Meldのマニュアルを読み、触った (1 of 3)
溶けてしまいそう〜
↑おれはこの曲を音としては今初めて聴いた。メロディを知りました。
***
Abletonの細かい話は以下にまとめてます。
***
日本語マニュアルがまだないので、英文マニュアル↑に書いてあることを参考にまとめていく。
主観も感想も挟むし省略もするし、用語運用も軽薄にやるんで、ちゃんとしたの読みたいなら↑読んだり機械翻訳にかけたり公式の日本語マニュアルを待とう。
ただ、「マニュアルは一言で言い切ってるけど、測定するとかなりややこしいことしてない?」って点も多々あるので、できるだけ独自に追っていく。
で、クソ長い。3部作です。まだ書ききってない。スキマ時間でチマチマ書いてたらさあ……
読者想定は「まあまあシンセの基本分かってる / 単純なVAとかはすぐ使える / SerumならTable Editとかは見てないけど基本操作はわかる」ぐらい。完全初心者にはちょっとハイペースかも。
1. 概要
2 timbre layerである
まず特徴的なのが「完全に分離した2枚のlayer A/B」として音作りできること。
他のAbleton synthは「2つ以上のoscで違う音色を作って、それらを同じfilterやampに突っ込む」にとどまった。MeldはA/Bが独立したfilterやenvelopeを持っているので、それぞれで音色を作って出口で足し算できる。
厳密には"Analog"も設定によっては同じようなparallel routingにできる。"Wavetable"もfilterだけならsplitできる。
他社だと、Sylenth1も2 layerだ。ハードシンセならmicroKORGとかね。なので目新しい特徴じゃないが、Abletonの中ではあまり採用されてこなかった (Instrument RackでChain積めたから困りはしなかった)。
Macro-basedである
Meldで最初に目につく面白みはやっぱり、Osc Engineの魅力だ。
Live 11で追加された"Wavetable"のoscは100以上のWavetableから選べたし、PositionとEffect (Fm, PW, Sync, Warp, Fold…) を組み合わせれば、色んなことが同時にできた。
一方、Meldのoscは24種類。paramが2つ。paramはEngineごとに異なるが、自由に組み合わせられたりはしない。
……とするとMeldのほうがやれることの幅は狭く見える。Abletonの筋書きの範囲でしか遊べないの? みんな同じような音になっちゃわない? 折角自由なシンセなのに、オープンワールドじゃなくてストーリーが決まってるRPG? 初心者向けのストラクチャーデッキ?
この不安は完全な誤りではないが、param選定(Macro)がかなりうまいこと出来ていて面白いため、触っててつまらない感じはない。変化幅やバリエーションの規模感設定がうまいので、Modulation Matrixを使いまくっても"つまらない破綻"になりにくい。いらいらする地味な調整の割合を減らしつつ、創造可能性に天井がある感じもない、とても美味いラインだ。
2. オシレータ
[b#ボタン]でon-scaleの音程指定が可能
半音単位 (Semi-tones = st) の指定だけじゃなくて、scale度数 (Scale Degrees = sd) でpitch設定できる。
「timbre Aはふつうに入力通りのドレミで鳴らして、timbre Bは3度上のharmonyで鳴らしたい」とき、半音単位で4stに設定してると、曲がC MajorでCを弾いたらEが鳴るからいいけど、Dを弾いたらF#になってしまうのがヤダ、みたいのを解決できる。
Live 12から全体的にこの機能ついてるけど「non-diatonic chord使いまくるしループベースの作曲でもない」人は活かしにくそう。
ただし、この[b#]は下記するOsc Macroにも効く。上記では「12音chromaticだったのが7音scaleになる」などだったのが、Macroでは「pitchの連続変化だったのが音階になる」などの恩恵もあったりして、おもろい。
3. オシレータマクロ
Osc Engineごとに持っている2つのparam。これをガンガンmodulationさせるのがMeldの楽しみの中核っぽい。
modulationはMacro knobに対してかけるので、下記するような挙動を理解せずとも「LFOで動きをまず作った後で、テキトーにEngineを変えていい感じの音を探す」楽しみがある。こういう遊び方はwavetable synthのいいところを継いでるね。
名前に(b#)がついているEngineは、[b#]を点灯させておくとpitch関連のparamがon-scaleになる。
基本波形 系 3種
【Basic Shapes】
基本波形。
Shape: 波形選択。Sin - Tri - Saw - Sqrのmorph
Tone: 取説にはPWとあるがそれはSqrのときだけ。SawではOscSyncで、TriではWavefold。SinもWavefoldっぽいが上下非対称で謎 (上側だけ2回畳んでる?)
