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じゃれ本!!!!!!!!!!

 じゃれ本で遊びましょう。
 遊びました。

今回の検証目的

じゃれ本とは!

 複数人でリレーでお話をつくる、ボードゲームの一種です。
 単に続きを書くというだけではなく、「直前に書いた人の文章しか見られない」という制限がかけられているため、話の脱線や登場人物の消滅など、混沌の先に生まれる支離滅裂なストーリーを楽しむことができます。

あたまゆるゆるインターネット

 21世紀をインターネットと共に過ごしてきた人々の強い味方であるテキストサイト「オモコロ」、そのライター陣が運営するyoutubeチャンネル「オモコロチャンネル」の主力コンテンツでもある「じゃれ本」。
 具体的には「じゃれ本」と入力するとサジェストの2番目が「オモコロ」になりました。「オンライン」の次です。ほぼ代名詞。

 オモコロチャンネルでは他にも様々なボードゲームを取り上げていますが、じゃれ本は特に人気が高く、つい昨日には8回目のじゃれ本回がアップロードされました。異常。
 その8本の動画を見ても、じゃれ本は非常にとてもべらぼうに面白そうなんですが、他のボードゲームの場合とは異なり、こんな疑問も湧きます。
 これ、本職ライターがやってるから面白いんじゃないの?
 
素人が手を出したら火傷するというか、普通にやっても桃太郎が熊退治するくらいのストーリーにしかならなくない? それぞれが凡才を晒して乾いた笑いが生まれるだけじゃない?

 ということで、実際にやってみました。

検証メンバー

俺:野球チーム結成を目論みメルカリで金属バットを購入した。
シロウ:最後にペンを握って結果を出してから18年経過している。
I:vtuberにハマって都政への義憤を燃やしている。
M:墓碑銘は「えいごであそぼを実況した」。
K:毎日何かに怯えて暮らしている。
O:やることなすこと疑わしい。

検証方法

 6人に対して4冊(1セット)しかなかったので、順番は固くは決めずに空いてる人間に適当に回しました。一応「最初の6段落はそれぞれ別の人が担当」というのは徹底されたので、順番通り回した場合とそこまで大きくは異ならなかったと思います。

検証結果

 滅茶苦茶面白かった。
 その日は他にもボードゲーム(「インサイダー」「クイズいいセン行きまSHOW」「詠み人知らず」)やマーダーミステリー(「ウェンディ、大人になって」)を遊びましたが、じゃれ本が1番盛り上がりました。特にウェンディは(事前にプレイ済で)GMを務めたIが最高傑作とまで評する作品だったのに、そのIがじゃれ本で「生まれてから一番笑った」というのだから凄まじい。
 その上で言うと、あくまでボードゲームというか、面白さはライブ感によるもので、出来上がった物語それ自体は……(最後に掲載します)。そして1回やってみると、話を面白くする上で必要なことと、それがオモコロチャンネルで実践されている事実がはっきり見えてきました。

アクセルを踏み続ける

 話を続けようとしている段落はどうしても凡庸になります。
 じゃれ本は8つの部分に分かれていますが、これを一番面白くするには起転転転転転転結起転転転転転転転にするのが理想です。承は笑いを生まない(個人の見解です)。ハンドルをどこに切ろうと、とにかく常にアクセルは全開にすべき。バトンを受けつつも新しい風を吹かせないといけません。

有名なコンテンツに乗っかる

 有名作品や有名人を使うのは非常に動かしやすいです。人物の特徴や決め台詞が担当する各人の頭に思い浮かぶから、物語をシームレスに進められます。そして変に漫画やアニメのキャラクターを使うと権利の問題が発生しかねない以上、有名人の方が扱いやすいのは自然の成り行き。
 いや、有名人でも権利の問題は生じるけど……

