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Revopoint POP2スキャン作業Tips

 クランクケースカバーをスキャンする際に試行錯誤して得られたノウハウをまとめておく。事前準備がキモなのでワークフロー化した。スキャン結果は末尾に貼ってあるので参考までに。

事前スキャンワークフロー for Revopoint POP2

作業中に3Dスキャンがうまくいかない理由をまとめると4つほどあった。

1.感度設定が不良/対象物表面の性状が不良

 左下の輝度(Brightness)設定は高ければよいというものではない。どうやらノイズの影響で形状データが安定せず、トラッキングが失敗しやすいようだ。床や壁、天井が写り込む可能性もあるのでなるべく低いほうが良い。
 ワークフローから考えると、まず最初に調整すべき項目だ。感度設定以外にも予備スキャンで調整する項目はあるので、まず安定したスキャン設定を見つけておかないと後の作業効率が悪い。

RevoScan 輝度設定(左下スライダー)

 暫定的な目安としては、スキャン結果がまだら状にならず面が綺麗に得られる最小の輝度設定とする。事前スキャンしてみて、手ブレ等で具合が悪いなら感度を上げ下げして調整する。
 特定の箇所で失敗するようであれば、カメラの向きやスキャン経路(カメラ角度)を再調整する。スキャン面とカメラが正対する(真正面を向く)ようにするとS/N比が上がるので、スキャナを手で持ってスキャンする場合は特に意識すること。平面に対してはカメラが正対するように、円筒面であれば円の中心を意識してカメラを動かす。

 通常のスキャンモードで安定したデータが得られない場合、ダークモードを試し、それでもダメならスプレーによる表面処理をする。表面処理のスプレーはスプレー現像液か、オイル・液漏れチェックスプレー、あるいはAESUBを使う。
 表面処理処理スプレーの副次的効果として、感度(輝度)設定を落とせるので、床や壁が写り込みにくくなる効果がある。

2.スキャン姿勢が悪い

 感度設定が決まったら次はスキャン姿勢を試行錯誤すると良い。スキャン姿勢、スキャン方法はそれぞれメリット、デメリットがある。
1.ターンテーブル
 スキャン対象物:固定
 スキャナ:固定
 ◆メリット:
  スキャン対象物、カメラが固定されているため安定した作業が行える
  スキャンを繰り返しても安定した結果が得られる(再現性が高い)
  手ぶれの影響が無い
 ◆デメリット
  対象物が動く速度を調整できない
  床面(ターンテーブル)が映りこむ可能性がある
  スキャン対象物とターンテーブルの接触面付近はスキャンできない

2.床置き
 スキャン対象物:固定(床の上)
 スキャナ:手持ち
 ◆メリット:
  ターンテーブルの耐荷重を超えた物体もスキャンできる
 ◆デメリット
  手ぶれの影響がある
  床とターンテーブルの接触面付近はスキャンできない

3.手持ち
 スキャン対象物:手持ち
 スキャナ:手持ち
 ◆メリット:
  思い通りの姿勢、速度でスキャンできる
 ◆デメリット
  手ぶれの影響が大きい
  短時間の作業でも気力・体力を大きく消耗する(作業難易度高い)
  手ブレが大きくなりやすく、スキャンが失敗しやすい

4.吊り下げ
 スキャン対象物:半固定(吊り下げ)
 スキャナ:手持ち
 ◆メリット:
  思い通りの姿勢、速度でスキャンできる
  スキャン不可能なエリアが最も小さい
 ◆デメリット
  吊り下げることが不可能なスキャン対象物もある
  吊り下げ紐が映りこむ可能性がある。
  吊り下げ紐の影になった部分はスキャンできない。
  手ぶれの影響がある
  身体の接触、空調の風で対象物が揺れるとスキャンが失敗する。
  吊り下げてから、揺れが収まるまで待つ必要がある

3.トラッキングの失敗

 特徴モードであれば、特徴点になる部分を外さないようにカメラをセットする。基本的には写る部分を大きくするため、カメラを離す方向で調整する。対象物を横倒しにするなど固定する向きを再考してもよい。
 マーカーモードであれば、マーカーシールの追加を行う。または、より多くのマーカーが映るようにカメラの向きやスキャン経路を再調整する。
 マーカーシールが多すぎるとスキャンソフトがフリーズするため、スキャン失敗時の挙動を見極めてマーカーシールを増やすか減らすか選択する。
◆下記参照
https://note.com/hexcapbolt/n/n2b0efecaa11c

4.スキャナ・PC間の通信不良/ PCの処理能力不足

 有線接続でも無線接続でもときおり「エラー7:フレーム同期不良」が出た。原因をつかめなかったが、デバイスの過熱くらいしか思いつかない。なので風を当てて冷やすか、使用しないときは電源を切っておくなどの暫定対策が考えられる。

 処理能力不足で失敗する場合は、処理するデータ点数を減らす必要がある。感度(輝度)設定を落とすか、カメラを遠ざける。表面処理スプレーを使っている場合は、使用を中止し素の状態でスキャンすることも検討する。

◆吊り下げ作業Tips

 吊り下げてスキャンする場合、スキャナを持った状態でスキャン対象物の周りを一周する必要があるので、機動性が重要になる。

①まずどこに吊り下げるか?

 例1:室内干し用物干し竿、突っ張り棒:使えれば最強
 例2:脚立・カメラ三脚:スキャン時に足が邪魔
 例3:階段の縁とか:壁が邪魔

吊り下げ例:室内干し用物干し竿

②吊るための紐
 写りにくい黒色の紐が良い。
 
例1:電線:使えれば最強。AWG24の取り回しが良かった。
 例2:裁縫糸:たまに切れた。
 例3:荷造り紐:太い。白い。1回だけ使ってボツ。


③スキャン時にあると便利なもの
 機動性を上げるために、スキャナとディスプレイは柔軟に取り廻せるほうが良い。有線接続でもスキャンできないことは無いが、できれば無線のほうが良い。
◆スキャナ無線接続用品

 ①バッテリ内蔵グリップ(純正):純正ミニ三脚+モバブでも可能
 ②スマホ固定グリップ(純正):ケーブル巻いておく
 ③モバブ:バッテリ内蔵グリップ充電用
 ④USB無線LANアダプタ(デスクトップPCの場合)
◆無線接続ディスプレイ
 ①Rokid Air:メインディスプレイを複製表示するためのHMD
 ②ショルダーバッグ:モバブ等々収納用

 スキャン作業と同時にスキャン結果を確認できないと非常に効率が悪い。適当なディスプレイを近くに置いてもいいが、頭の向きと体、手の向きが違う(視線移動が大きい)と手元が狂いやすいのでHMDはあると非常に便利。手元が見えないのでVR用のHMDはしんどい。手元が見えるMR/AR用HMDでPCと接続できるものが良い。あまり選択肢はないが、たまたま手元にあったRokid Airを使っている。

スキャン例

 大きさ:約W340xL180xH100mm
 材質: アルミダイカスト
 表面処理:現像スプレー塗布
 スキャン姿勢:吊り下げ
 スキャン時間:約10分(1回あたり) 

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