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ルーシッド・アイのフラゼッタ公式認定ミニチュアレンジ、たそがれの船着場へ

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雪のように白い船が、紫色と黄金色に輝く鏡のような波面なみもをすべるように渡り、湾の入り口で帆をたたみました。湾は底が浅いため、大きな船は入れないのです。しばらく見ていると、止まった船体からするすると小舟が下ろされました。白いような、黒いような服を来た船頭がかいを巧みにあやつり、小船はゆっくりと船着場へ向かってきます。

そして彼らは旅立ちの準備をはじめました。この地に別れを告げ、はるか彼方の海へと漕ぎださねばなりません。あるいは、誰かに呼び止められれば、とこしえの家をこの地で見つけられることでしょう。

ミニチュア一期一会

ハーミットイン商店に置いてある全てのアイテムは、初めて商店を訪れる人にとっては新製品である。だから、ニューリリースはむろん、商店にある全ての製品を等しく紹介していきたいし、商店に並べるアイテムは全て在庫を維持していくのが俺の方針だ。一方で、メーカーからの供給が途絶えることで絶版になるミニチュアが不定期に出てくる。

たそがれの船着場」と名付けられたカテゴリーに入り、売切と共に商店から姿を消すミニチュアたちのことを、君は知っているかもしれない。すでにかなりの数のミニチュアたちが、はるか遠くの海へ旅立って行った。船着場にいる彼らは今、君が呼び止めてくれるのを待っている。

ミニチュア一期一会。それは「ミニチュアは、いつ入手できなくなるかわからない。絶版にならずとも、型がどんどん疲れていく。欲しい物は後回しにせず、早く買っておいた方がいい」と言う、身も蓋もない真理のことだ

今すでに船着場にいるミニチュアはもちろん、今商店に並んでいる者たちの中にも、「船着場」へ赴く時がいつくるともしれないし、場合によっては、船着場にとどまることなく、そのまま旅立つ場合もあるだろう。

俺は君に、来たるべき時が来たことをアナウンスしなければならない。ルーシッド・アイは、フラゼッタ・カンパニーとの契約終了により、デス・ディーラーおよびフラゼッタ公式ミニチュアレンジの生産を停止、プロダクションモールド、マスターキャスト、マスターモールド、原型の全てを破壊した。つまり、二度と生産されることはないんだ。


絶版の種類

そもそも、ミニチュアが絶版になるのは様々な背景があるけど、大別して4つの“背景”がありうる。改めて紹介しよう。

まず、メーカーが「単純に生産を止める」場合。これは何かの理由で、メーカーがそのミニチュアの生産を止めることで在庫のみの販売隣、やがて絶版になる。何かのきっかけで再生産される場合があるけど、まあ、理由があって生産を止めるので、そのままSAYONARAというケースがほとんどだ。

次に、メーカーが「型の再生をできない」場合。これは、原型から直接型をとったマスターモールドの一部または全てが損壊し、その修復や再生ができない場合に起こる。生産用の型である「プロダクションモールド」は、原型から直接型取りした「マスターモールド」で抜いたミニチュアを用いて型を作るからだ。マスターモールドの作り直しは、新規造形のミニチュアを作るよりも金と手間がかかる。サムシング・ミラクルが起こらない限り、復活は絶望的とみてよい。

あるいは、「メーカーの事業撤退、あるいは倒産」。これは、型の状態に関わらず、即時絶版の要因となる。グレナディアの倒産から数年後、ミルリトンが一部のミニチュアを復刻したり、ラルパーサ・ヨーロッパが、旧ラルパーサの一部レンジを継続販売しているのに加え、倒産したホビープロダクツやハートブレイカーの一部製品を復刻するなど、まれに後継メーカーが型を買い取る場合もある。だが、そうでないケースの方が多いため、これも復活は絶望的とみてよい。

そして、もう一つある。「版権許諾契約の終了」だ。版権ミニチュアとは、デザイナーやメーカーが第三者の版権を借り受けて生産するもの。人気のある第三者のコンテンツを用いて製品展開できる版権ミニチュアは、より幅広いファンにリーチできる強みがある。

各メーカーを渡り歩いた版権ミニチュアの代表格といえば、D&D(AD&D)のオフィシャル・ミニチュアだろう。グレナディア、シタデル、ラルパーサは、いずれも公式ライセンスを得て、一定期間、D&D(AD&D)の公式ミニチュアを展開していた。

だが、版権許諾には必ず期間がある。そしてその期間がどのくらいなのかは、たいてい守秘項目になっており公表されない。版権ミニチュアが生産されているうちは、単に「販売継続」されるだけで、契約がどのくらいの期間で、どのくらいの頻度で更新されているかは、外部から見てまずわからないようになっている。別の言い方をすれば、版権許諾契約の解消がなされると同時に、いきなり該当製品が店頭から消える、という事態になるわけだ。

80年代〜90年代初頭では、単なるパッケージ変更や名前変え、あるいは原型の一部改修をへて、かつての版権ミニチュアがシレッと販売再開されたりもした(グレナディアの初期「ドラゴンロード」レンジは、かつてD&Dミニチュアとして販売していたミニチュアのパッケージ変え製品がかなり入っていたし、シタデルの「ハイエルフ」レンジにも、92年くらいまでは「エターナルチャンピオン」のメルニボネ人がかなり混ざっていた)。

でも、近頃はそうしたアグレッシブな抜け道は塞がれている(というか昔がオオラカすぎただけ)。版権許諾契約が解消されれば、残存する全プロダクションモールドおよびマスターモールド、そして原型の破壊が、昨今の版権ミニチュア事情だ。つまり、版権許諾契約が終了すると同時に、そのミニチュアは完全に市場から姿を消し、その存在すら、記憶の彼方へ消えてゆく。

まさに、ミニチュア一期一会である。


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