下ネタは共通言語

 ↑と共通しますが、出てきた単語がわからないと、次に回された人は話を進めるのが難しくなります。僕は「ハリウッドザコシショウ」がどういう芸人なのか全く知らなかったし、シロウは「東欧」が地球のどの部分を指すのかもわからなかった(たぶん)。割と長く遊んでいるグループでもそれぞれの知識や得意分野には差があることに気付きました。
 そこで常に頼れるのが下ネタです。性的な表現に走ろうというのではなく、全員が平等だったコロコロコミックの水準にまで立ち返ればよいのです。小学生でもわかって、大人でも笑えるのが排泄物。便を燃料にすればエンジンはいくらでも噴かせる。

雑感

 それぞれが書くのに詰まる場面も散見されました。深く考えるタイプとノリで書くタイプがいて、僕は後者なのですらすら書いてしまったけど、そうやって適当に書かれた文章が前者のタイプをさらに困らせ詰まらせるという悪循環。しかしこのゲームは本来1人2分で書かなくてはいけないものなので、ライブ感のためには特に速攻を意識した方が全体の幸福度は上がりそう。
 時間さえ守られていれば作品完成までは2×8=16分、作品の読み上げまで含めても30分かからないボードゲームとしてはかなり手頃だと思うし、次にやる機会があればきちんと人数分冊子を用意したいですね。
 ゲームとしては、ガチで初対面の人がいる場で遊ぶのはかなり難しい気がしました。共通する知識がないと話を広げにくいし、今回のメンバーは一般人の中でも比較的文章を書くのが不得手ではない層が集まっていた気がするので(もっと書けない人はおそらく沢山いる)。ある程度信頼できる「ボードゲームが好きな人のグループ」が既にあるのなら、そこで遊ぶにはかなりオススメのゲームといえます。

完成作品

※全てフィクションです。実際の人物・団体その他には一切関係ありません。
※基本的に原文ママです。誤字等訂正していません。改行は適当。

闇プリン

①皆さんは闇プリンをご存知だろうか。
 その名前の通り表には流通していない”裏”の世界のプリンである。その実態を追う物語の始まりである。まずはその値段から、実態を暴いていこう。

②一般的なプリンの値段は200円程度。麻生太郎でもそのくらいのことは分かる。しかし”闇プリン”は1個8000円もする。ではなぜ、そんな金額のプリンが裏ルートで流通しているのか。詳しいハリウッドザコシショウを尋ねた。

③「は……? プリンはそら、そんくらいは……いや、むしろ1万切るんかって思いますけどね、うん」
 ザコシは明らかに困惑した様子で、隣にいたルー大柴に同意を求める。ルーは肩をすくめ、「んー、デリシャスプリンはミリオンダラー!」

④ザコシはルーのテンプレギャグをスルーして、闇プリンを追うことにした。闇プリンは自民党の管理下にあり、首相官邸にあるらしい。ザコシはとりあえずロケットランチャーを片手に突撃した。

⑤警備員に止められたザコシ
「でさーね!!」「ウッウー!!」
 掛け声と共にロケットランチャーを乱射する。首相官邸の壁に穴を空け、それがザコシの目に入る。

⑥一方その頃、別動隊のケンドー小林はホワイトハウスに潜入していた。
「あれはどこにある…?」
 とりあえずトイレで用を足した。

⑦すると、トイレの水が逆流し、黄色い水が流れてきた。
「こ、…これが闇プリン!?」
 なんと、闇プリンはホワイトハウスでバイデンによって作られていたのだ! すぐさまケンドーコバヤシは隊員に報告を行った。

⑧だがケンコバが報告しようと仲間の元に行って目にしたのは想像もしない光景だった。
「MAKE AMERICA GREAT AGAIN!!」
 トランプがホワイトハウスを占拠し闇プリンを回収、真実を知る隊員を口封じのために捕虜としていたのだ。
 このような結末を知る者は、読者の皆様を含め、もはや一握りだ。

