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たまには空を見ろ

人間というものは、大人になるとどうにも足元を見て生きることが増える。下を見ていないとすぐに足をどっかに引っ掛けてしまうせいかもしれない。他の人に足元を見られることが多いから、自分でもそうするようになったのかもしれない。電車とかでの通勤中に、目線のせいでトラブルになることを心配しているからかもしれない。考えることが増えるうちに、だんだん首が下がってゆくからかもしれない。

いずれにせよ、スマホという都合の良い言い訳があるせいで、誰も彼もうつむいて過ごすことに慣れてしまっている。

この間、久しぶりに電車に乗ったんだけど、乗客のうつむき方が以前よりパワーアップしているように感じた。スマホを取り出さず、車窓の景色を見ているのは俺だけ。それがまるで奇人変人の行状であるかのように思えるほど、誰も彼もスマホに釘付けだった。俺は自分が変わり者であることぐらい百も承知しているが、まるで短編「2001年現世の旅」の主人公がごとき気分を味わった。トンでもない未来を俺たちは生きている。そりゃあ季節感もなくなるだろう。見ていないのだから。

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