日記240616 (サイドチェインコンプ)

noteのつぶやき機能って140字しかないんだ。

サイドチェインコンプをやめてKickstart2にしてから割と経った。
サイドチェインコンプの何が難しかったかというと、ReleaseによってGRが0になるのが正確にいつなのかわからなかったところだなあ。

例えば単純に、BPM120の4つ打ちで、裏打ちのダッキングをかけることを考えよう。4つ打ちの入力に対してGain Reductionが始まり、裏打ち=8分音符あとには元に戻りたい。

(つまり今からするのは、「つねにキック+その他が2mixの振幅を無駄なく埋めきるための高音圧用glue-ing」とか(soothe2やRMでやるような)っていうより、ダッキングそのものの味を楽しむ、オールドファッションなサイドチェインコンプ使いの話です。)

しかし、キックがどのくらいの長さ鳴っているかはわからない。長めに鳴っている分にはThresholdをうまく狙って帳尻を合わせるほかない。短く鳴ってるときはRelease Timeをうまく狙って帳尻を合わせるほかない。サイドチェインソースにだけかけられるEQもある。どのパラメータでどう目的の結果に近づくべきか?
「キック鳴り始め〜キック音量がThresholdを下回るまで」+「Release Time」<  250msの中で、音色として気持ちよい音量変化shapeを見つける。

8分音符は250msなので、Release Timeを250msにしてみる。すると、Release Timeを数え始めるのはサイドチェインソースがThresholdを下回ってからなので、4分音符の始めからいくらか遅れたところから250ms数え始める。つまり、コンプの機能が完全に終わるのは、キックの開始時から8分音符よりさらにたったあとになる。

これが何を生むかというと、たとえばsustain bassとかにかけるときはまあ問題ない、むしろいいニュアンスを出すかもしれない。
問題はドラムのtop loopとかにかける時で、裏打ちに金物が鳴ったりする時はアタックトランジェントを微妙に欠けさせてしまう。それでミキシングしてると、キックが鳴ってるときとそうでない時で、音量感にだいぶ差が出てしまうことがある。ブレイクとかでキックだけ抜く時、チャカポコがずいぶん前に出張ってくることがあるよね。バスコンプとかマスターリミッターかけてるならなおさら。で、ブレイク抜けてキックが戻ってきたときにむしろ上が引っ込んで、ローが戻ってきたのはいいものの全体的にはインパクトダウン……なんてことになりかねない。

解決法としてはまず、そのブレイク部分だけtop loopのvolumeを下げるようなautomationを書いちまえ。
その後のミックス作業がわりと面倒になってくるが、結果はダイレクトに出る。

次に、Release Timeを250msに設定したのがいけなかったんであって、もっと短くすればええやん。それで裏打ちのアタマを完全に確保する。
ただこれはガッツリ短くして問題ないシチュエーションなら適当にやればいいけど、ダッキングした音色として「表の8分音符間ではしっかり引っ込んでることがわかる」ような深さ長さを求めるなら、Release Timeのキワの長さを追い求めるのが難しい。コンプのReleaseのcurveを設定できるpluginも少ないと思うんで、理想のvolume shapingを追うのはなかなかむずい。

次に、サイドチェインソースを直接キックにしないで、キックと同時に鳴るclick impulseをmuteで仕込んでおいて、それでサイドチェインコンプをトリガーする。
こうすれば「4分音符の始めからいくらか遅れたところから250ms数え始める」がいつなのかがかなりはっきりわかるため、GR = 0となるタイミングのコントロールもしやすくなる。一方で、効き始めから効き終わりまでの音量変化のshapeにはアクセスできず、やはりコンプのRelease curveに完全依拠してしまう。やっぱ「ボムっとしたキックの量感で深くダッキングして、Releaseでスッとなめらかに戻って来る」あのカーブがクールなのだが……

そういう中でKickstart (ShaperでもDuck BuddyでもLFOtoolでもVolumeShaperでもDUCKでもいいんだろけど) は「Triggerを受けて、Triggerの内容は基本反映せずに固定のshapeを動かす」仕組みで、これが効果終了タイミングのシビアな管理とカーブの編集を独立してそれぞれコントロールできる。サイドチェインコンプのほうが偶然のマジックや、より音色に合った独特のカーブを生成できる期待はあるものの、管理マニアとしてはやっぱ理想実現が早いほうがいいですね。

それだけです。以上です。


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