見出し画像

KOSEさんの声明に人の温かさを感じたから、モヤってるジャニーズファンの皆さんに聞いて欲しい

9月15日、株式会社KOSEから「ジャニーズ事務所に対する当社の対応について」と題する文書が発表されました。自社商品の広告における同事務所所属タレントの起用方針について表明されたもので、内容を拝見してとても温かい気持ちになりました。これまでメディアを通じて同様の発表を行なってきたどの企業よりも、所属タレントやそのファンである私たちにまで配慮してくださった内容であったと思います。

一方で、所属タレントの移籍・独立にまで言及していることに反発するファンの方の声がSNSで散見されました。いやいや気持ちはわかります、わかるけどちょっと待って、落ち着いて。という想いから今このnoteを書いています。やや長い文になるかと思いますが、お付き合いいただければ幸いです。

今回のKOSEさんの表明に最大限の誠意を感じた点は、以下のとおりです。

  • 性加害事件の被害者の救済だけでなく、所属タレントやスタッフから活動の場を奪うべきではない、という立場を明らかにしてくれた

  • 国連や政府が提唱する指導原則に則り、人権侵害があった取引先(ジャニーズ事務所)に対して具体的な改善提言を行ったうえで、取引停止は最終手段として現時点では明言していない

  • 今後の対応方針を各種メディアへの回答としてではなく、自社Webサイトに全文掲載してくださっている

性加害事件の被害者の救済だけでなく、所属タレントやスタッフから活動の場を奪うべきではない、という立場を明らかにしてくれた

9月7日の記者会見以降、これまで広告にジャニーズタレントを起用してきた企業の多くが、今後の起用を取りやめる声明を出しています。
本来、「事務所が性加害の事実を認め、被害者に対し救済・補償を行うこと」と「現所属タレントの立場や活動の場が守られるべきであること」は別問題のはずですが、世間の処罰感情を無責任に煽る一部のコメンテーターやインフルエンサーの影響で、後者を求めるファンは前者を認めていない、蔑ろにしていると見なして攻撃する人が後を絶たないのが現状です。それに心を痛めているいるファンの方も多いことでしょう(私もその一人です)。

これまでPRに貢献してくれたタレントや、応援してきたファンの心情を慮り、感謝の気持ちなどを表明してくれた企業も中にはありましたが、今回のKOSEさんの対応は更に一歩踏み込んだものでした。
所属タレントの立場が現状では十分に守られていない現状に疑問を投げかけ、問題提起・解決に向けた具体案まで提示してくれているのです。

もちろん、本来それはジャニーズ事務所の仕事であり、スポンサー企業にとって知ったことではないことは言うまでもありません。しかし実状として、事務所が現在機能不全に陥っていることを飲み込んだ上で、今まで長くおつきあいをしてきた立場上、どうすればいいか我々も一緒に考えて意見をしていきます。そう手を差し伸べてくれている、本当に温かい文章だと感じました。

国連や政府が提唱する指導原則に則り、人権侵害があった取引先(ジャニーズ事務所)に対して具体的な改善提言を行ったうえで、取引停止は最終手段として現時点では明言していない

この「一緒に考え、意見していく」というスタンスは、取引先企業で人権侵害があった場合に取るべきものとして、国連や日本政府が提唱している人権保護のためのガイドラインに沿っています。

責任あるサプライチェーン等における 人権尊重のためのガイドライン」によれば、取引先にて人権侵害が認めれらた場合、安易に取引停止を行うことは更なる「負の影響」を引き起こすリスクがあるため、取引停止は最終手段として段階を踏む、十分な期間を設けるなどした上で、まずは取引先の健全化に向けた監視や情報提供を行うのが望ましいとされています。

先日、P&G社よりジャニーズ所属タレントを起用したCMの継続について表明がありましたが、トルスカ社長が使用した「責任ある広告主」という表現も、まさにこの指針に沿ったものであると感じました。

これは単に、人道的立場から所属タレントやスタッフを安易に見捨てませんよということだけではなく、これまで「タレントが性加害を告発できない社会・業界」を作ることに広告主として加担してきた自社の責任から目を背けることなく、より根本的な次元で世の中が改善されていくよう当事者でありつづける、という意思表明と受け取れます。

そもそも、ジャニー喜多川氏の性加害が長らく隠蔽されてきた背景には、これを取り上げなかったメディアの責任だけではなく、事務所にお金を出してきた広告主やスポンサーの責任も、問われてしかるべきです。
メディアが「忖度」してきたのは、果たして事務所だけでしょうか?所属タレントが、スポンサーや広告主のCMキャラクターをやっているから指摘できなかった、そういう背景も何割かはあったのではないでしょうか?

もちろんKOSEもP&Gも、だからジャニーズ事務所はお咎めなしと言っているわけではありません。事務所がきちんと問題解決に取り組めるか、期限付きで監視しますよと言っているにすぎず、改善が見られないとわかれば早々に撤退するであろうことは明らかです。(特に外資のP&Gは、きっと見切りも早いでしょう)

今後の対応方針を各種メディアへの回答としてではなく、自社Webサイトに全文掲載してくださっている

KOSEに話を戻します。
今回表明された同社の方針の内容をここまで吟味することができたのは、同社がその全文を自社Webサイトに掲載してくれたからに他なりません。

ジャニーズ事務所に対する当社の対応について

ここまで丁寧な対応をした背景には、子会社であるALBIONの社長がSnow Manの渡辺翔太さんの起用継続についてSNSで拙速な発言をして多くの非難を浴びたこと、また、こちらも同じく渡辺さん絡みですが、モスバーガーが広告継続を表明した翌日に一転して取りやめを発表、混乱した現場スタッフが渡辺さんとラウールさんのポスターに「不適切な加工」をしたことを謝罪した騒動などがあると推察します。