油カメラ

①2050年、ついに油カメラが開発された。この油カメラには様々な機能があるが、大まかな使い方を紹介したい。

②まず手のひらに油を掬い顔にまんべんなく塗る。次に首元に端子を繋ぎ、ズボンと下着を脱ぎ、体育座りをします。

③上級者コースでは、バケツに油をため、頭からかぶる。その際、まくら元にはライターを忘れずに用意すること。

④油を入れていたバケツにライターを突っ込み、おもいっきりふりまわし、遠心力を使ってライターに油をしみ込ませてく。
 今回はその道のプロである、戦場カメラマンの渡辺陽一氏に話を伺うことができた。「

⑤「イラクではぁ……民兵……特に少年兵が……」
 長くなったので要約すると、この手法はインダス文明に由来する伝統的なもので、ペルシャを破ったアレクサンダー大王の副官エウメネスが改良してヨーロッパに輸入。その後東欧全域で発展した。

⑥そのような経緯を持つ油カメラは、現代に至るまでヨーロッパを中心に発展してきた。今では我々の生活になくてはならないものであり、戦争を感じるものではなくなっているのではないだろうか?

⑦歴史上初めて、人類以外でノーベル平和賞を獲得した「油カメラ」。現在もすごい速度で普及しており、まさに一家に一台と言えるものになった。しかし、このままでは地球上の油があと20年で枯渇するという統計も出ている。

⑧だが、資本主義社会において資源の枯渇なんてクソッたれだ。気にすることはない。油カメラは製作者の手を離れて台数を増やしていく。第2のスマートフォンと呼ばれる日も遠くはない。

ピントが外れたドラえもん

①西暦3000年、人類は滅びた。荒廃した地球、日本。ガレキの山をよけながら歩く一人のロボットがいた。

②「チッ……俺としたことが、ヤキが回った」
 ロボットの左腕はちぎれ、何本かの配線が飛び出ている。その片腕を奪ったのは「東国無双」剛田武だったが、今日までこの街を牛耳っていた剛田も既に事切れ、ロボットの背後にその骸が転がっている。

③「あの剛田がやられちまった!!」
 路地裏から声がする。今まで剛田について甘い汁を吸っていた骨川だ。剛田が消えた今、報復を受ける可能性がある。

④骨川が路地裏から出てきた時、その姿は特別凄惨なものだった。トレードマークの髪型は完全に崩壊し、いつも生意気なイヤミを言っている口は、前歯が全て折れ見る影もない。
「ドラえもん…助けてくれ…」
 のび太は言う

⑤その声に呼応するかのようにドラえもんが現われた。しかし、ドラえもんの形がやけにおかしい。顔はモニタになっていて、足がなく、モーターでローラーを作って移動し、動く際には音楽が鳴っている。どこかでこれを見たことがある。あれは…

⑥東京の繁華街を中心に走行している「バーニラ、バニラ、バーニラ求人」でおなじみのあの車だ。ドラえもんは野比のび太を救う使命を捨て、風俗店の求人に命を燃やすマシンに成り果てていた。

⑦「だーれが、だれがだーれが囚人?」
 ドラえもんの感覚は研ぎ澄まされている。賞金首ハンターとしての長年の経験が全ての「咎人」を判別し、男は殺し、女は「店」に送る。
「ん……あれは?」
 しかしその夜の最後にドラえもんのレーダーに反応したのは、予想もしなかった人物だった。

⑧「先生…?」
 二度と会えないと思っていた恩師との再会に目からオイルが流れる。これまでの出会い、別れ、冒険が走馬灯のように頭に浮かんでは消えていく。その目にうつる先生はオイルでピントが外れていた。

劇場現実

①男は劇場にいた。客席には男一人。
 まわりを見わたすが、誰もいない。立ち上がろうとするが、椅子に縛りつけられたように体が動かない。男には妹がいたが、障害があり、下半身は動かず、車椅子であった。男はふと、そのことを思い出した。

②もしかしたら、俺の下半身は今、妹の状態を引き取っているのかもしれない。しかし、そうすると上半身も動かないことの理由がつかない。自分の身の回りで、上半身が不自由な人がいないか思い出すことにした。

