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テイルズ・アット・ザ・ベイルファイア 1:コンテストは怖くない

はじめに

ここ日本でも、様々なミニチュアペイントコンテストが開催されるようになってきた。素晴らしいことだ。だが、コンテストと聞いて「いやーうまい人にはどうせ勝てないからやーめよっと」とか「いやー忙しいしマイペースでやってるし」だの「なんか有名な人とか出てきたら俺なんて終了でしょ」とかいって尻込みし、参加そのものを諦めてしまう人をよく見る。それはとっても残念で、もったいないことだと俺は思う。

コンテストと言っても、形式は色々だ。最近は投票による審査が多いけど、ハーミットインでは、ジャッジによる審査が入るタイプのコンテスト「ベイルファイア」を開催している(定期購読マガジン「ハーミット・カウンシル」の購読者が参加できるクローズドなコンテストだ)。

これを読んで、一人でも多くの人が「ペイントコンテストへの苦手意識」を克服するチャンスにしてもらえれば嬉しいし、あるいは、ハーミット・カウンシルを購読して、ベイルファイアに参加してくれたら、もっと嬉しい!

さて、それでは記事へ移ろう。楽しんでくれ!

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よく来たな兄弟。まあ、暖まっていけよ。寒い夜だからな。まだ小さいが、火を起こしたんだ。よければ、君の火種と薪も足してくれないか。俺たち一人一人の持っている火種と薪を持ち寄って、大きな大きな焚き火を作ろう。この火を手がかりに、じきにもっと多くの冒険者がここに集うようになるはずだ。俺はそう願っている。

この火を絶やさぬのが、俺の誓い。だが一人では守れぬ。君の力を貸してくれ。輪をなして共に座し、来たるべき朝を待とうではないか。ここの夜は長く、暗く、そして冷たい。至るところに獣や魔物どもが潜み、俺たちを狙っている。だが、この火の周りは安全だ。

テイルズ・アット・ザ・ベイルファイア
〜焚き火を眺めながら語ろう〜

ようこそ。このシリーズ記事では、ペイントコンテスト「ベイルファイア」に関連したホビーアドバイスを届けていこうと思う。ペイントまめちしきの拡大版のようなものだ。

今年のベイルファイアにむけて、多くの趣味人たちが製作に取り掛かっていることだろう。

今回は、「ベイルファイアに参加するかどうか悩んでいる君」「どんなミニチュアでエントリーするか悩んでいる君」に向けて、俺自身の経験からくる考えと助言を伝えたい。

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選べる選択肢はたくさんある。まずは俺の話を聞いてくれ。


そもそもエントリーすべきか? 

俺は、君にぜひエントリーして欲しいと思っている。なぜか? 俺は君がペイントしたミニチュアを見たいし、他の人もそうだと思うからだ。スキルやキャリアなど関係ない。

ハーミット・カウンシルには、年齢もキャリアもバラバラの、しかし「オールドスクール・ファンタジーミニチュアが好き!」という想いを同じくする人たちが集まっている。今よりも上達したくてペイント大全を読む人もいれば、始めたてで塗り方がわからないから、ペイント大全でノウハウを学んでいる人もいるのだ。「みんなちがって みんないい」の哲学に従い、俺はこの状況は素晴らしいと本当に思っている。

ペイントまめちしきでいつも吼えているけど、上達とは結果であり、目的ではないはずである。上達を目的にしてしまうと、そこには切迫感と強迫観念が生まれ、もともとは純粋に楽しかったはずのホビーが、君を追い責め立てるようになる。そしてそれは確実に、君の想像力と創造力を蝕んでいくのだ。

ペイントが上手な人はいくらでもいる。でも、君の想像するものを作れるのは君だけだ。スキルのあるなしとか、そういう次元の問題ではない。もちろんスキルがあれば、君は自分のイメージをより的確に表現できるだろうし、そのための助言は、「ミニチュアペイント大全」で今後もどんどんやっていく。手を動かせば動かすほど上達するものだし、上達したら、そりゃもっと楽しくなるよね。

