見出し画像

精密切断機は『日常メンテナンス』が命です!②【クーラント管理編】

金属イオン、異種金属接触腐食、バクテリアによって起きるトラブルに対抗するには掃除とクーラントの管理に尽きます。ここでは、クーラントの管理方法について詳しく説明していきます。

クーラントの管理方法

クーラントを運用する上で大切なことは下記の3点です。これらが出来ていれば、精密切断機はトラブル無く清潔に長く使用出来きます。逆に、出来ていないと錆びだらけになりトラブル続きの短命な装置になってしまいます。これは、どのメーカーの精密切断機であっても同じです。

・タンクの清掃
・クーラントの濃度管理
・クーラントのpH管理

タンクの清掃

まずは切削屑を溜めずに日常的に清掃するというのが基本になります。これが出来ていないと、クーラントの管理は始まりません。先に紹介したように切削屑が多くのトラブルの原因となるからです。
詳しくは次の『お掃除編』でご説明します。

クーラントの濃度管理

良質のクーラントは油膜を形成し切削屑を包み込み、金属イオンの流れ出しを防ぎ、陰イオンとの結合を抑えます。この適正な油膜を作るための目安として濃度管理を行います。濃度管理には屈折計を使用し、切削油が指定濃度の範囲になっているか確認します。
屈折計:例えばこんなもの ↓

クーラントを作るときの注意
クーラントを作る際に気を付けなければならない事は、水を先に入れてから切削油を入れるという順番です。切削油を先に入れてから水を入れると、切削油と水が均一に混ざらない為です。必ず、①水、②切削油の順番に投入しクーラントを作りましょう。
クーラントの量が多い場合は、複数回に分けて行うとさらに良いです。100リットルのクーラントを作る場合は2、3回に分けて行います。例えば、30リットル程度水を入れて、切削油を設定の割合になる量を入れて攪拌、これを繰返しながら100リットルまで作ります。
攪拌作業も大切ですのでしっかりタンク内で混ぜ合わせましょう。クーラントが出来たら、装置と接続し5~10分程度ポンプを回して循環させ、さらに攪拌させます。

クーラントは切断時にミストとなって揮発していき、タンクから持ち出され減って行きます。減ったクーラントを継ぎ足さなくてはいけませんが、その際にも注意が必要です。減った分、水をいれただけでは濃度が下がり油膜形成の機能が落ちてしまいます。切削油だけを入れても、均一に混ざらないので油膜形成が不十分になります。
クーラントを継ぎ足す際も、水に切削油を入れて投入します。濃度を濃くしたい場合は、水に対し切削油を通常の割合より多く入れ、薄くしたい場合は少なくして継ぎ足して下さい。

クーラントのpH管理

pHは、水素イオン指数と呼ばれる1~14の数値で表されるもので、液中に含まれる水素イオンが多いと1に近ずき、少ないと14に近ずきます。7が中性、6以下が酸性、8以上がアルカリ性となります。pHが1つ変わると水素イオン濃度は10倍、2つ変わると100倍変わります。pHが1つ違うだけでも大きな環境変化と認識しましょう。
切削油は、pH8.5~11で使用されるように設計される場合が多いです。pH11以上になると手荒れ等が起きやすくなる為、むやみにpH値を高くすることは止めましょう。ただ、アルミニウムや銅といった金属はアルカリ条件下でも腐食が起きるので、切削油を選定する際には、pHが中性に近いものを使ったり通常より薄めて使うなどが必要となります。一般的に、アルミニウム用として販売されている切削油は、pH7~8.5で作られている場合が多いです。

クーラントのpH管理には、pH測定器を使用して確認をします。pH測定器が無い場合は、リトマス試験紙でおおよそのpH値を把握出来ます。pHが切削油の指定する範囲内にあることを確認し、低ければ切削油を追加しpHを上げます。追加方法としては、先に述べたように水に切削油を濃くして混ぜたものを追加するようにして下さい。
pH測定器:例えばこんなもの ↓

クーラントの交換基準

クーラントは、使用する切削油、掃除の頻度、切断する試料、切断頻度、温度等の環境に大きく影響されますので、一概に管理基準を置くことは難しいです。
その為、自社独自の運用管理が必要になります。運用管理に当たり、最初は1週間に1回位程度の濃度管理とpH管理を行うことを推奨します。数カ月のデータが取れたら、自社のクーラントの劣化スピードの傾向が解ると思いますので、それをもとにクーラントの使用期限を決めて交換するようにしましょう。
交換の判断としては、指定の濃度とpH値が崩れていきた時です。指定の濃度になっているのにpH値が指定値より低い又は高い、pH値は正常なのに濃度が濃い又は薄いといった場合です。金属イオンやバクテリアといった要因でクーラントが劣化していると判断します。
この他の判断基準としては、次のような場合です。

・腐敗臭がする
・異物が浮かんでいる(バクテリア、グリス、潤滑油等)
・クーラントの色が青っぽくなっている
・明らかに錆の発生が増えた
・切断後の試料に錆が発生しやすくなった

上記の基準がどれか1つでも当てはまれば、クーラントの交換を行いましょう。

6ヶ月の交換頻度を目指す

大前提として、水溶性切削油で作られたクーラントは、劣化しやすく寿命が短いということです。掃除や管理を行っていなければ、1か月持たずに劣化します。1か月に1回クーラントを交換出来れば、問題は無いかもしれませんが、多くの現場ではこれは現実的ではないと思います。
しかし、日常メンテナンスで掃除、管理が出来ていれば半年以上使用することも可能です。ただし、切削油がロングライフタイプや耐腐敗性などの、切削油自体が長く使えるものという条件が必要です。

ここで、ちょっとCMです。
切削油に関してはお客様によって廃棄処理のルールがあり、新たに切削油を導入をお願いすると、ご担当者の方に申請や管理の面倒な仕事をさせてしまう為、弊社では切削油についてあまりお客様にお勧めすることはありませんでした。が・・・クーラントの管理と掃除が出来ていても、切削油の性能が悪いもの(精密切断に適していないもの)を使用し、油膜の形成が出来なかったり、酸性化が早かったり、劣化が早いといった事からトラブルが多く起きてしまっている現状があり、やっぱり切削油大切!という結論に至りました。
そこで、精密切断機用として、金属イオンの発生を抑え、油膜形成の安定性を良くし、バクテリアの攻撃にも強く長寿命という切削油『アブクール』を切削油業者の方にご協力頂き、新たに発売することとなりました。
弊社のテストでは、掃除と管理を行っているという条件で6ヶ月以上問題無く錆、腐食やバクテリアの発生無く使用が出来ました。ご興味ある方はコチラをご覧下さい。

以上、CMでした。
次は、掃除方法についてご説明をします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?