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ハーミット・カウンシル

「ミニチュアペイント大全」全内容に加え、カウンシル限定の特別記事の数々が読める定期購読ホビーマガジン。
「ミニチュアペイント大全」全内容に加え、カウンシル購読者限定の特別記事をお届け。同額で「メンバーシ… もっと詳しく
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#ハーミットイン通信

ハーミット・カウンシル 総合もくじ(2024年4月23日更新)

イントロダクション定期購読マガジン『ハーミット・カウンシル』(2017年4月創刊)は、オールドスクールファンタジーミニチュアの情報発信基地だ。カウンシルでは、定期購読マガジン『ミニチュアペイント大全』の全記事に加え、ミニチュアにまつわる様々な記事が、カウンシル購読者(評議会メンバー)限定記事として追加公開される。 『現在進行形のオールドスクールファンタジー・ミニチュア』を標榜し、日本における情報発信基地としてフル稼働を続けるハーミット・カウンシルが扱う話題は多岐に渡るもの

温泉気分で夢をとりもどせ

世の中にはいつでも様々なものが不足している。時代によってそれは移り変わるが、今回俺が取り上げるのは、現代の暮らしにおける夢の欠乏である。 近頃世間を見ていると、みんなとにかく夢を失っており、心の余裕がない。トゲトゲしくて、ギスギスしてて、そう言うのを見聞きするだけで俺は気分が悪くなる。 夢のない暮らし…書くだけでおぞましい。なんと味気なく、さみしい響きであろうか。保湿の足りていない肌がくすみ、たるむのと同じように、夢という潤いのない暮らしは、実に味気なく、平坦なものだ。そ

未来のおにぎり

セブンイレブンが初めて家の近所にできたのは、俺が小学生の時だ。元は酒屋だったところがセブンイレブンになったそうである。 開店日に俺はクラスメートたちと店を見に行ったが、「祝開店」の紅白花輪がいっぱい並ぶ中、店先のテントで、大人たちが祝い酒を振る舞われていた。近年の開店風景とはかなり違う、いかにも昭和な光景だったことを覚えている。 それと前後して、テレビではセブンイレブンのコマーシャルが流れ始めていた。クラスの奴らは何人かすでにセブンイレブンを体験し、その土産話でクラスは沸

はじめてのマクドナルド

俺は、マクドナルドが昔から、そして今でも大好きだ。 俺が幼少のみぎり、横浜駅にはひとつだけマクドナルドがあった。赤い看板に白文字で「マクドナルド ハンバーガーレストラン」のカタカナがドデンと鎮座する、特別なレストランが横浜三越の1階にあったのだ。まだ母は免許を持っていなかったので、父がいない平日のおでかけは、決まってバスに揺られていた頃である。 市営バスの「横浜駅西口ゆき」の終点は、横浜三越の前にあった。バスを降りると、色とりどりのパラソルを掲げた真っ白いテーブルの群れが

俺は個包装されたジャパンをノッティンガムで食っていた

個包装された半生和菓子の袋詰め。君も、スーパーのお菓子売り場で見たことがあるだろう。子供時代はもちろん大学時代まで見向きもしなかったこのお菓子は、1997年秋以来、俺にとって格別・特別なお菓子になっている。 今日はその話をしよう。今俺は、シアワセドーの「喫茶去」をつまみながらコーヒーを飲み、この原稿を書いている。 これらの袋詰めは昔からの定番商品ではあるが、俺の実家では、もっぱら年配のお客さんがいらした時のお茶受けや、仏壇供え用に購入されていたものだ。子供の頃、たまに祖父

夜明け前に出かけて、昼過ぎに帰ってきた話

年明けからまもなくのことだ。父が「おい庸爾、来週、修善寺奥の院に行くぞ」と突然言い出した。俺にも仕事があるので、日取りは俺の都合に合わせてもらったが、前日から実家へ泊まり込むことになった。なぜか? 日の出より早く家を出るからだ。 出発したのは朝の5時すぎ。俺は普段、夜明けまで仕事をして朝に寝る生活なんだけど、前夜はさすがに早く休んだ。山道を行くため、俺の愛車である軽のラパンには荷が重い。父のX-TRAILに乗り込み、行きは父の運転である。 横浜から高速に乗り、湯河原で一般

HIROYOが俺に教えてくれたこと(後編)

HIROYOは、中学一年生の時に同じクラスになった女の子であり、俺が中学で初めて親しくなったクラスメートだ。小学校時代、絵を描かせればイチバン・ナンバーワンだった俺の鼻っ柱を、その壮絶な絵でヘシ折ったのみならず、俺の絵を褒めるという離れわざで、勝手に勝負に出ていた俺の愚かさとオッペケペー小僧ぶりを自認せしめた地獄のキノコ女…。後編では、HIROYOと仲良くなった後の話、そして彼女から教わったことの話をしよう。前編は下から。 ***

