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『構造スリット』って何?

なぜ構造スリットが必要か?

RC造の壁には、耐力壁と雑壁があります。
雑壁というのは、応力を負担しない壁のことで、構造的には不要な壁のことです。
この雑壁が、柱や梁に取付いていることで全体のバランスが悪くなり、構造的な悪影響を及ぼしてしまうのです。
構造スリットは、雑壁が悪影響を及ぼさないように、柱・梁と雑壁との間に隙間を設け切り離すための材料ですね。

柱に壁が取付いている方が、部材自体は硬く強くなるのですが、変形能力が低下してしまいます。
構造スリットを設けなければ、地震時に全体の柱で地震応力に対抗する前に、強く変形能力の低い柱が破壊してしまい構造バランスが崩れてしまいます。

構造スリットを設けることで、耐震性を向上させますので、耐震スリットとも呼ばれます。


どこに、どんな、構造スリットを設けるのか

(垂直スリット)

垂直スリットは、柱と壁を切り離すための材料で、地震時の横揺れで、柱と壁がぶつからないように、垂直スリットの厚さは一般的に柱内法寸法の1/100以上にします。

垂直スリットは目地で固定されていますが、コンクリートの打設時の側圧により、垂直スリットが移動してしまうことがありますので、固定金具を使用することをお薦めします。

(水平スリット)

水平スリットの厚さは、一般的に20又は25を使用します。

垂直スリットには止水のための樹脂製のツバがついていますが、水平スリットにはありませんので、上下にブチルゴム付の製品を使用しましょう。
特に妻面などの雨掛かり部は、止水性のよい段差スリットの使用をお薦めします。
段差スリットを使用する場合は、梁が断面欠損にならないように梁のレベルに注意する必要があります。

水平スリットの上の壁縦筋の端部はスリットよりかぶり厚さを確保する必要があります。壁縦筋の下端に鉄筋キャップを刺して嵩上げしたり、コンクリート製のスペーサーを設けているのを見かけますね。


壁はどうなっているのか

構造スリットを設けるといっても、壁の4周に設けるわけでではありません。壁が倒れちゃいますからね。
通常、壁の上部は一般的な配筋を行い梁に取り付け、側面と下部の辺にスリットを設け、柱・梁と縁を切ります。
構造スリットを設けている部分には振止め筋と呼ばれる60cm程度の鉄筋を@400程度に配筋し壁がふらつかない様にある程度、柱・梁に壁を固定します。
振止め筋は構造スリットを通過した空気に触れますので錆びないように構造スリット付近を防錆処理を行うか、メッキ処理された鉄筋を使用します。


スリット部の止水に注意!

構造スリット部は、地震時に動き、取付いている部分が破断するようになっているので、漏水に対する処置を行う必要があります。
垂直スリットと水平スリットが接続する部分は、止水を考慮して水平スリットの上に垂直スリットを乗せるように設けなければなりません。
水平スリットが、Lに折れ曲る場合は、ブチルゴムが連続するようにスリットを45°にカットし取り付けるようにしてください。
ルーフバルコニーや浴室などの防水の下地に構造スリットを設けることは好ましくないので、防水上部に構造スリットを設けるようにしてください。
構造スリットが防水上部に設けることができず、仕方なく防水下地に構造スリットを設ける場合は、増し張りなどの適切な処置を検討する必要があります。リスキーですが、、


その他構造スリットの性能

延焼範囲屋や区画壁等で耐火性能を要求されれている部分には、耐火性能を有したスリットを使用しなければなりません。
この場合も耐火材が連続するように構造スリットを設置する必要があります。

EV廻りに居室が接している場合等、騒音防止を考慮しなければならない場合は、遮音性能を有しているスリットを使用しましょう。

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