立した主体として認識せず、東京のコミュニティに還元してしまうのは、日本を中心に置く植民地主義的な発想ではありませんか?

貴団体は公開された文書で、ノーリミットソウルについて、「その出来事について判断する用意を現在は持っていない」としながら、同じ文書内で、次のような見解を表明されています。

今回の件を通じて、私たちは東京を訪れることに不安を持つ人たちがいることを知りました。それは、ノーリミットソウルに関連して、私たちと近い関係の人も含む日本の(または東京の)社会運動の中で起きた植民地主義的な性差別発言とそれらへの対応が元になっています。

私たちは、反オリンピックの運動を進めるにあたり、性差別・植民地主義の問題を改めて表明していきたいと思っています。

おっしゃるように、東京の社会運動の中に問題的状況があり、そこに原因があるならば、日本の運動に立ち戻って、植民地主義的・性差別主義的な発想が生まれる社会的背景をかえりみて、改善する方途を議論したり、要請したりすることが、優先されるべきではないでしょうか。

その問題への対応に納得できないとして、批判をするのではなく、イベントの開催そのものを「加害」と決めつけたり、イベントに参加した個人を「加害者」と決めつけること。事実関係の調査も行わずに、個人対個人ではなく、団体対個人の立場から排除通告を出すことが、果たして正しいことなのか、お尋ねしたいです。

なぜ、「東京の社会運動で発生した植民地主義的な性差別発言」に対して、その発言をしてもいない、ソウルやアジア各地から来た活動家たちに責任をかぶせるのですか?

わたしは貴団体が植民地主義的な性差別発言と規定する状況が発生したとき、そのチャットルーム内で唯一の、社会的に付与された性別が女性である韓国出身の者でした。国籍と性別に還元しようというのではなく、その問題発言が発生したとき、最も配慮を払われ、どう思うか聞かれるのに、ふさわしい立場にあったのです。しかし、誰もわたしに心情を尋ねることはなく、問題提起をした何人かが苦痛を吐露しながらチャットルームを出ていってしまう状況の中、わたしは徹底的にその問題から疎外されて行き、気がつくと、わたしは最も配慮を払われてしかるべき立場(かつ、その場で問題提起も行なった立場)の人から、「加害者」になっていました。そして、すぐに問題は、最初の問題発言そのものではなく、「二次加害」の問題に変わりました。問題提起にも関わらず、ノーリミットソウルを開催しようとしているという理由で、です。そしてわたしは今日までずっと苦しみつづけています。わたしが当事者であるこの問題をみずから解決し、その問題と向き合うためのいかなる努力も、いっさい否定され、「加害行為」として扱われています。こんなことがどうして可能なのでしょうか。

わたしは、ノーリミットソウルに対する告発文書がネットに出てきたとき、本当に絶望的な気持ちになりました。平昌オリンピック反対連帯のメンバーも作成に参加していた、その文書は、徹底的に日本を中心とする思考に基づいて、ノーリミットソウルを東京に還元するものでした。しかも、その内容は、ちゃんと人に聞いたり調べたりしたものではありませんでした。貴団体の見解にも同じことが言えます。

わたしは要求します。問題そのものの究明から、正しく行なってください。わたしは貴団体の取り組みをとても苦痛に感じます。ノーリミットソウルに対して、むやみに判断を下し、日本中心的な思考で事態を歪曲し、規定し、断定する思考のやり方は、わたしにはとても暴力的に感じられます。

Dさんを含め、ノーリミットソウルの参加者たちに対する排除と断絶を通じて、苦痛を拡大・深化させる前に、起こったことをきちんと見てください。一方的な措置を通告しないでください。貴団体にそのような権利はないと考えます。当然のことながら、このような問題は、日本だけのものではありません。わたしはノーリミットソウルの準備過程やイベントを通じて、韓国でも話し合い、性差別的な日常を振り返りたいと思っていました。これは国境を超えて、わたしたちすべてに関わる問題だからです。

切に訴えます。排除をやめてください。ノーリミットソウルに対する植民地主義的な決めつけをやめてください。そして、植民地主義的な性差別に本当に立ち向かおうとされるのであれば、しっかりとした真相究明の手順を踏んでください。貴団体の責任ある対応を求めます。

返信お待ちしております。
2019.7.24

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