流行りと文化の違いについて

東京は日本の文化の発信地ではない。

流行の発信地である。
文化という言葉を使うことの重みについて考えたいと思います。

葬送文化をはじめ、文化的な尺度で社会を捉えようとすると日本の多様性が見えてきます。

骨壺のサイズから見えてくる地域の差異
例えば、故人のご遺体を火葬した焼骨を収める骨壺のサイズが地域によって異なるということはあまり知られていないと思います。

東京を含む関東以北(北海道まで)では、男性は高さが7寸(約21㎝)、女性は6寸(約18㎝)がスタンダードなサイズとされています。

これは骨壺を納めるお墓のサイズに基づいているのですが…。
それはつまり、火葬された焼骨をどのくらいの量骨壺に収めるのか。
実はこれに起因しているのです。
上記の関東以北の骨壺のサイズというのは、ほぼ全ての焼骨を骨壺に収めることを前提としたサイズなのです。

一方、だいたい愛知県の西の方からサイズがぐっと小さくなるようでして。
大きくても4寸(約12㎝)、小さいと2.5寸(約7.5㎝)が一般的です。

なんでそんなになっちゃうのか?
まぁネットで『骨壺 サイズ』などと入力して検索すれば色々出てきますが、大きな理由として、大きく日本を東西に分けて、収骨する骨の量が明らかに異なるという、まさに文化的な差異があるからなのです。

上述のとおり、関東以北ではほぼ全ての焼骨を収骨しますが、地域によって、特定の部位のみを収骨するのです。

ではその特定の部位とは?
例えば喉仏と呼ばれる部分がマストだったりするのですが、仏教でいうところの宗派のそれぞれの教えなどによっても違いがあるようなので、詳細は僕もこれから勉強したいと思っています。

*余談ですが、以前にテレビで観たサスペンスドラマの舞台が九州で、たまたま登場した骨壺が2.5寸サイズだったことに感動したことがあります。

んじゃあ残った焼骨はどうしちゃうの?
残った焼骨は火葬場に供養してもらうことがほとんどです。
供養とは言いながらも、実際は火葬場も専門業者に業務委託し適切に処理してもらってるケースがほとんどです。
(処理というと言い方が悪いのですが…)
専門的な言い方をすると、残った焼骨のことを“残骨灰(ざんこっぱい)”と呼ぶのですが、全国各地にはこの残骨灰の供養を受けていただけるお寺さんがあります。
また、残骨灰には様々な問題があり、以下の参考に示したような団体が中心となり、問題の解決に向けた活動(事業)を行なっています。

※参考1:一般社団法人全国環境マネジメント協会

※参考2:自然サイクル保全事業協同組合

また、私たち火葬場の職員も灰供養という行事を年一回行っており、僧侶をお招きしてしっかりと供養させていただいています。

葬送文化から見えてくる日本文化の多様性
まだほんの一部ですが、このように、所変わればまったく異なる文化があるんだなということを、火葬場で働きながら日々学んでいるのです。
そういう風に日本各地の葬送文化にふれながら仕事をしていると、

東京は日本のスタンダードではなく、あくまで一つの地域に過ぎない。

ということを改めて認識するものです。

もちろん葬送文化だけでなく、様々な慣習や習俗などを含め、日本の文化とやらを理解することは一生かかっても難しいことだなと思いつつも、せめて葬送文化についてはもっと知識と理解を深めていきたいと思うのです。

そして、文化的な視点で死というものを捉えることにより、諸外国に発信できるような日本独自の死生観について明らかにしていきたいと思います。

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