③上半身が不自由…そう、俺の正体は、マジックに失敗しテレビの生放送中に身体の大半を失ったマギー審司だったのだ。
 耳がでっかくなることをとめることが出来ず、上半身の右半分を失っているのだ。

④でも俺にはマジックしかない。PTSDにより耳を大きくすることができなくなった俺は小指を大きくすることにした。

⑤厳しいトレーニングの結果、半年後には俺の小指の半径は9㎝を超えた(※ギネス記録は13.8㎝)。しかしここで困ったことが起きた。鼻くそをほじれなくなってしまったのだ。詰まりに詰まった俺のBIG鼻くそは、もうダイソンでも吸いこめない。

⑥このままでは、舞台に立った時BIG鼻くそが客席に飛び込んでしまう。ギネス記録を目指すには、小指と偽ってちんちんを提出するしかない。

⑦幸い、俺のちんちんのサイズ感は小指と変わらないため、偽造がバレるリスクは少ない。意を決してちんちんを提出したところ、問題なく通った。しかしその代償に俺は女になってしまった。

⑧なるほど、車椅子の妹は俺自身だったのか。この劇場で起きたことは全て現実。俺はこの先、妹として生きていくことになるようだ。
 全身から力が抜けていくのがわかった。

解題

闇プリン

 ③が僕だが「ハリウッドザコシショウ」がわからなかった。仕方なく「闇プリンが高いと思っているのは語り部だけで、実際はとてつもないインフレの社会になっている」という構造に逃げたがあまりにも複雑すぎたし、それならそれでもっとあっさりした台詞でよかった。最低限ルー大柴を出して拡張性を残せたのはよかったと思う。
 ⑤は情景としては悪くないが、④から想像できる部分から抜け出している部分が無い。承はつまらない、というのはこういうこと。ルーをあっさり捨てた④、日本をあっさり捨てた⑥の思い切りがじゃれ本には必要。

油カメラ

 ②③④は流れは面白いが話がほとんど進んでいない。全体の3/8を使ってこれでは厳しい。最後に渡部陽一氏が出てきての⑤が僕だが、戦場カメラマンそのものから話を広げるのは無理があるので、戦場→イラクと連想し、あの地域一帯から「インダス文明(※メソポタミアの誤り)」、対ペルシャ戦役の「アレキサンダー大王」「エウメネス」、そして大王のマケドニアから「東欧」と要素を撒いていったが、⑥のシロウがどれも拾えずに完全に袋小路になってしまった。もっと予備知識の必要ない単語の方が相応しかった。
 とはいえ新しい単語を沢山出すのはいいことだと思う。意識としてはしりとりに近いので、次が拾える可能性を少しでも増やしたい。「渡部陽一」をマストで拾うのは結構厳しい。

ピントが外れたドラえもん

 ②は自分。「人類滅んでるのにジャイアン出すなや」と言われたが、厳密にそれを貫くとノラミャー子さんかドラえもんズしか出せなくなるのでジャイアンは正解だったと思う。世紀末の世界観をさらに拡張できた。
 ③はとりあえずスネ夫を登場させられたし、④はうっかりのび太を初出させてしまったが、⑤⑥⑦の畳みかけがよかった。⑥のバニラを受けて⑦の僕が即座に囚人を出せたのがファインプレイ。自分で自分を褒めてあげたい。⑧もすんなりタイトル回収ができて、先生ってあの廊下に立たせる人か……?という疑問だけが残る形に。恩師ってことはロボット養成学校か。

劇場現実

 ③~⑦の流れが秀逸。⑤の僕が壊れかけの世界観を全壊させたあと、⑥で躊躇なくちんちんに行ったところが良い。そしてそれを拾い切ってオチをつけた⑦が今回のMVP。ちなみにギネス記録は適当に書いた。半径13.8㎝って太腿以上やんね。

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