【怪談】早朝の新聞配達で日本人形が

私がバイトで新聞配達員をしていたときの話。

その日はバケツをひっくり返したような土砂降りの雨だった。あぁ、めんどくさいなぁと、思いながらレインコートを着て真冬の寒空のもと、チャリにまたがり出発した。

早朝なのであたりは暗い。慣れた配達経路とはいえ、とても視界が悪く面倒だった。

寒さで唇の震えが止まらない。必死でチャリをこぎ、普段誰もいない暗い公園の前を通った時、そこに気になるものをライトがうつした。

日本人形だった。

公園の入口にポツンと日本人形が置かれていたのだ。髪が耳の位置ほどにあるおかっぱで、ニヤリと笑っている表情。まぁ、よくある日本人形だ。

誰が置いたんだろ。よく分からないことをする人もいるんだな。まぁ、もしかしたら見間違いだろうと思いながらその場を過ぎ去り配達先に向かった。

だけどチャリをこいでもこいでも配達先にたどり着かない。こぎながら周りを見渡すと

さっきの公園にいた。

そして日本人形がニヤリとこちらを見ている。耳元まであった髪があご先まで伸びている。視界が悪いから行き先や髪の長さを見間違えたんだろうと思い配達先に向かった。

しかしひたすらチャリをこいでも目的地に着かない。周りを見渡すと驚くべきことにさっきの公園にいるのだ。そして日本人形がニヤリとこっちを見ている。髪の毛は肩あたりまでのびていた。
いつもはメガネだけど、今日は不慣れなコンタクトレンズだったのでいろいろ見落としたに違いないと思い、配達先に向かった。

必死にチャリをこいだ。しかし気が付くと、予想外なことにまた公園の前にいた。やはり日本人形はニヤリとこっちを見ている。髪は胸元まで伸びていた。
目に打ちつける大粒の雨のせいで、目に疲労がたまってきたのだろう。帰ったらブルーベリーを食べよう。そう思い配達先に向かった。

気を取り直してしばらくチャリをこいでると、またあの公園の前にいた。日本人形はニヤリと笑い、髪の毛は腰の位置まで伸びている。これはきっと朝食を抜いたせいだ。せめてバナナだけでも食べよう。そうだ。朝食はバナナとブルーベリーだ。そう思い、私は配達先に向かった。

打ちつける雨がさらに激しくなってきた。疲労困憊になりながらも私はチャリをこいだ。必死にこぎながらも、予期せぬことに気が付くと公園の前にいたのだ。日本人形の髪はレッドカーペットのように長く見えた。今までの運動時間を考えると、脳の働きが鈍くなり、見間違えるのは仕方ない。私はひとまずレッドカーペットのように長くなりすぎた日本人形の髪を不憫に思い、伸びた髪をアフロにして、配達先に向かったのであった。

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