さて、掲載されている文書をきちんと読めば、KOSEさんがジャニーズ事務所ともう取引しませんよ、同社タレントはもう使いませんよ、とはどこにも書いていないことがすぐにわかります。
本文としては、あくまで事務所のガバナンス体制が整うまで報告を求めたり、提言をしたり、これからも注視していくから、被害者救済だけじゃなくて所属タレントやスタッフを守る方もちゃんとやってね。という内容です。

そして参考情報として、これら事務所のガバナンス体制の改善が認められるまでという条件付きで、新たな起用や契約はしないよ。と付け加えているのです。

にもかかわらず、読売新聞はこれを「新たな契約見送り」、日経新聞は「CM終了」という見出しで報じました。
ジャニーズ憎しで熾烈にバッシングしている人たちが食いつきそうな見出しで切り取られており、正直ため息が出ました。

所属タレントへの移籍・独立提言について

では、いよいよ本題です。
このように、私としては本当に素晴らしいと感じたKOSEさんの発表ですが、所属タレントの活動継続に向けた提言として、「他社への移籍」や「別組織の設立」を訴えていたことに、不快感を示すファンの方がSNSで散見されています。

でも、ちょっと待ってください。

まず、お気持ちはとてもよくわかります。
ジャニーズ事務所は、他の芸能事務所とは異なるかなり特殊な組織です。
所属タレントたちは皆10代で入所し、養成所の中で同年代と切磋琢磨し、先輩との上下関係の中でその背中に憧れて芸を磨きます。
デビューに向けて結成されるグループ内の横のつながりだけでなく、どの先輩グループのコンサートでバックについたとか、同じ舞台に立って色々なことを教わったとか、イベントで先輩のヒット曲をカバーし歌い継いだりとか、そういうバックグラウンド込みで応援しているファン(いわゆる事務所担)も多いのです。

こうして後輩に受け継いでいく「組織としてのアイデンティティ」こそが、彼らが捨てるのを躊躇っている「ジャニーズ」という名前と分かちがたいものであり、だからタレントもそのファンも、今とても苦しいんです。
事務所の名称変更はまだしも、所属タレントが他の芸能事務所にバラバラに分かれて移籍してしまっては、これは永遠に失われることになります。

ですが、もう甘えたことは言っていられない状況です。
彼らが持つエンタメ集団としてのアイデンティティを損なうことなく、創業家の負の遺産だけを切り離すには、創業家であるジュリー社長の権力が及ばない新しいプロダクションを設立してそこにタレントたちを丸ごと移す以外の方法は思いつきません。しかし果たして、この過剰なまでのバッシングの嵐がそれで止むでしょうか。

TOKIOは現在ジャニーズ事務所ではなく、株式会社TOKIOの所属になっていますが、それでも丸亀製麺とサッポロは、彼らの広告起用見送り、次回契約更新しない方針を発表しました。
株式会社TOKIOの代表取締役はジュリー社長であり、完全な独立ではなく関連会社ではありますが、例えばTOKIOの3人がジュリー社長から株の譲渡されたら許してもらえるのかというと、ちょっと疑問が残ります。

同じように、他の所属タレントを受け入れる別組織を設立したところで、その手続きに何かしらの落ち度があれば、「何も変わっていない」「反省していない」とバッシングの恰好のネタにされるに決まっています。

だからこそ、今回のKOSEさんの提言は蜘蛛の糸のように感じられました。

状況が改善するまで新たな広告起用はしない、と言っているKOSEさんが、状況改善の具体案として「別組織の設立」を挙げているということは、裏を返すと、「そのやり方で十分なガバナンス体制が構築できるのであれば、また新たなお取引を始める可能性がありますよ」と言ってくれていることでもあります。
上にも書いたとおり、KOSEさんが国内外で定められたガイドラインに沿ってこのような提言をしていること、そういう丁寧な対応ができる企業であることは、大変心強いことです。

もちろん簡単なことではなく、今のダメダメな事務所にはこれでも十分高いハードルかもしれません。しかし何を言っても後出しジャンケンのように批判されるばかりの現状においては、進むべき道を示してくれるほぼ唯一の希望の光のように感じました。

おわりに

私はこの1年ほどでまたジャニーズを観るようになった、新規のライト層です(若い頃も好きだった時期がありますが、長らく離れていました)。
ここ最近のバッシングを見ていると、自担が活動の場を奪われ、まるで犯罪者であるかのように扱われていることに、私よりも熱心に応援している多くのファンの皆さんが心を痛めているであろうことが容易に想像できます。本当につらくて、悔しくて、涙が出ます。

創業者の性加害を隠蔽してきた事務所が、被害者に適切な謝罪と補償をすべきであることは言うまでもありません。企業や社会が、それに厳しい態度でのぞむべきであることも当然です。
ですがだからといって、所属タレントをそれでも応援したいというファンの気持ちを、デリカシーのない正論で傷つけていい理由にはならないのです。

ファンの皆さん。
今は、炎上に乗っかって視聴率やPVを稼ぎたいメディアに煽られて、分断しているときではありません。リスクと分かればさっさと切り離して距離を置く企業と、リスクをとってでも「問題を他人事にしない」と前向きに手を差し伸べる企業、それらを冷静に見極めるときです。

この点において今回のKOSEさんの声明は、問題に対し強い責任感と誠意をもって真摯に向き合ってくれているのだなと感じられる内容だったため、その理由を解説させていただきました。
ジャニーズ事務所が適切なガバナンス体制で再構築され、ファンの皆さんが好きな人を好きと堂々と言える日が1日も早く戻ってくることを、心から祈っています。

長文におつきあいいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?