教養区分の政策論文の答案

はじめに

「教養区分の政策論文って何を書けば良いのだろうか?」

私が国家公務員総合職の教養区分試験を受験したときに思ったことだ。ネット上に回答例と実際の評価が載ってないので、どのような論文を書けば何点くらい取れるのか分からない。
1つのサンプルとして、2019年度の教養区分の一次の政策論文試験における
自分の答案の再現と開示結果点数についてここに書き記しておく。
皆さんが受験される際の目安になれば良いと思う。

開示結果

・全体の開示結果
 20点満点中平均点11.815点・標準偏差2.156点
 ※総合論文試験は1部と2部合計の平均点・標準偏差しか公表されていない。
・私の点数開示結果
 1部は10点満点中7点・2部は10点満点中6点

再現答案(1部・2部)に関して留意点

・実際に記憶を辿って受験後1ヶ月以内に再現答案を書いたが、当日の回答よりも分量が100~200文字程度少なくなってしまった。本番は1600文字程度書いたものと思われる。見出しを設定しなければ1800文字程度は記述できそうではある。

・問題を丸写しすると著作権法に違反する恐れがあるので、その点に配慮して要約している。問題が気になる方は、人事院から問題を取り寄せて確認してください。

再現答案(1部)

問題概要

『日本の直面する課題と課題の発生した構造・課題の克服方法を述べよ。』
※なお、主観として、当日の参考資料は日本の経済的な停滞について触れるものが多かった。

再現答案

 現在、我が国が直面している課題とは、経済成長の鈍化である。平成の最初はバブル経済に湧き、高い経済成長率を実現したが、バブル崩壊後は低成長に転じてマイナス成長に陥ることさえあった。また、平成の中頃に日本の総人口は増加から減少に転じて経済成長の原動力となる内需にも期待ができなくなった。以下、この課題が生じた構造を国内的視点・国際的視点と絡めて述べ、それぞれの克服方法を論じる。
  構造1、少子高齢化
 日本は急速な少子高齢化に直面したため総人口が減少に転じ、労働力人口も将来的に大きく減ってしまう。よって、この構造を打破する必要があり、克服方法を2つ述べる。
  克服方法1、外国人、高齢者、女性の活用
 短期的な克服方法として有効である。現在外国人労働者の受け入れは始まったばかりであるが、今後も受け入れを拡大して労働力確保に繋げる。また、健康寿命が延伸している状況を踏まえ、定年後の高齢者の再雇用によって労働力を確保することも有効である。なお、定年年齢引き上げは組織の流動性低下による組織の硬直化や若年層の失業率増加といった新たな問題を発生させうるので、慎重に検討する必要がある。さらに、近年は女性の労働市場への参加が進み、M字カーブが改善されつつある。育休制度の充実や保育所設置を通じて引き続き、女性労働者への支援策を継続するべきである。
  克服方法2、少子化対策
 克服方法1は長期的に見れば、構造の改革に限界がある。現在、日本の出生率は約1.4で推移しているが、人口維持が可能な2.1まで引き上げて少子化の問題を解決する必要がある。出生率増加のためには、近年晩婚化・晩産化が進展しているために不妊に直面する夫婦も多く、不妊治療への積極的な経済的援助が必要である。また、そもそも出会いが少なく良い結婚相手を見つけることができない若者も多いことから、官製の婚活イベントも有効である。なお、行政が結婚や出産を強調しすぎると、それによって生きづらさを感じる人々もいるため、彼らへの配慮も必要である。
  構造2、日本型雇用慣行
 日本企業は年功序列型賃金と終身雇用の日本型雇用慣行を採用したために、若年層の労働意欲低下や組織の硬直化が発生した。その結果、グローバル化で激変する競争環境において企業が必要とすべき若手の優秀な技術者を確保できず、グローバル競争で主導権を握ることができなくなってしまった。以下、克服方法を2つ述べる。
  克服方法1、成果主義
 賃金を労働者の成果と連動させる成果主義は労働者各人に努力を促すものであり、企業の生産性を高めてグローバルな競争に勝つためには有効である。年功序列型賃金によって、特に優秀な若年層の人材に労働意欲低下をもたらし海外企業への転職を促してしまった状況を、成果主義は解決できる。
  克服方法2、通年採用
 近年は新技術の開発が目覚ましく、その技術を用いて商品開発できる高度な人材を企業内部から発掘することは難しくなっている。そこで、通年採用を導入し、企業の求める高度な人材をすぐに採用できる状態にしておくことが必要である。通年採用が日本企業内で広まることで労働市場が流動化し、企業組織の硬直化を防ぐことにつながる。これにより激変する競争環境への対応がしやすくなり、日本企業の国際競争力向上が実現できる。