【Dual Basic Shapes (b#)】
基本波形の2本重ね。
Shape: 波形選択。Sin - Tri - Saw - Sqr
Detune: 2本目のpitchを0〜+1octまで滑らかに上げられる。
fineではなくcoarse。
【Noisy Shapes】
基本波形にNoise Distortionをかける。
Shape: 波形選択。Sin - Saw - Sqr (Triはない)
Rough: Distortion量
0でもやや影響あり。
特定波形 系 7種
【Square Sync】
Osc Sync。本来出したい音程よりもテキトーに高い音を作った後で、本来の周波数でresetをかけることによって、音程は保って音色だけ動かせる昔ながらの仕組み。
ひとつのsquareに2種類のSyncを同時がけできる。
Freq 1: 普通の、Syncされる側のpitch
Freq 2: 下図参照。普通は1周期ごとにresetをかけるが、こちらは半周期ごとにかける。squareの前半に対しては+1〜0、後半に対しては0〜-1の振幅であるかのように振る舞う。
そのため音色は普通のSyncと大差ないのに、Freq 1のほうと同時がけが可能。
【Square 5th】
Square波に5度上のharmonyを足せる。厳密には3倍音系。
5th Amt: 基準音程→3倍音(P5+1oct)→9倍音(M2+3oct) のcrossfade
つまり、Amount = 量というよりはmix balance。P Width: 元音程基準でのPW (9倍音には影響あるけど3倍音にはない)
【Sub Oscillator】
サブオシ。最初から1oct低いsine。
Tone: sine→squareのmorph
倍音が増えるので実質saturationっぽい効き方になる。Aux: 元音より更に1oct低いsineを足す (Toneは影響しない)。
【Swarm Sine / Triangle / Saw / Square (b#)】
これ目玉の一つだと思う。1 noteでも超派手な音出るぞ!
Detuned UnisonとChord Stackの間の子みたいな感じで、おそらく24本のoscの群れがモゾモゾ動いたり、和音のstackを形成したりする。(和音とはいえoctaveや5度が中心なので、Major/minorな主張は感じにくい。)
Motion: vibratoの幅
とはいえoscそれぞれがバラバラに動くので、ランダムで不安定なUnison Detuneのように聴こえる。Spacing: 12.5刻みでchord stackの音程構成が変わる。
上げるほどワイドで複雑な和音になる。詳しくは以下。
FM 系 4種
【Harmonic FM】
基本はsine 2op FMっぽい見た目。Ratioが整数比だけ取れるようになってて、car:mod = 4:1 〜 1:10 のrange。
ただしカクカク切り替わるのでなく、たとえばRatio最大からちょっとだけ下げると、10倍のFMかけたときの倍音と9倍のときの倍音がcrossfadeする感じ。
Amount: FM量
Ratio: modulator freq ratio
【Fold Fm】
FMとWavefoldなんだが、FM側の詳細がよくわからなかった。
modulatorがかなり高いlooped noiseな時の音に近い。modulatorにもfoldかけてんのかな?
