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だんだん高くなるドライブ危機一髪【毎週ショートショートnote】

 奈良から大阪の市内まで、普段は通らないルートだからと、珍しくナビに頼り切った事がよろしくなかった。
 道はどんどん細くなり薄暗くなり、カーブを曲がる度徐々にだが確実に、勾配がきつくなる。引き返そうにも道幅には余裕が無く、待避ゾーンも見当たらない。
 隣でハンドルを握り締める配偶者の表情は、緊張の度を越した薄笑いだ。
「まさかとは思うんだが配偶者よ(実際は名前を呼んでいるが雰囲気を重視する)」
「うん……」
「ここがあの、悪名と言っては失礼だが、九州出身の私ですら噂に聞くほど名高き」
「……暗峠(くらがりとうげ)でっす……」
 いつたどり着くとも知れぬ頂上へと向かうにつれ、いよいよ勾配はとんでもない。私はいつ使うものか不思議だった助手席上の手すりを握り締めているし、車好きな配偶者が選んだそこそこ良い車なはずのエンジン音が、悲鳴に近付く。
「軽自動車だったらアウトだったぜ!」
 頂上を越えた瞬間配偶者が溜め息と同時にほぼ叫んだ。


(410文字)

 翌日肩と腕が筋肉痛になった。マジで。

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