日常野郎 鬼ガイバー「白髪がある!さぁ、バービブ!」

あれ?白髪がある…。そんなことに気付いた私は、IQ1億2000万の脳をフル回転させた。

精神年齢18歳の私が、こんなにも早く白髪が生えるなんておかしい。骨年齢だって20歳なのに。何らかの影響で、体に異変が起き、白髪が生えてきたのは言うまでもない。

白髪になる原因として、「食事」が挙げられる。最近食べているのはチキンだ。チキンが、怪しい…。しかし、それだけでは、確証は得られない。私が思考を巡らせていると、ふと白髪白スーツで微笑む男の姿が、脳裏によぎった。

「カーネル・サンダースだ!」

彼は科学的にハーブを調合し、鶏肉と融合させることで、世界を牛耳る「サイエンスフライドチキンリスト」になったのだ。しかし、化学変化した鶏肉を試食の段階から何度も食べるのは、人体への負荷が大きい。カーネル・サンダースは、それを受け入れ、何度も試食した結果、美味しいフライドチキンを作ることに成功した。その一方、化学物質を何度も体内に取り入れた結果、白髪白スーツになったのであろう。

私もフライドチキンを好んで食べてきた。幸いなことに、スーツは白くなっていないが、科学的に調合されたフライドチキンを食べたことにより、髪は白くなってきた。スーツも白くなるのは時間の問題である。ちなみに愛用しているふんどしは白い。それがチキンの影響なのか、もともと白いのか、今となっては判断が難しい。

私が白髪になった理由については見当がついた。では、次にやることはなにか。優秀なフェニックス財団の団員ならお分かりであろう。そう、「黒髪に戻す方法の検討」である。

カーネル・サンダースが作ったフライドチキンは、かつてのフライドチキンの常識を覆す、「進化した鶏肉」である。「進化した鶏肉」を食べたことにより、髪の毛の時間の流れが早まり、白髪になったと思われる。ということは、「退化した鶏肉」を食べれば、進んだ髪の毛の時間を巻き戻せるということだ。

「退化した鶏肉」とは何か。

進化論は諸説ある。一説によると、鳥類は恐竜から進化したとされている。つまり鳥類が退化すると恐竜になるということだ。そのことを踏まえると「退化した鶏肉」とは「恐竜肉」ということになる。私は恐竜を食べるために、過去に行く方法を考えた。

しかし、過去に行く方法は簡単には思いつかない。鏡越しに、悩みながらいくつか生えた白髪に目を向けると、中国神話に出てくる白虎と同じ白色の毛ではないか。私には白虎の力が宿っているに違いない。白虎は「運気を逃さず邪気を祓う」という能力がある。実験というのは失敗がつきものだが、運よく成功することもある。タイムスリップも運よく成功する可能性があるというわけだ。そこで私は早速、一本の白髪を抜き取り、光の速さで円をかき続けた。すると、時空の歪が生まれた。白虎の力は偉大である。少し不安もあったが、私は時空の歪に飛び込んだ。

気が付くと、そこは白亜紀。恐竜が多様化した時代だ。
早速恐竜を食べたいところだが、恐竜を狩るのは難しい。そこで私は見つからないように、恐竜の巣に忍び込み、恐竜の卵を手に入れた。卵に穴をあけ、ゴクゴクと飲み干した。すると、私の体はDNAの変化により、みるみると恐竜化し、恐竜人間となった。人間としての大きさは変わらないが、人間を超越した身体能力を手に入れたのだ。私はその能力を生かし、恐竜狩りを行った。手に入れた恐竜肉を食べ続けると、日に日に髪の毛が黒くなっていった。そんな生活をしばらく続けていると、髪はすっかりと黒色を取り戻した。もう白髪なんてどこにもない。

私が最後の狩りのつもりでジャングルに入ると、普段とは異なる様子に気が付いた。

「あれ…?同じような恐竜人間がいるぞ…?」

その恐竜人間は、白いタキシードにメガネの姿。

「そうか…。君も、私のチキンの秘密に気付いたようだね…?」

私は何度も目を疑った。

「白虎の力に気付き、タイムスリップを成功させたのは、私以外では君が初めてだよ。しかし『運』だけで成功したのであれば、それは科学ではない。科学は「運」ではなく「再現」できることが大切なのだよ。」

男はそう言うと、ニヤリと笑い、こちらに顔を向けた。

「カーネル・サンダース!?」
「懐かしいな。そう呼ばれるのは。」

そう、そこには恐竜人間化し、髪の毛が黒々としたカーネル・サンダースがいたのだ。

カーネル・サンダースは、全てを察し、私に話しかける。

「私は…。フライドチキンを世界に広めることに成功した…。しかし、それと同時に、白髪という病を世界に広めてしまったんだ…。」

一筋の涙がカーネル・サンダースの頬を伝う。そしてカーネル・サンダースはメガネを外し、涙を拭いながら力強く言った。

「だから私は!フライド恐竜肉で!白髪という病から!世界を救う!」

カーネル・サンダースが高く高く振り上げた拳は、いつまでも、いつまでも下がることはなかった。一瞬、しかし無限のように感じる時間が流れた。トリケラトプスは草を食べることをやめ、ティラノサウルスは獲物に噛みつこうとした大きな口を開いたまま、カーネル・サンダースの方をじっと見ていた。
私は無意識に歩み寄り、そして何も言わず、カーネル・サンダースを抱きしめた。私も涙が止まらなかった。そして私とカーネルは、フライド恐竜肉をともに開発することを決意したのだ。

お互いの涙を拭い合い、「さぁ、現代に戻ろう!」と、思ったのも束の間。

「あれ?白髪ない!?」

そう、白虎の力を宿していた白髪が、恐竜肉によって全て黒髪に変わっていたのだ。二人で現代に戻る議論している最中、ふと空を見上げると様子がおかしい。

「ふせろー!」

と、カーネルが叫び、私に覆いかぶさった。すると、あたり一面に隕石が降り注いだのだ。どれほどの時間が経ったのだろうか。見渡すと目の前は荒野となり、気温がぐっと下がっていた。そう、氷河期に突入したのだ。カーネルのお陰で私は無傷だ。しかしカーネルは…。

カーネルは最後の力を振り絞って言った。

「これが鶏肉を恐竜肉に変えるレシピだ。11種類のハーブとスパイスを組み合わせ、圧力釜でじっくりと揚げることで、鶏肉のタンパク質が変化し、恐竜肉となる。これで、フライド恐竜肉を作り、現代に広め…て…く…レ。」

「カーネル?カーネル!?カーーネーーーーーール!」

私の叫びは虚しく、カーネルに届くことはなかった。

私はむくりと立ち上がった。そして決心した。氷河期を乗り越え、フライド恐竜肉を現代に広めるということを。

私は孤高のサイエンスフライドチキンリストとして、新たな目標に向かって旅立ったの…だ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?