若林さんの結婚

※注意:お笑いオタクの自分語りです。心の広い方はお付き合い下さい…。

私はお笑いコンビ、オードリーのファンだ。大ファンと言っても過言ではないと思う。
ハマったきっかけは、M-1グランプリ2008でもバラエティでの春日さんの貧乏キャラでもなく、オールナイトニッポンだった。

高校生の頃、自室にはテレビもパソコンもなく夜中にラジオをよく聴いていた。そこでオールナイトニッポンに出会った。
AKBやmiwaのオールナイトを聴くようになり、他の曜日は誰がやっているのかとためしに聴いてみて、オードリーのオールナイトニッポン(以下オードリーANN)に出会った。

番組を聴いた人は必ずと言っていいほど抱く感想だが、テレビと違って若林さんがよく喋り、春日さんはそれほどキャラを出さない。

今でこそ、若林さんはMCとしてのイメージがあり、春日さんも漫才以外ではそれ程キャラを演じている感じもしないが、私が聞き始めた2011年はそれがとても新鮮に感じたのだ。芸人さんのラジオを私が初めて聴いたというのもあるのかもしれない。

若林さんがトークを引っ張り、ボケて、春日さんをイジリ、最近思っていることを話す。
春日さんが若林さんのトークを聞き、ボケにツッコミ、イジられ、若林さんの思っていることについて自論を述べる。
そこに落とし込まれる同級生ならではの学生時代の話や、懐かしいテレビや芸能人の話、売れていない芸人仲間の話。

最初の頃は何のことか分からない事が多かったが、聴くにつれてそれが少しずつ分かる様になったのが嬉しくて、楽しかった。
気づくと1週間で最も楽しみにしている2時間になっていた。

2人のフリートークはどちらも好きだったが、人見知りで内向的、クラスでもあまり目立たないタイプだった私は、当時すでに人見知り芸人として有名になりつつあった若林さんのトークの虜になった。

若林さんは生きるのが上手でなかった。普通ならスルー出来る事が出来ずに苦しんでいた。女性と簡単に喋れず、先輩にお世辞が言えず、飲み会を上手く乗りきれず、周りの目を気にしすぎていた。売れない芸人として鬱屈した20代を過ごし、30代で初めて社会の荒波に投げ出されていた。
そんな彼に共感を覚えたリスナー私だけじゃなく世の中にたくさんいた。

同じ様な思いを持った南海キャンディーズの山ちゃんとのユニット「たりないふたり」は番組、ライブ双方で成功を収めた。
2013年に発売したエッセイ「社会人大学人見知り学部卒業見込み」は後に文庫化もされるほどのヒットした。

そんな私自身の高校生活はオードリーANNとは切り離しては語れなくなっていた。好きな回はとにかく繰り返して聴いた。
部活や勉強が上手くいかなくてもオードリーANNを聴くと忘れる事が出来た。
部活の最後の大会で3年生で唯一ベンチに入れない事がわかった日もオードリーANNを聴いていた。受験生の時もずっと聴いていた。勉強がキツくて聴いていない時の方が少なかった。

受験当日でさえ、何十回も聴いたトークをまた聴いていた。今思うと、番組に依存していた様にも感じるけど、本当に番組に救われていた。

滑り止めだった大学に入り、サークルに入るまで友達は出来なかったが、その時も膨大な時間を持て余して番組を初回から聴き直してた。
サークルに入ってからはラジオやお笑いが好きな友達も出来た。高校にはいなかったので本当に嬉しかった。

大学では良くも悪くも高校で経験しなかった様な事をたくさん経験した。
そんな目紛しい日々でも土曜の夜は変わらずやってきた。

私の生活が変わった様に2人も少しづつ変わっていった。
春日さんは海外ロケの仕事が増え、番組の企画でボディビルを始めた事をきっかけにアスリート芸人と化していった。
若林さんはMCとしての仕事が増えていき、プロレスやラップなど趣味から発展した仕事が増えていった。特にプロレスとの出会いは彼の考え方を大きく変えていった。
そして、ガールズバーに通って人見知りを克服していた。
この頃から少しずつ「高校生の頃に私に寄り添ってくれていた若林正恭では無くなっているんだろうな」という思いが心の何処かにあった。

それでも2人のトークは面白かったし、私は土曜の深夜を生きる糧にしていた。それは変わらなかった。

2018年、私は社会人となった。昔の若林さんとは世界は違うが同じように社会の荒波に投げ出された。仕事が始まって数日で聞かされていたのとは違う部署に移動させられ、そこでの人間関係がとてもキツかった。

そんな時に若林さんの3冊目のエッセイ「ナナメの夕暮れ」は発売された。

家に帰るまで我慢できずに駅のホームで読み始めて、気づくと泣いていた。
私が変わったと思っていた若林さんは何一つ変わっていなかった。全てを受け入れて前に進んでいたのだ。

発売当時の放送で若林さんは「自分と読者の1対1でこの本を書いている。」「この本を読まなくてもいい人は沢山いる。」「明らかなセンシティブな人は読んでほしい。」と話していた。

また救われた。私もゆっくりでも自分なりに前に進もうと思えるようになった。

2019年3月、オードリーのオールナイトニッポン武道館が開催され、会場と各地のライブビューイング合わせて2万5千人ものリスナーが2人の姿を目に焼き付けた。
最後に漫才をする2人はこれまで見た芸人の中で一番カッコ良かった。一生忘れないと思う。

その後春日さんは結婚。若林さんは分かりやすく燃え尽きていた。
そんな時に今の奥さんを紹介されたらしい。
タイミングも良かったんだと思う。

若林さんの結婚を100%で祝福できているのかと聞かれるとそうではないと思う。パーセンテージでいうと60くらいだ。でも、いつかは100になれると思う。だって自分の大好きな人が幸せになったのだから。

本当におめでとうございます。私の思春期はもう少しだけ続きそうです。

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