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消えゆくものへの感傷、もしくは憧憬1

儚いものが好きだ。
消えゆくものに感傷を寄せ、その背景に潜るのが好きだ。

潜るといえば、というわけでもないけれど、私の中でサイコーに感傷的になる消えゆくものはそう、トップ画像にあるモルディブである。「いつか必ず沈む島」、そんな中二要素も相まって、サイコーに感傷的である。いつか行きたい場所No1。
まあモルディブに限らず、ヴェネツィアだって南極だって昨今の気候変動によって今のかたちを保てなくなるとは言われているし、私が感傷を抱くべきものは、この大地の上に思うより大量に発生している。

そんなわけで、早乙女ぐりこと活動している文藝サークル・しゃんぶるぶらんしゅの打ち上げ先には来る6月30日に1980年からの歴史に幕を引くという乃木坂フレンチの名店『Restaurant FEU』を選んだ。
前回の打ち上げで連れて行ってもらった恵比寿の『代官山ラブレー』が店構えもサイコーに可愛くお料理もおいしかったので、元々フレンチで探してはいたのだが、最終的な決め手は「近いうちに閉店を控えている」というその一点だった。最後の時間の一角に入り込みたかった。

純度100%の好奇心で訪れたにもかかわらず、お料理もサービスもサイコー。
それは店内を見ていてもよく分かった。平日の昼間にもかかわらず、店内はおおよそ広いといえるものではないにもかかわらず、常連客と思しきグループが何組も来ており、従業員と談笑していた。彼らは感傷的な言葉を使わず、「最近忙しいんですか」「今日は赤ワインなんですね」など日常的な会話をしていて、なんていうか、これは彼らの日常の延長で、特別な日ではなく昨日の次の日の今日なんだなと思った。
こちとら店の創業年「1980」がつけられたメニューを見て、(何の年だろう)(この先、シェフや従業員の仕事はどうなるんだろう)などと他人事だからこその俗っぽいおせっかい根性を発揮していたのに。
ちなみに創業年だと知ったのは、帰宅して改めて食べログを調べた時だから安心してほしい(ぐりこ向け私信)。それを知っていれば、その時その瞬間もっと感傷的な気分になったに違いない。感傷的になるにも予習が必要だ。
モルディブだって、沈むって知らなかったらただのきれいな海だ。

話は変わるが、「今年こそサンバリアを買う」と思い続けて早何年かが経っている。
紫外線を殊更に嫌う癖になぜそういうことになっているかといえば、新しい流行りものに腰が引けるタイプだということ、もともとお気に入りの日傘が何本かあったことに加え、「サンバリア買おう」と思う頃には既に「サンバリア買おう」と思うなりの気候になっており、ショップに行くも売り切ればかりだから、というやむにやまれぬ理由もあった。

そして今年も「そうだ、サンバリア買おう」と思う季節がやってきた。今年は珍しく服やら化粧品やらの断捨離をしていて、お気に入りの傘もヘタってきたので、新しい日傘を買う理由がある。いや、ものを手放した側から補充するのが正しいかどうかは置いといて。
ショップのページを眺めながら、格子柄の傘のページで手を止める。三色展開の内、使いやすそうなグレー、ブルーは品切れている。ひとつ残った色はライム色だった。蛍光グリーンともメロンともいえるような鮮やかなグリーン。

つい先日、シュウウエムラ×サダハルアオキコラボの抹茶パレットを買っておいてなんだが、まあ自分にはあまり縁がない色と柄かな、と思ったその時だった。私の目に以下の注釈が飛び込んできた。

ライム:現在庫が無くなりましたら、廃色と成り次回入荷はございません。

消えゆくものが…ここにも……。

思えば我が家には、望むと望まざるとに関わらず、消えゆく前に私が掬い上げたものがいくつかあるのだった。

まずはPC。このひとつ前に使っていたものも同メーカーのそれではあるのだが、絶賛稼働中の私のPCは、ソニーから売却される直前の最後の純正VAIOである。改めて確認すると、2014年春モデルを持ってVAIOが売却されたというのだから、かなりのベテラン戦士だ。
「黒船」と私によりコードネームを付与されたこのPCは、それこそ「ソニーから売却される前の最後の純正VAIO」というのが最大の決め手になっている。私、純正品が大好きという癖もあるので…。
ほんといつもお疲れさま。原稿中は重たいファイルとか画像ファイルばかり開いていてすまないな。そろそろどころじゃなく最近常に買い替え時なんだけど、今は感傷に足るPC(感傷に足るPCとは?)がないので、もう少し頑張ってくれるとありがたい。

次に3DS。本体カラーはアクアブルー。
グリーンがかった深い青なのだが、ある時本カラーが生産中止になり別のブルーが発売になっている。その時も「いつか3DS買おう」と思っていたのが、生産中止が決め手になって手を伸ばしたのはいうまでもない。
ちなみにこの3DSは初音ミクのカラーリングに非常に似ているので、公式コラボをしたわけでもないのに「ミク」と勝手に呼んでいる。もう一度言うが、コラボ商品ではない。
買ったソフトは『善人シボウデス』か、続編の『ZERO ESCAPE』あたりかな…この「極限脱出シリーズ」は、推理アドベンチャーとして名作なので、機会があればぜひ。

私は推理アドベンチャーが好きだが、推理アドベンチャーには「知る」か「知らないか」の二択しかない。練習すればうまくなる要素はなく、一度攻略を知ってしまえばゲーム性は失われ、多少動くノベルとなってしまう。ある意味これも、消えゆくものへの感傷なのかもしれないね。
全然関係ないけど、リア充な元彼が入院した時に暇そうだったから上記のゲームを勧めたところ、一蹴に付されたことを思い出してしまった。まあやらないよね。知ってた。元彼はモンストを始めた。

最近届いたアーコール(ERCOL)のローテーブルにしたって、廃盤アンティークだからこそ手にする機会に執着したことは否めない。
アーコール社、1920年設立。有名なのは何よりも椅子。それから何やかんやあり、マーガレットハウエルの手によって復活し現在に至っている。この辺りざっくりとしか把握していない(ので気になる人は個人で確認してほしい)が、少なくとも、今アーコール社のラインナップにローテーブルは存在しない。
同じ形のダイニングテーブルはあるけどね。うーん、かわいい。

現アーコール社の家具の方が白家具に近い色味のものがあるので、おそらくこちらにローテーブルがあったなら買っただろう。同じ形状の机が他の店で売っていても買っただろう。
それでも、やはりここまで憧れを募らせたことと、廃盤商品であることを切り離して考えることは難しい。私がそもそもアンティーク好きだということを加味しても。ていうか、アンティーク好きなのが、そもそも消えゆくものへの感傷みたいなものだ。
そういえば、机にはまだ名前つけてないな。購入した家具屋で、色味を「カスタード色」と表現していたから、カスタード由来の何か…よし、君の名前は今からプリンだ! うーん、かわいい(目を細めてデレデレする絵文字)

さて、話を戻すと、私がどのサンバリアを買うかという話になるのだけれども、汎用性と消えゆくものへの感傷、どちらが勝つと思う?
ちなみに、この記事一本で「ちなみに」というのも三回目なんだけど、他に迷ってるのは無地フリルのネイビーと、白黒ストライプ(フリルなし)の二本。

最後に。ただただ思うがままに書いていたら、タイトルを回収するところまでいけなかったので、戒めとして「1」と振っておく。

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