でも、だからと言って「うまけりゃいいのか」というと、ちょっと違うとも思う。だって君はユーザーなどではなく一人のアーティストだ。「一番絵の上手な画家」「一番彫刻のうまい彫刻家」「世界最高の歌手」が普遍的には存在しえないように、ミニチュアペイントでも、一番上手な奴なんて存在しえない。それぞれの個性があるし、その違いこそが楽しさでもある。そして君の作品は、君にしか作れない。その時点で、君の作品には価値がある。

ベイルファイアにはジャッジがいて、審査基準にのっとり、一つ一つをじっくり見て審査を進める。だけど同時に、年齢とかキャリアとか出来栄え云々関係なく、参加してくれる一人一人の作品にちゃんとスポットライトが当たる場所を用意したかった。そう、ベイルファイアは確かにコンテストだけど、評議会メンバーのグループ展示という、何よりも重要な側面があるんだ。

だからどうか、君が本気でペイントした作品を見せてくれ。そして皆の作品をnote上にアップして、俺たちの展覧会をやろう。


どんなミニチュアでエントリーすべきだろうか?

おそらく、誰もが最初に悩むであろうポイントだ。ペイントコンテストがどんな形式で開催されるのであれ、「コンテスト」という事は、入賞者が出るイベントという事だ。

とはいえ俺は、ベイルファイアをギスギスしたコンテストにしたくない。冒頭の読み物にもあるように、俺はみんなの情熱という名の炎を集めて、夜空を焦がす焚き火をつくりたいんだ。小手先のスキルのみが評価され、ペイントのうまい連中だけが楽しさを占領するような場所ではなく、オールドスクール・ファンタジーミニチュアの製作をする人たちみんなが楽しめるイベントにしたい。参加すること自体をモチベーションにできるようなコンテストに育てたいんだ。入賞作品のみならず、参加作品全てにコメントするのは、そうした姿勢のあらわれさ。

もちろん、ストイックに入賞を狙うのは素晴らしい精神だと思うし、俺も全力でジャッジする。ジャッジ式とか投票形式とか、審査形式はどうあれ、コンテストで共通するのは「より注目され、高い評価を受けた作品が受賞する」ということだ。では、ベイルファイアでは、どんな作品がより注目されるのか? どうすれば高く評価されるのか? ジャッジをブルボンで買収したり、ハチミツを用いたハニー・トラップを仕掛けても、それはムダである。ベイルファイアにおいては、審査の基準が明確だからだ。

1)ミニチュア及びベースデコレートのスキル
2)ミニチュア及びベースデコレートが語るドラマ性

2022.8/3追記:ベイルファイア2022(第6回から、シングル、マルチに加えてモデリング部門が設けられた。モデリング部門は、シングル、マルチ部門と同じく、ペイントとベースデコレートのスキルおよび作品のドラマ性に加えて、モデリングスキルも審査基準に含まれる。詳しくは『ベイルファイア2022 エントリーガイド』を見てくれ)。

ここに「ブルボンやハチミツをあげたか」は含まれない。そうなると、ブルボン作戦やハチミツ作戦ではなく、別のアプローチ…つまり、正面からペイントスキルと作品が語るドラマで勝負するのが唯一の道という事になる。

ベイルファイアでは、ハーミットイン商店で購入したミニチュアならば、どれでもエントリーできる。つまり君は、数百のミニチュアの中から、好きなものを選んでペイントできるわけだ。

ここで君は思うかもしれない。「やっぱり大型で目立つヤツにしよう」「コンテスト映えするのを選ぼう」「奇抜な色使いで目立とう」「最新製品とか、商店でまだ作例がないやつとか狙い目なんじゃないか?」「ジャッジが好きそうなの選んでいくか」「得意なスキルを見せられる奴を選ぼう」などなど。

