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無頼ママチャリかき氷【毎週ショートショートnote裏お題】

 店先に停めたママチャリに乗ったまま、
「氷だけでええわ。みついらん」
 と毎回握り締めた100円玉を渡してくる中学生に、氷を削りながら俺は、
(みつかけなんだら50円でええんやけども、小銭返されても邪魔臭いやろ)
 とか腹の内で言い訳して、毎回50円、ちょろまかしてるくせしてその償いみたいに、ソイツが食い終わる間何かと気に掛けてやってるつもりでいた。
「親から小遣い、もらえてへんのか」
「もらえてるけどオレ早いうちに使ってまう」
「兄弟でも多いんかな」
「兄ちゃんと、妹がおる」
 一番いじけがちな構成だ。大事にされる者と、可愛がられる者とに挟まれて。
「誰も見てくれんでも、おてんとさんは見てはるで」
 笑みを見せながら言ってやると、ソイツは首を少し傾けて、
「ママチャリや!」
「おぉい! ママチャリー!」
 声が聞こえた方に手を振ると、
「ごちそうさん」
 と店先のくずカゴに食べ終えのカップを放り入れ、颯爽とママチャリにまたがって行った。


(410文字)

 孤独だなんて誰が言った?
 (しかし氷屋のおっちゃんにそこまでの罪は無い。)

 ※今回pixiv所蔵の短編『約五十円分の会話』を流用しました。

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