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水澄む草青む

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空から降り注ぐ雨水が、何十年もかけて森の奥の清らかな泉の一滴となるように。我が身を生きることを通して言葉を綴る5人の書き手によるちいさなWebマガジン。
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2018年11月の記事一覧

言葉をめぐる思索の旅へ。「水澄む、草青む」はじまりに寄せて

「どうしてライターになったんですか?」 そう聞かれる度に無数にある理由の中から適当なものを選んで答えるのだけど、レパートリーのひとつに「口下手だったから」がある。 質問されたとき、とっさに固有名詞が出てこない。 胸の中を漂う漠然とした考えや気持ちは言葉にならず、無理やり喉から絞り出した音は表現したかったことと微妙にずれていて唇を噛む。 こうした歯がゆさを何度も味わいながら、伝えたかったことは体の中に溜まっていったのだと思う。出口となったのが、文章を書くことだった。焦ら

たったひとりに、確かに、強く、届くもの

情報が、溢れかえっている。 大切な情報も、求めていた情報も、 興味のない情報も、不必要な情報も、 全部が等しく、流れてくる。 ありとあらゆる知識、ぶつけられた怒り、 遠くの誰かの、小さな喜び。 何を受け止めたらいいんだろう。 私は何を求めているのだろう。 考えているうちにも、 次々と流れ、まばたきしている間に もう、遠くまで過ぎ去っている。 何十億人の言葉が、迫っては、 あざ笑うこともせずに、去っていく。 混乱する。 たった100人の、集落の人たちの名前さえ まだ覚え