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エレクトロハウスの上にジャズネタが乗ってるだけじゃないの

サザエさんラップは別にラップではないでしょう と15年くらい思い続けていたけど、あれ正式タイトルは「くわんといったらくわん」なんだね。おれが今までの人生の半分のあいだ抱えていたモヤが晴れた。

そこへいくと荻野ラップはラップっぽいフロウだったよね。どっちもオケはピアノハウスっぽいものの、サザエさんラップはシーケンシャルな声ネタっぽかったけど、荻野ラップはループに組み込まれてないからユーロダンスのMCっぽい。

タイトルネタにもそろそろ注釈が要りそうだったので、マジ、関係ない話ですが……


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Electro Swingって音楽ジャンルあるでしょ。あれに対しておれはちょっと複雑な感情を持っていて、それはそれとして来歴を整理したくなった。

で、眉唾で聴いてほしいんだけど以下みたいな流れだとおれは認識していて、ちゃんと裏取って無くてゴメンなんだけど、こうですよね?


・1930年代のDexieland Jazzの著作権保護70年が2010年手前頃に切れ始める。


・Parov Stelar「サンプリングしてElectro Houseに乗せたろ」(2008)

(追記:いや……落ち着いて聴けば、言うほどElectro Houseのドラムでは無いかも? それまでのJazzy HouseやBroken Beatsと比べてどうして「新しい動き」と認識されたのかはもう少し情報収集が必要。まあ、ブレイクの部分のシンセベースの感じとかはElectro House的だね(EDM以前だからBuild-Dropとはまだ言わない)。)


・手法が簡単&キャッチーだから局所的に流行る。

・それらを、フランスのメジャーレーベルWagram RecordsのOlivier GarnierってA&RがElectro Swingって呼び方を掲げて2009年にコンピを出し始め、ヒットする。

・ヒットの流れに乗ってコンピが乱発される(Wagramからだけでも15枚くらい出た)のだが、収録曲は必ずしも上記の手法ではなく、以前からあるJazzy House、Nu Jazz、Broken Beats、Big Beatあたりまで含まれた。「なんとなくJazzネタのダンスミュージックならいいっしょ」みたいな。

追記:Wagramのコンピ収録曲の初出年度を片っ端から調べてみた。
2007と2008を「Parov Stelar以前/以後」と捉えて見てみると、1発目のコンピ(2009)収録曲はほぼParov以前、1999〜2007にリリース歴のある曲だった。
代わりに3発目のコンピ(2010)のころにはほぼが同年リリース曲であった。
これが示すのは、最初の流行りはほんとに局所的であり、Wagramのパッケージこそがブームを牽引したってことだ。1発目では、売りたいちょっとの新作に旧曲をうまくコンパイルして概念を打ち出して見せて、翌年にはもうフォロワーたちの新作がわんさかある状態になっていたのではないか。

・というわけでおれの認識は、Electro Swingの源流とはこの文脈であり、主流とはこのコンピパッケージを指していた、と。

・日本でもRambling Recordsが国内盤をつくり、ヴィレッジヴァンガードでのコーナー展開が手厚くて火が点いていた覚えがある。しっかりタワレコやHMVにも並んでいた。


・少し前後するが、Electro Swing知名度筆頭のCaravan Palaceはどうだったかというと……『Jolie Coquine』を2007年に完成させてて、もう作風が固まっていた。

・翌年にはWagramから1stアルバムを出した。さっき触れた「世界初のElectro Swingコンピ」でも1曲めに登場するくらい、ハナからスターの風格である。

・ただまあCaravan Palaceはバンド形態だし、ボーカルもいる。サンプリングすることもあるが、「ネタ一発持ってきてドラムとベース足して終わり!」なつくりはしていない。スタイルや出自が違う。

・だから、Electro Swingムーブメントの中核ではありつつ、存在としては大分浮いている。まあアウトプットだけ表面的に見たら大差ないのかもだが……


・そしてElectro Houseの流行がおさまる。フェスミュージックにはよりロックなノリ方ができるUS Dubstepの季節がやって来る。もう少し進んで4つ打ちの季節が再来する頃には、Electro Houseよりもっとピュアで機能美にあふれていて、EDMと呼ばれていた。


・時が経ち、日本の音ゲー/同人界隈に少しずつ広がる。他者の楽曲をサンプリングする文化がほぼ無く(今やそういう時代でも無いというのもある)、メロディが重視されるので自作打ち込みになる。

・これは技術的解釈のうえでは、ある意味Caravan Palaceのバンド的あり方の正統後継と言えるのではないか。本流のほうではなく。


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そんなわけで、たとえばいま日本人であるおれがツイッタ〜などでElectro Swingについてつぶやいたりすると、おそらくおれの認識とフォロワ〜の認識にはけっこう差が出ると思う。おれはCaravan Palaceのことを"中核であり傍流"と矛盾した捉え方をしているから、あのサウンドを主流と思う人とはズレる。

ただ、時代・地域が変われば音も変わって当然。異化はバリエーション豊かになるから最高だし、より最新の要素との融合も期待できる。つーか、大ネタ使い手法だけしかなかったら、それ以上先に発展することのないジャンルだったかもしれない。

しかしやっぱり、同じ"Electro Swing"って言葉で指すにはちょっと別の方角を向きすぎているかなーとも感じている。そういう「同じ言葉でも内容は分化する」ことは別ジャンルでもよくある。ハードコア、ハウス、ヒップホップなどなど。ただこういう、既に細分化後のジャンル名でもこういう事が起きるんだなー。


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で、結局サウンドはどう変わったワケ? こっからは更に主観の強い話になる(おれはめちゃめちゃサンプリング好きに偏っているのでフェアではない)けど、つらっと書いておくと……

超ざっくりいうと「楽譜・記号←→音声・テクスチャ」で解釈できる。
まず、Electro Swingは「ムード」や「クサみ」が、他ジャンルよりも大きい要素を占める。ムードを操作するならばテクスチャはけっこう重要なハズなんだけど、派手なクサみなので繊細な制御をしなくても成立する(そもそも「ネタ乗っけりゃいーじゃん」的な雑なアイデアから始まってるしね)。
また、このクサみは楽譜面からもアプローチしやすい。作曲上のツボと楽器編成を押さえれば、「これはElectro Swingだ」と感じられる特徴量のラインは割と明確。
MIDI打ち込みであらかた組んだら、テクスチャ成分も多少補うために、部分的な合法サンプリング(オブリのbrass lickだけワンショットで入れたりね)や、ヴァイナルシミュレーターでそれっぽい汚しを合わせる。
着色すること自体が大事であり、色選択の精度はそこまで肝要ではない。むしろ、記号の伝達を邪魔するディテールはキャッチーなパワーを下げる。シリアスになりすぎないほうが親しまれる。

……といった感じで、おれの目には別々の道を進んだ音楽に見えるが、現在はだいたい同一視されてる。同じ名前のままだしねぇ。なんともな〜と感じてはいる。


ただ思い出すべきなのは、来歴を振り返ってみれば、Wagramのコンピすら明確にサウンドを提唱していたわけじゃない。

だって初コンピ、1曲めが『Jolie Coquine』なのはいいけどさ、2曲めからMr. Scruff『Get A Move On』(1999)だぜ!? 超好きな曲だけど、それなん!?っていう。

だからそもそも、サウンドの特徴から「本流ガ〜」とか考えるのはナンセンスじゃねーかとも言えるのだ。

 

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