抗PD-1薬で治療された古典的ホジキンリンパ腫の腫瘍と微小環境の反応

Tumor and microenvironment response but no cytotoxic T-cell activation in classic Hodgkin lymphoma treated with anti-PD1.

(Blood. 2020 Oct 28;blood.2020008553. )

Bloodに2020年10月28日に報告されたドイツグループからの報告です。

古典的ホジキンリンパ腫に対する抗PD-1薬は、固形がんとは違った機序で抗腫瘍効果がありそうです。

背景:

古典的ホジキンリンパ腫(CHL)は抗PD-1薬が効きやすい血液腫瘍であるが、その抗腫瘍効果の機序は不明である。これまでの解析は再発・難治性のCHLを主に対象としていた。最近、GHSGの第II相NIVAHL試験において、early-stageの予後不良CHLに対して初回治療としてニボルマブをベースとした治療が行われ、良好な成績が報告された。

目的:

CHLでは、固形がんと比較し、急激な抗腫瘍効果がみられる。この機序を明らかにする。

方法:

NIVAHL試験に参加した症例を対象として、治療前と治療開始早期(day1-15)のペア生検検体と末梢血を解析した。免疫染色標本と遺伝子発現が評価された。

結果:

急速な臨床反応を反映して、Hodgkin-Reed-Sternberg cell (HRSC)はニボルマブ初回投与後数日以内に組織から消失していた。Tumor microenvironment(TMA)は、治療のこの早い時期にすでにTr1 T細胞とPD-L1+腫瘍関連マクロファージ(TAM)の減少を示していた。固形がんとは違って細胞傷害性免疫反応もクローン性T細胞の増殖も腫瘍と末梢血ともに観察されなかった。これらのTMAの初期変化は、抗PD-1治療中の再発時のCHL生検で見られた変化とは異なるものであった。

結論:

CHLにおける抗PD-1療法に対する特異的な非常に初期の組織学的反応パターンを同定した。HRSCへの主な作用機序として、適応的抗腫瘍免疫反応の誘導ではなく、むしろ生存促進因子の除去が示唆された。

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一言

CHLは腫瘍が占める割合は5%以下で、体積のほとんどを非腫瘍性のTMEが占めています。そのような固形腫瘍とは大きく異なる特徴のせいか、PD-1薬の作用機序も特殊なもののようです。最近、type-1 TregとPD-L1+腫瘍関連マクロファージがCHLで豊富に存在すると報告されましたが、本研究では抗PD-1薬投与早期にその集団が著減していました。このあたりの機序が明らかになってくれば抗PD-1薬にとどまらず、CHLに対する免疫チェックポイント阻害薬による最適な治療戦略が考えられるようになると思います。

すでにPD-1薬でHLの方を治療されている先生方も多いと思いますが、その作用機序はまだはっきりとはしていないようです。




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