臨床血液、今月何読みましたか?(2020年11月)
臨床血液の11月号が届きましたので、目を通しました。
気になった報告についてコメントしたいと思います。
ひとつめ。
p1570 鳥取県立中央病院の橋本先生らからの報告。
血液疾患患者におけるPICCを右から入れるか左から入れるかで抜去する理由や合併症を検討したものです。
こういう発表ができるのか、と発想を面白く感じました。結論としては左でも右でも大差なしということでした。日本の血液疾患患者を対象に約300症例、809件のPICCについてCRBSIなどの頻度を知ることができ、貴重な報告と思います。
また、特定看護士がPICCを挿入できることを考察を読んで知りました。
ふたつめ。
p1605 久留米大学の大屋先生らからの報告。
多中心性キャッスルマン病様のIL-6産生パラガングリオーマの症例報告です。腹部腫瘤ある17歳の男性で、消耗病態がありIL-6高値、VEGF高値などからMCDを疑って腫瘍摘出。術後から高血圧が顕在化し、PRESを発症したそうです。採取的には病理検体などから、IL-6産生パラガングリオーマと診断がつきました。
後日、保存検体で血中のノルアドレナリン、ドーパミンなどを確認してありましたが、やはり血液を保存しておくのは重要ですね。
IL-6産生のパラガングリオーマはこれまで21例報告されているのみで、非常にまれのようです。
最後。
p1625 都立駒込病院の熊谷先生らの報告。
今月号の表紙にもなっている空胞性脊髄症(vacuolar myelopathy:VM)がALLの同種移植後にみられたという短報です。
通常、VMはAIDSの神経合併症でみられるそうですが、これまで同種移植後のVMの報告は1つだけだそうです。
自分の経験では臍帯血移植後にHHV-6が発症した際など下肢の脆弱性、痙性対麻痺などが起こる印象があるのですが、これも何か関係があるのでしょうか。
日本の血液内科の先生方の素晴らしい仕事ぶりを拝見し、身が引き締まりました。今月も貴重なご発表をありがとうございました。
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