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SOMETHIN’ ELSE

秋分の日です。

芸術の秋です。

秋をテーマにした音楽はたくさんありますが、中でも「Autumn Leaves(枯葉)」は有名です。

1945年にジョゼフ・コズマさんが作曲して、後にジャック・プレヴェールさんが詞を付けたシャンソンの名曲です。

1950年代になるとジャズのミュージシャン達が取り上げることが多くなりました。

数多くの名演がある中で、真っ先に思い描かれるのが、マイルス・デイヴィスさんのミュートを利かせたトランペットが印象的な1958年の名盤『サムシン・エルス』に収録されている演奏です。

そういう訳で、本日の“こずや”のBGMは『サムシン・エルス』です。

『サムシン・エルス』はブルーノートレーベルの1595番としても有名なアルバムです。

マイルス・デイヴィスさんのブルーノートへの“恩返しアルバム”です。

1950年代前半、マイルス・デイヴィスさんは麻薬中毒のような状態になって演奏が不安定になりLIVEや録音といった演奏活動が完遂できない状況にあり、仕事も干された状態になっていた時期がありました。

そんな低迷していた時期に、マイルスさんの才能に敬意を払って手を差し伸べ、録音の機会を与えたのがブルーノートレーベルを設立した初代オーナー兼プロデューサーのアレフレッド・ライオンさんでした。

その後、マイルスさんは麻薬を自力でやめて復活し、大手レコード会社のコロムビアレコードに迎えられました。

コロムビアとの専属契約なので、他のレーベルでは吹き込めないということで、マイルスさんはアルフレッド・ライオンさんへの恩返しの為にコロムビアレコードに特例を認めさせて、ブルーノートでのレコーディングを計画します。

メンバーは、マイルスさん自身で選んだようです。

専属契約の無いマイルスさんが、ブルーノートでリーダーとしてのアルバムを出す訳にはいかなく、そのリーダー役をアルトサックスのキャノンボール・アダレイさんに頼みました。

しかし、実質的にはマイルスさんのリーダー作です。

このアルバムの一番の目玉が1曲目の「枯葉」ということになります。

ここでの演奏が、ジャズの「枯葉」の現代の基準になっています。

リーダー役を担ったアルトサックスのキャノンボール・アダレイさんの演奏もこれまた素晴らしいです。

陽気な“動”のキャノンボールさんとクールな“静”のマイルスさんのコントラストがたまりません。

ハンク・ジョーンズさんのピアノ、サム・ジョーンズさんのベース、アート・ブレイキーさんのドラムによるリズムセクションの音もいかにもブルーノートな雰囲気を醸し出しています。

ブルーノートに在籍していなかったマイルスさんによる作品ですが、ブルーノートレーベルの象徴のようなアルバムになりました。

コール・ポーターさんが作曲した名曲「ラヴ・フォー・セール」もそうですし、マイルスさん作曲の「サムシン・エルス」、キャノンボールさん作曲の「ワン・フォー・ダディー・オー」…どの曲を聴いてもアレンジが素晴らしく最高のジャズ体験ができます。

そして、最後の「ダンシング・イン・ザ・ダーク」は、マイルスさんが加わらないでリーダー名義のキャノンボールさんのプレイが伸び伸びと炸裂しています。

他の曲でもマイルスさんはかなりキャノンボールさんに気を使ってサイドマンに徹しようとしていたようですが、目立っちゃった形です。

ドラマーはアート・ブレイキーさんです。

ドラマーという枠を超えて大スター的存在なので、話が長くなってしまいます。

元々はピアニストで、無理やりドラムに転向させられた過去があります。

そんなアート・ブレイキーさんですが、ナイアガラロールと呼ばれる滝が叩き付けるような…まさに“轟く”という表現がピッタリなドラムロールが有名になり、ビバップやハードバップ期のジャズの中心人物になってしまうのですから人生なんて何が起きるかわかりません。

1954年にジャズ・メッセンジャーズを結成し、リーダーとしてメンバーの入れ替わりを繰り返しながら活動しました。

メッセンジャーズには、多くの若手をメンバーに起用して育て上げたことでジャズ奏者の登竜門としての一面もありました。

メッセンジャーズ出身者にはウェイン・ショーターさんやキース・ジャレットさん、ブランフォード・マルサリスさん、ウィントン・マルサリスさん等…数え切れないほどの錚々たるスタープレイヤーがいます。

アート・ブレイキーさんと言えば、名曲「モーニン」がありますが、それについては別の機会に…。

アート・ブレイキーさんのドラムはとにかくパワフルで、バンドのメンバーのケツを蹴り上げるような形でバンド自体をコントロールするような演奏をします。

他のメンバーを鼓舞するような激しい演奏で、メンバー達の即興演奏に火花を散らせます。

もちろん激しいだけではなく繊細な演奏も的確です。

それは『サムシン・エルス』を聴けばすぐにわかりますが、シンバルレガートがとても印象的です。

アフロキューバン・リズムをジャズに取り入れたことでも有名で、「チュニジアの夜」や「キャラバン」といった名曲もありますが、それも別の機会にします。

マイルスさんがこの『サムシン・エルス』の後にモードジャズを築き上げていくのに対して、アート・ブレイキーさんはファンキージャズ路線を突き進みます。

ファンキージャズはブルースのフィーリングを全面に出してゴスペルの要素も加わえた…ブラックミュージックのルーツを強調したハードバップから派生した演奏形態です。

このように、アート・ブレイキーさんはマイルスさんに匹敵するぐらいジャズの発展に貢献された人物です。

『サムシン・エルス』は、私の記憶にある限りでは3歳の頃から聴いています。

おそらくその前から…ひょっとしたら生まれる前から聴いていたかもしれません。

生まれる前から聴いていたと思われるのは、これと『カインド・オブ・ブルー』です。

『カインド・オブ・ブルー』についても別の機会です。

この2枚に共通しているのが、マイルス・デイヴィスさんとキャノンボール・アダレイさんがコラボしているということです。

そんな歴史も踏まえつつ、あぁ~ステキ♪


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