HIROYOが俺に教えてくれたこと(前編)

人間というものは、それが何であれ、どこかの時点で頭をぶつけるものだ。誰だってそうだ。俺もそうだ。人間だもの。勉強であれ、部活であれ、仕事であれ、ホビーであれ。周囲から一目置かれ、自分がそれなりの自信を持つ事柄でも、環境が変わったり、より広い場所に行った時、自分より遥かに高いスキルを持つ奴に出会い、勝手に敗北感に打ちひしがれるわけである。 頭をぶつけること。それが何かの終わりになるやつはたくさんいる。自信をなくしてションボリし、俺は一体なんだったんだとふてくされ、実は井の中の

その男、7010。

俺が7010(ナオト)と初めて話したのは平成5年…1993年冬、実家の電話口でだ。ちょうどゴライアス(ハルクウーベンを舞台にしたRPG)の経験ルールを書いているところに、リビングの電話が鳴ったのを覚えている。 当時、電話は家か公衆電話と相場が決まっていた。携帯電話(肩担ぎタイプ)を24時間戦うビジネスマンやワナビー大学生が持っていたのは別として、ポケベルがようやく高校生に普及したころの話である。家の電話はプッシュ回線ではあるものの、番号通知をする窓などついていない。誰がかけ

記憶の力と記録の力

俺はいつも「こんな事したい」「あんな事したい」と考えては、それをノートに書き留めるようにしている。アイデアノートというやつだ。俺が何かを思案したり考えをまとめたい時にも、やはり最終的には必ずノートに書きつけて考えをまとめる。考えるプロセスを客観視し、内容をしっかりと言語化することにつながるからだ。 俺は普通の人よりも記憶力が悪い自覚があるので、代わりに記録力に頼る。加えて、日常で知り得たちょっとした雑学だったりも、俺はなんでもかんでも書き留めてしまう。例えばそれは、なんかう

蛇口は一つが ありがたい

君の家の洗面所には、いくつ蛇口がある? 俺の家の洗面所は一つだ。口のひねり方で水温を調節できるし、湯沸かし器の温度設定をいじれば湯温も調節できる。だが、イギリスはやばい。危険だ。奴らの洗面所には2つ蛇口があり、それは罠である。日本にも2つ蛇口のある物件はもちろんあるが、赤い方をひねっても、あたたかいお湯が出るはずだ。イギリスの赤蛇口はやばい。まさにサラマンダーの口である。沙羅曼蛇マウスだ。 97年9月。渡英したばかりの俺は、最初の数ヶ月、ゲームズワークショップのアメリカ支社

錆びついたホーロー看板

街を散歩していると、古いホーロー看板に出会うことがある。それは新堀ギター教室であったり、質のマルフクであったり、あるいは、見たこともキータこともない食料品店や工務店の宣伝であったりするが、それらはひどく錆びており、読むことさえできない場合も多い。 こうした看板は、たいてい、人が住んでいるかさえ判然とせぬ古い家や小屋の壁にあるものだが、そうした場所は、なんとも言えない寂しい空気をまとっている。曇りや雨、あるいは夜だとそれほど感じないが、朝、ないしは夕暮れの陽光に照らされた時は

「Somewhere Far Beyond 随想集2018-2021」総合もくじ

イントロダクションハーミットインというスモールビジネスのオーナーとして。趣味人として。息子として。父親として。そして一人の人間として。 俺が今見ている世界、今まで経験したこと、今考えていること、ホビーや創作について思うこと、あるいは素晴らしい思い出、恩義を授けてくれた人たちについて語るエッセイを、不定期に『ハーミット・カウンシル』でしたためてきた。 『ハーミット・カウンシル』は、『ミニチュアペイント大全』を含むオールドスクールファンタジーミニチュアにまつわる様々な情報が収

私、失敗しますので

人は勝利したり、達成したり、獲得したりすることで成功体験を味わうが、人生とはうまくできており、その分敗北したり、挫折したり、喪失したりすることもたくさんある。 成功体験をすることは大切だ。それは大きいことだけではなく、小さなことも当然含まれる。成功体験から喜びや幸福感、充実感などを味わい、失敗体験からは悲しみや不安感、徒労感などを味わう。 成功体験から得られる教訓はもちろんあるが、俺自身は、成功体験よりも、失敗体験の方から多くを学び取ってきた。それはなぜか? 成功する回数