アルペジエータの並列応用

 Ableton の細かい話は以下にまとめてます。

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アルペジエーターの並列応用

要望
 曲に、速い金属的な刻みを足したいな〜。ハイハットじゃなくて、音程のある楽器でやればよりきらびやかになりそう! でも、メロディ的な主張はないほうがいい。

方針
 グロッケンで、コードトーンをなぞるランダムアルペジオを高速で回そう。

操作
 オクターブ分布とポリハーモニーを調整したアルペジエーターをつくる。


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 アルペジエーターとは上図のように、「長い音ひとつ」を弾くと「短い単音の連打」を鳴らしてくれる機能。「長い音を複数同時に」入れると「短い単音のばらけた連なり」にしてくれる。

 なので今回の要望は、「和音をアルペジエーターにぶち込んで、グロッケンを自動演奏させたら終わりッ!」なんだけど、ひと手間加えてより良い感じにしていこう。

 具体的には、「単音じゃなくて2音ずつ鳴らす(旋律っぽい印象を薄めたい)」「ランダムの中に、オクターブ上の音をたまに混ぜ込んで広がりを出す」ために……「ランダムアルペジエーターを2つ並列で動かして、片方にはオクターブ上を混ぜる設定」にする。


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ラックを作成

 まずは Arpeggiator を起動。"Random" で(お好みで)、速さは 1/32  (お好みで)。他の設定は今回はなんでもオッケー。

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 ⌘G で "グループ化"。チェーンを⌘Dで "複製" して、同じアルペジエーターを2つ並列にする。

 片方のアルペジエーターの手前に、Chord を +12 で入れる。(すると、例えばドミソの3和音を弾いたら、オクターブ上のドミソも足した6和音を弾いてることになる。)

* Arpeggiator には Transpose パラメータがあり、今回はそれを Steps = 2 にするだけでも良いけど、以下の問題によりわかりにくいので使用を避けた: Style = Random 時だけ必要な Steps が1多い。また他の Style では、元の Note を回しきってから Transposed Note を回し直す順序なので、入力が1オクターブ以上に広がっている場合綺麗に整列しない。


 こーすると、実際どういう分布で音が鳴るかというと……

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chord: 例として、5和音を入力してみる。

single arp: 単純にランダムアルペジオにすると、その5音がランダムに散らばる。

single +12 arp: Chord +12 を挿していると、10和音として認識されるので、元のオクターブと上のオクターブが50:50の割合で散らばる。

double arp: 今回のようにアルペジエーターを2つ並列にして、かつ片方にChord +12 を挿すと、2音ずつ鳴りつつ分布は75:25くらいになる。

目的達成!


ランダムの固定

 さて、ランダムアルペジエーターの弱点は、回すたびに違う結果が出てしまうことなので、一度「MIDI を録」って固定させよう。

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 まず、空の MIDI トラックを1つ作って上に置き、和音の MIDI クリップと、さっき作ったアルペジエーターを上のトラックへ移動させる。

 VST の残ってる元のトラックの 入力タイプ (最初は "All Ins" になってるところ) を、今作った MIDI トラック名に変更 (上図でいう "Glo midi")。チャンネルは "Post FX" にする。

 これで、赤いアームボタンを点けて、REC 開始すると、"Glo Inst" のほうにアルペジオが録れていく。

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 完成!

 一度書き出してしまえば、気に入らないところを修正するのも自由自在〜


 丁寧に書いてみたのでメンドく見えたと思うけど慣れればすぐ。もっと凝ったアルペジエーターとか沢山あるけど、ありもののアルペジエーターで、パッとイメージを具体化したって話でした。

 あとはリバーブかけたり、テンポシンクからちょっとずらしたディレイをかけてモヤ〜っとさせたらいいんじゃないでしょうか。

投げ銭いただけたら、執筆頻度が上がるかもしれません