Amount: FM量
0でも若干Tri気味。100でもさほどぶっ壊れない。Shape: FM後の出力のwavefold
【Squelch】
Ratioがおそらく固定のFM。3倍と32倍のratioを感じる。
最初から2oct低くてFormant Bassやるぞ感ムンムン。実際Amountひねるだけですぐ昔のUS dubstepみたいにヤイヤイ言う。
Amount: FM量 (マニュアル誤植してるねこのへん)
Feedback: なんらかのFM feedbackか? とはいえrangeは大人しく、formantがshiftして、Saw/Pulse的鼻詰まり感が見えてくる。
【Simple Fm】
名前の通り普通の、modulator ratioを非整数連続値でとれるFM (←keytrackはする)。
Amount: FM量
Ratio: modulator freq ratio
Pitch動く 系 4種
【Chip (b#)】
pitch LFO付きのsqr osc。Chiptuneらしくpure pulseではなく少し籠もってnoiseも乗ったlo-res感。
LFOもSquare波なので、2つの音程をピコピコ高速で往復するような音が作れる。音程の切り替わる直前に無音も入って、高速アルペジオ風味。
Tone: PWおよびpitch LFOの高さ
PWは50:50〜16:84くらいまでいけて、pitchは0〜+24stを連続変化Rate: pitch LFO rate (0のときLFO無効)
【Shepard’s Pi】
いわゆる無限音階モノ。ずっとpitchが同じ方向へsweepし続けてるように聞こえる。
Rate: sweepの速さと向き
真ん中が停止で、左にひねるほど下向きのsweepが速くなる。右なら上向き。Width: oscの数が2〜7つまで増える。伴ってsweep幅も広がる。
例えばWidth 0でC3を弾きRateを少し左にすると、「C4からぬっと現れ、どんどんpitchが下がり、C2までいったらぬっと消え、すぐC4に現れる」ループの動きをするoscが2本鳴る。消えたり現れたりするタイミングが揃わないよう、2つのoscはいつも1oct離れている。
oscが4本鳴るくらいまでWidthを上げると、「C5から現れ、C1まで動く」oscがoctave間隔で4本動いている。間隔が常に一緒なので、本数が増えると結果的にsweep rangeも広がるわけだ。
【Tarp】
pitch Env系。808 Kickぽいのがすぐ出せる。
Envの高さは+12st固定。
Decay: P.Envの速さ
50で200msくらい。100で2s弱だからexp curveかなあ。Tone: 元波形をわずかに歪んだsine→ほんのり奇数倍音盛りな明るめな音に調整。
このちょっとした微調整が肝になるんですよね〜 rangeの狭さが逆にうれしい。
【Extratone】
pitch LFO系。高速saw down LFOでsine oscをピュンピュン言わせるサイレン系。
このとき鍵盤はsynth pitchと関係なく、LFO rateをコントロールする。
Pitch: 基準pitch
Env Amount: saw down LFOの傾斜curve。linear寄りからexp寄りにひん曲げる。
Noise 系 2種? 3種?
【Noise Loop】
noiseだが、弾いた音程の周期でloopさせるので、ちゃんと音程があるnoiseに聴こえる。
Rate: noiseの更新頻度
低ければ音色がパタパタと切り替わるように聴こえる。高ければ、あんまりloopしないうちにどんどん次のnoiseに変わっていくため、音程感が無くなってただのnoiseに近づいていく。Fade: ↑パタパタしてる切り替え部でcrossfadeさせてなめらかに聴こえるようにする。
0が滑らかで、100がfadeなしのパタパタ。
【Filtered Noise】
White Noise+BPF。
鍵盤はfilter cutoffをコントロールする。
Freq: BPFの基準Cutoff
50のときnoteと一致し、±2octのrangeがある。Width: BPFの幅 ≒ Resonance
小さいほどnoiseっぽく、大きいほど音程感が出てくる。
【Bitgrunge】
仕組みは正直わからないんだが、音も、0と1で表現されたiconからしても、古いmodemのdial up tone/noiseの再現と思われる。
Freq: pitch
50が基準で、-5oct〜+4octのrangeMult: 100が通常で、左に回すほどoctave下の成分が段階的に増える。
単純に下方倍音が増えてるだけではないようで (bit shift的な何か) 60を下回る頃には音程感は破綻し、味のあるnoiseが得られる。
環境音 系 3種
【Crackle】
vinyl noiseのプツプツ。Vinyl Distortionに載ってたやつに似てる。
音程感はないけど、高いnoteほどプツの動きも速く固くなる。
Density: プツプツの頻度・密度
Intensity: プツの音量と明るさ
【Rain】
風のボー+雨粒のポツポツ。noise&BPF+impulse generatorか?
ポツポツのpeak freqはnoteで固定で決まり (音量とタイミングはランダム)、ボーのBPF cutoffはその1oct下。
Tone: ボーのreso と ポツの長さ
Rate: ポツポツの頻度
【Bubble】
泡のプクプク。プクひとつひとつは「丸めのdecay音がちょっとpitch upする」 でできている。鍵盤はふつうに基準pitchコントロール。
Density: プクプクの量・密度
Spread: 音量とpitchをランダムにばらつかせる。
おいおいこれで三分の一なの?
次回、モジュレーション編でお会いしましょう。
↓次回