言葉をめぐる思索の旅へ。「水澄む、草青む」はじまりに寄せて
「どうしてライターになったんですか?」
そう聞かれる度に無数にある理由の中から適当なものを選んで答えるのだけど、レパートリーのひとつに「口下手だったから」がある。
質問されたとき、とっさに固有名詞が出てこない。
胸の中を漂う漠然とした考えや気持ちは言葉にならず、無理やり喉から絞り出した音は表現したかったことと微妙にずれていて唇を噛む。
こうした歯がゆさを何度も味わいながら、伝えたかったことは体の中に溜まっていったのだと思う。出口となったのが、文章を書くことだった。焦ら