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人形劇団クラルテ『女殺油地獄』

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 Pixivで公開してきた小説以外の文章を、
 noteに移して行きます。

(文字数:約1800文字)


  人形劇団クラルテ
  『女殺油地獄』

  第118回公演 2019年秋

  にょさつあぶらじごく?
  じょさつあぶらじごく?

  長年そんな感じに適当に読んでおりましたが、

    おんなころし あぶらのじごく

  が正解だそうで。

  でもなんだか、

    女殺!油地獄!!

  ってやったら、

  1980年代の、
  オカルト特撮的な感じがして微笑ましい。
  それはさておき。

  あくまでも個人的な好みで僅差ではありますが、
  あと両方ともNHKの番組でしか観た事がありませんが、
  どちらかというと歌舞伎よりも、
  人形浄瑠璃の方が好きです。

  好みの差は、
  「生っぽさ」「生身の人間っぽさ」です。

  そちらの方こそ好きという方も、
  もちろん大勢おられることでしょうが、

  個人的には
  「本来無機物であるはずが
   生身のごとく感じられる」方向に、
  関心を寄せてしまいます。

  人形浄瑠璃と人形劇には、
  ほとんど差を感じません。

  特に今回は現代音楽を使って、
  所々分かりやすくしたくらいで、
  人形浄瑠璃版とほとんど違いも無かった。

  しかし大きな違いが3つ。
  1、人形の頭身がデフォルメされてて面白い。
  2、客席が三方向で上からも観られる。
  3、黒子さんも語りに歌に、
    状況によっては芝居にも入る。

  ……めっちゃ違うやん。

  いやでも黒子は見えない設定だから、
  それでも似ているみたいに感じたんだよな。

  んで、
  こっからは雑にいきますよ。

  ちなみに私は作品の経歴等調べていませんし、
  テレビで見た人形浄瑠璃版情報も、
  あえて知らない事にしています。

  男と女、
  それも設定上結構な美男美女が、
  油にまみれて血にも汚れて、
  滑りながらの掴み合い。

  エロだよね。

  近松のおっさんただ単に、
  一度真っ向からドエロをグロテスクを、
  書いてみたかったんだよね。

  え?
  そうでしょ? 違うの?
  ってかそんなもんで良いでしょ芝居小屋なんて。

  一応油屋の奥さんが殺されそうになって、
  抵抗するために柄杓で油ぶっかけたから、
  って事になってます。

  なぜ(一応は主人公の)与兵衛が、
  そのような凶行に及んだのか、
  彼をそこまで追い詰めたものは果たして何だったのか、

  ってところには私大して興味が無い。
  親の育て方とか家庭の事情云々もどうだって良い。

  ただただ与兵衛がクズってだけだろう。
  巻き込まれた油屋一家は気の毒にってだけだろう。

  強いて言うなら、
  それが言い訳になるとは全く思わないけれども、
  与兵衛には他の「役割」が存在しないよね。

  言い換えれば、
  「ウチの全ての厄介事の種はお前、
   という役割」
  を期待されているよね。

  家族も皆が無自覚のうちにね。
  恐ろしいところだけども。

  だからって与兵衛にはちっとも同情出来ないけど。
  最終的に未来永劫汚名を残す事になって、
  内心「よし!そうでなければ」と思ったけど。

  しかしながら舞台が終わってアフタートークが始まり、
  三方向の階段状になっている客席の、
  私の真向かいの席に、
  ちょうど与兵衛がこっそり座りやがって、

  ずっと正面で目が合っている状況の中、

  「歌舞伎では二枚目の俳優が演じるんですが、
   うちの与兵衛はちょっとお顔がねじ曲がっております」

  なんて言われて与兵衛、
  すねた感じに首を曲げて顔を隠しやがった。

  ……かわゆす!!!

  やべえコレだな!
  油屋の奥さんが、
  ついつい世話を焼いちまってたのはコイツのせいだな!
  クズの上に母性本能くすぐるタイプだな与兵衛!
  超危険危険女は極力近寄っちゃダメな奴だ。

  帰り際には与兵衛が間近に見たくなって、
  寄ってって握手して劇場を出た。
  心奪われてますやん真っ先に金取られますやん。

  とは言え私は「与兵衛を演じた人形」
  に好感を持ったまでであり、

  与兵衛という人物そのものが犯した罪は、
  決して許してはならない、
  という考え方をします。

何かしら心に残りましたらお願いします。頂いたサポートは切実に、私と配偶者の生活費の足しになります!