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最高の衝動買い

やつを買う前に 言っておくッ! おれは以前 やつの別のテイストを ほんのちょっぴりだが 体験した

い…いや… 体験したというよりは まったく理解を 超えていたのだが……

あ…ありのまま この前 起こった事を話すぜ!

「おれは 奴の前で財布の紐を固く縛ったと
思ったら いつのまにか緩んでいた」

な… 何を言っているのか わからねーと思うが 

おれも 何をされたのか わからなかった… 

頭がどうにかなりそうだった… 催眠術だとか超スピードだとか

そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…

イチローズモルト ワインウッドリザーヴを買ったんだ…!!!

私は普段衝動買いをしない。むしろ優柔不断なほうである。しかし、今回ばかりは即買いせずにはいられなかった。衝き動かされた。衝撃を受けた。半ば茫然自失、夢心地のまま私はレジを通した。事の成り行きはこうだ。


とある酒屋をたまたま訪れた。その入り口にはこう書かれていた。

「山崎、白州、セット販売入荷しました!」

ナ、何ィ~!!??

山崎、白州とはウィスキー好きで知らない人はいない、日本のウィスキーの銘柄である。ここ5年で供給が需要に追いつかないほど人気が出ており、正規の値段で買えない、いわばプレミアなのだ。その酒屋の他店舗で私は以前、響のセット販売を買っていた。響もまた、あるいは山崎や白州以上に高騰しているウィスキーである。

そんなウィスキーがセット販売でとはいえ、一本あたりなら従来の値段に近い価格で買えるのだから、興味を抱かずにはいられない。ワクワクしながら店内に入った。そしたら、“やつ”がいたのだ……

イチローズモルトが

イチローズモルトもまた日本の超人気ウィスキーである(※ちなみにあのイチローとは何も関係がない)。とくにウィスキーを特別な樽で寝かせたものは入手困難で、もしあったとしてもとてもじゃないが気軽に買える値段ではない。私は以前イチローズモルトのミズナラウッドリザーヴを買っていた。近所の酒屋でたまたま見つけ、1万6千円もの値段だったが、同じくイチローズモルトに惚れている友人に声をかけて折半で購入するに至っていた。

それが、今回は他の国産ウィスキーもセットで1万6千円なのだ!!!

しかも私がずっと欲しかったワインウッドリザーヴのセットもある。私は大のワイン好きなので、その存在を知ったときから垂涎の的だった。なんならそのセットには、イチローズモルトのスタンダードクラスであるホワイトラベルまで入っている。ホワイトラベルも大変な美味で、ドイツへ留学するときにお供として持っていったくらいだ(※ドイツでは日本よりウィスキーが高い)。ただ、いくらセットで破格とはいえ金額が金額だけに、しかも昨今の経済事情による懐の心許なさも手伝い、私は躊躇いも覚えた。一瞬だけ。

えっっ、買うしかなくない?!買う以外の選択肢ある?!ないでしょ!

ないでしょ!!!

財布を固く握りしめて紐はゆるゆるにし、購入を固く決心して頬をゆるゆるにして私はレジに向かった。楽しすぎる~!!偶然立ち寄った酒屋でこの展開、もはや運命。ジャジャジャジャーン!!!これにはベートーヴェンも思わずスタンディングオベーション。

かくして我が家にイチローズモルト2本を含むウィスキー4本が招かれた。鳥取のウィスキーはこれまで飲んだことないので楽しみ。まずはシルバーラベルから飲んでみよう。

いやァ、圧巻ですなァ…。これがあるうちは死ねんよ。現世への執着は捨てきれない。もともとあるイチローズモルトのミズナラウッドリザーヴも、生きていてとてつもない喜びや悲しみがあった時に限り飲んでいる。それだけに買ってから一年半くらい経つが、5分の1くらいしか減っていない。

今回のワインウッドリザーヴを開けさせるような、いったいどんな出来事が私を待ち受けているのか。何があってもイチローズモルトがある。その頼もしさ、背中を預けられる安心感。たとえ東京に3年以上ずっと雨が降り続いて世界の形が変わってしまっても、「大丈夫」――そう信じられる。

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