「ベイルファイア」において、君がもし上記のような小手先だけの事を考えているのだとしたら、あえて言う。君は間違っている。

そもそも商店にあるアイテムは、俺自身も個人的にコレクションしたうえで、皆にもぜひ紹介したいものしか並んでいない。俺にとって、レッサーゴブリンと尊大なるドラゴンは等しく「サイコーなミニチュア」なのだ。よって、仮に君がコロッサル・ジャイアントでエントリーしようが、オークの重装弓兵でエントリーしようが関係ない。

大切なのは、そのミニチュアを君が好きでペイントしたかどうかだ。俺は君の作品をじっくり見て、君が込めたスキルとドラマを大いに味わいながら、審査をさせてもらう

ペイントスキルについても同じだ。奇抜で目立てば勝てるようなコンテストではない。それがドライブラシとシェイディングで仕上げられた作品であろうが、フェザリングとNMMでガッツリキメてあろうが関係ない。

大切なのは、それが君の本気ペイントかどうかだ。俺は君の作品をじっくり見て、君が込めた創造力と想像力を大いに感じながら、審査をさせてもらう

それはどういうことか?

君が好きなミニチュアを、今の君が持ちうる渾身のスキルとドラマを込めて本気でペイントしてくれ。君が好きなミニチュアを、本気で仕上げた作品を見たいんだ。


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色の流行はあるだろう。だが、ある色が他の色より優れている事なんてあるか? 作品も同じだ。それぞれに良さがある。コンテストだから、優勝者や入賞者は出るし、出す。でもそれは、入賞しなかった作品に価値がないということでは断じてない。


ベイルファイアの炎は暖かく、しかし熱い

審査の結果、君はトーチガード(灯火の守り手:入賞)、あるいはトーチベアラー(灯火の運び手:優勝)になるかもしれない。ならないかもしれない。でも、ベイルファイアに参加したという事は変わらない。エントリーした人は皆、「フェローシップ・オヴ・ザ・ベイルファイア:焚き火の仲間」だ。俺は入賞もできないし優勝もできないが参加する。俺も「焚き火の仲間」になりたいからだ。

2022.8/3追記:ベイルファイア2022(第6回から、シングル、マルチに加えてモデリング部門が設けられた。トーチベアラー、トーチガードに加え、モデリング部門にトーチビルダーの称号も用意された。詳しくは『ベイルファイア2022 エントリーガイド』を見てくれ)。

君の作品は、世界に一人しかいない、君というアーティストの作品だ。入賞しようがしまいが、君の作品の価値が下がる事はないのだ。だからどうかビビらず、楽しくペイントして、気後れなくジャンジャンエントリーしてほしい。

楽しんでこそのホビーであり、ペイントだ。そして、その楽しさがあってこそ、さらなる上達、あるいはコンテストでの入賞や優勝という結果があると思う。始めたてだっていいじゃないか。つい最近ペイント大全を読み始めたばかりだって気にする事はない。君はヘタなんかじゃない。これからうまくなるだけだ。

あるいは、君に腕に覚えがあるのなら、是非とも君のスキルとドラマ作りの技を披露してくれ。俺はいつでも刺激に飢えている。

ベイルファイアの炎で、切磋琢磨しよう。今回のエントリー作品を本気でペイントすれば、その前よりも、君のスキルは絶対に上がる。それだけは絶対に約束できる。

なぜか? 俺自身がそうだったからだ。ただペイントするのも楽しいけど、カジュアルにペイントしていると、どうしても「できる範囲で」ペイントを進めがちになる。コンテストは絶好のチャンスだ。腕によりをかけ、その時の最高傑作を仕上げようと、いつもはやらないようなテクに挑戦したり、あるいは普段なんとなく流してしまうような場所も、必死こいて仕上げるものだから。ジャッジはそれこそ、腰に下げた小袋の質感表現までも見てくる。手抜きや妥協をせず、本気でペイントすると、明らかにスキルのバーが上がるんだ。

俺も本気でジャッジする。だから君も本気で来てくれ。

さあ、ベイルファイアに向けて製作を始めようぜ!

「2:ノッティンガムの森から」を読む>>>

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