1部の振り返り

・2つの構造に対してそれぞれ2つずつの克服方法を記入した。
・普段から経済関係の話題に目を通していたのでそこまで論文が書きにくいということはなかった。
・7点は高評価の部類だと思われる。

再現答案(2部)

問題概要

安全・安心な暮らしを実現するための複数の課題と方策
※問題文以外に資料はない

再現答案

 国民の安心で安全な暮らしを実現するための具体的な課題を2つ挙げて、それらの対策について、以下論じる。
 課題1、不十分な災害対策
近年、地球温暖化の進行に伴う異常気象が原因となり、想定外とされるような災害が発生している。線状降水帯の発生による西日本豪雨や、今年9月に千葉県を襲った台風による大規模停電などの災害は記憶に新しく、災害により多数の死者が出るあるいは国民生活に多大な影響を与えることから、国民の安全・安心を守るためにその対策は急務である。以下、具体的な対策を2つ述べる。
 対策1、老朽化したインフラの保全
高度経済成長の時代に整備されたインフラ網が我が国には多く、耐用年数が迫ってきているものがある。これらの老朽化したインフラを放置すれば、想定外の気象条件によって災害が発生し、大規模化してしまう恐れがある。よって、老朽化したインフラの保全・交換を進めるべきである。また、より質の高いインフラ網へと転換を図ることも大切だ。例えば、電柱を地下に埋める無電柱化を進めれば、台風による強風被害を防げるためである。なお、インフラ網の改修には多額の費用がかかるため、優先順位をつけて対策していくことは必須である。
 対策2、住民への防災情報提供網の拡充
現在、災害時の情報提供はテレビやラジオを主として行われるが、都心部の若者を中心にテレビを持たない層が広がっている。また、ラジオは身近とは言えないため情報提供の迅速さには不安がある。そこで普及率の高いスマートフォン向けの防災情報提供アプリを国が開発して、提供していくべきである。日本全体で企画を統一する方が利便性向上につながるため地方公共団体に開発・提供を任せることは適切ではないと思われる。また、近年訪日外国人観光客や日本に在住する外国人は大きく増加しており、日本語による情報提供だけでは彼らをカバーできない。アプリを多言語対応することで、日本語主体のラジオやテレビの情報提供よりも彼らが理解しやすい情報提供を実現できる。
 課題2、増大する安全保障上の脅威
現在、サイバー空間を通した軍事攻撃、AIやドローンを用いた無人兵器の開発が日本の安全保障の脅威になっている。また、従前からの北朝鮮による日本近海へのミサイル発射は、国民生活を不安にさせるものである。以下、これらの脅威に対する具体的な対策を2点述べる。
 対策1、国際的な軍縮の枠組みの構築
日本は唯一の被爆国であり、敗戦国として戦争の悲惨さを痛感したために、世界平和実現のために尽力してきた。その経緯から各国からの信頼を得ている状況にある。AIやドローンを用いた無人兵器は非人道的であることを踏まえて、日本がそれらの無人兵器の開発を制限・禁止するような軍縮条約を示せば、各国からの信頼もあるために条約締結への機運が高まると思われる。特に、ドローン兵器については小型で探知が難しく、テロリストが大衆を対象として利用する危険性が高まっており、各国からの理解を得やすいと思われる。なお、AIやドローンは社会に便益をもたらす側面もあることから民生品の開発が抑制されてしまう内容を条約に盛り込むことは避けるべきである。
 対策2、周辺国との情報共有の強化
ミサイル発射の探知は発射地点に近接するほど容易になり、得られる情報も確実性が増すので、軍事上の情報を共有できる情報網を周辺国を築くことが重要である。また、周辺国の国内政治事情によって、情報共有網が破棄されてしまうことを防ぐために、情報共有網を構築する際には長期的で安定的な共有網となるように内容を設定しておくべきである。

2部の振り返り

・2部の方がやや稚拙な議論があったため評価は平均的になったと思われる。
・課題1の対策2について。アプリは、NHKのニュース防災といったアプリが既に存在しているが、その存在には試験後に気づいた。
・課題2の対策2について。試験当時は韓国がGSOMIA破棄を検討していたことが報じられていた。その事情を踏まえての記述である。

最後に

・政策論文試験は時事の知識があるに越したことはない。日本社会の課題、現に今起きていること、世界のトレンドなど、新聞を通して知ることが重要だと思う。

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