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スピリチュアルがやっていいことと悪いこと - カードリーダーとしていろいろ考えた

少し前に、カードリーディング系のイベントで、ひとりの女性に紹介された。最初の自己紹介で、ヨーロッパに移住したい、というような話を振ってこられたので、なるほどね、と思って話を聞いた。私は本業では海外との交流をサポートするような仕事をしているため、この手の相談は比較的よく受けている。提供できる情報があれば必要なところに届けたいと日ごろ考えているので、ひとまず少しばかり話を聞いてみた。
海外で働く決意が固そうだし、対象地域や活動領域もかなり定まっていそうな雰囲気なので、最初はてっきり、すでに仕事のポストが用意されてあるとか、少なくとも名指しのオファーがあるんだろうという前提で聞いていたら、どうもおかしい。動機や背景など、ひとつひとつ掘り下げていくと、驚くべきことが明らかになった。彼女が海外移住を決意したのは、少し前に、占いあるいはチャネリングカウンセラーに勧められてのことだったらしい。具体的な国や都市の名前まで挙げて、「あなたはここの場所につながりがあるので、そこへ行きなさい」と言われたとのことだった。
いやいやいやいや、ちょっと待って欲しい。何の後ろ盾もなく海外へ。しかも、彼女にはお子さんもいる。だいたいヨーロッパにはシェンゲン条約というものがあり、EU圏外のパスポートで滞在できる期間は1年間に合計して90から180日以内と決められていて、就学・就労ビザなしで渡航してから現地で就活という流れは、いまは現実的に不可能になっている。かつて、福島第1原発の事故の際、小さな子供を連れてドイツに移住したお母さんたちが、現地でただただ預貯金を使い果たし、ドイツの環境市民団体のサポートがあったにもかかわらず帰国を余儀なくされた展開を思い出さずにはいられなかった。
彼女にアドバイスしたチャネラーさんに聞きたい。なぜ無思慮にそこまで無責任なアドバイスをするのか。私はカードリーディングを学ぶ過程で何度も、「人の人生を激変させるようなリーディングは絶対やっちゃだめ」と教えられた。
スピリチュアルってなんだろう。社会において、それはどんな役割を果たすべきなのか。占いもスピリチュアルも、クライアントさまが人生につまづいてつらい時、そっと寄り添って、「大丈夫だよ」とさりげなく言葉をかけたり、あるいは、クライアントさまがすでに90%くらい自身で決断していることに対して、最後の背中押しをしたりするものなんじゃないかと思っている。
間違ってもそれは、他人の人生を180度転換させるようなものではあってはならないと思う。人生を変えることができるのは本人だけなんだし、しかも、その人が今まで全く関わりを持たなかった世界に、何もかも捨てて放り出すようなことは…、これはもう絶対アウトだと、確信しかない。
以前、過去世チャネリングで、私が前世でヨーロッパの市民の娘だったことがあり、貴族の令嬢を真似て貴族そっくりの豪華な衣装を買いあさり、インテリアも揃えて散財して借金まみれになり極貧のうちに亡くなった、と言われたことがある。…これもだ。ちょっと待て。17から18世紀を想定していると思われるが、身分制度と服装規定が厳格だったこの時代のヨーロッパで、市民が貴族の服装を真似ること自体が、歴史的にみてあり得ないことなのだ。過去世で歴史的過去を饒舌に語るならば、まずは膨大な歴史の専門書を紐解いておく必要がありそうだ。その場では何も言わなかったが、この過去生チャネリングは、もう笑いを堪えるのに必死だった。
しずれにしても、アドバイスを受ける方がある程度突き放して見られる余裕があればいいのだけれど、行き詰まっていたり、切羽詰まった状況にあるような場合、現実離れしたチャネラーや占い師の言葉にふっと入れ込んでしまう場合もあると思う。
それだけに、私たち発信者が責任をもった鑑定結果を伝えていかないと、とっても悲惨な結末になるケースが現実に出てくるだろうし、そうした負のケースの重なりは、「スピリチュアルは、占いは怪しい」という風説になって私たち自身に返ってくることになる。日々のリーディングや鑑定に、自覚を持って臨まなければ、と強く思う。

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