かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page4】
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一、ありさの家出 ④
普段なら、知らない男の車に乗るなど、危険極まりないことはありさだって承知なのでしたが、このときは早くこの場から離れることが先決でした。それだけでなく、姉、家、学校という足場を自らはずしてしまって、かすかな頼りの叔父もあてにならず、宙に浮かんだ自分が堕ちていきそうなところをぐっと腕をつかまれ、ひっぱりあげられた。そんな感覚も確かにあったようなのです。
車はやがて高速に上がっていきました。ありさはハアハアしていた息