新規発症多発性骨髄腫に対するKRD vs VRd。ENDURANCE試験。


Carfilzomib or bortezomib in combination with lenalidomide and dexamethasone for patients with newly diagnosed multiple myeloma without intention for immediate autologous stem-cell transplantation (ENDURANCE): a multicentre, open-label, phase 3, randomised, controlled trial

(Lancet Oncol. 2020 Oct;21(10):1317-1330.)

2020年8月28日にLancet Oncologyに掲載されました、Mayoクリニックからの報告です。新規MMに対する治療戦略としては、速やかに深い寛解にいれることが重要とされています。SRLのマルチカラーFCMによって、MRDなども実臨床で測定しやすくなってきました。現在標準療法であるVRdのBorを次世代のPIに変えることでそれを達成できるのではないか、と期待されていた試験の結果がでました。KRdとVRdを比較した、初めてのランダム化比較試験となります。

背景:

移植適応、新規発症多発性骨髄腫に対する標準療法はVRdである。次世代プロテアソーム阻害剤であるカルフィルゾミブとレナリドミドマイド、デキサメタゾン(KRd)との併用療法は、第 2 相試験で有望な有効性が示されており、VRd と比較して転帰が改善する可能性がある。

目的:

すぐに自家末梢血幹細胞移植を行う予定のない、新規発症の多発性骨髄腫患者を対象として、KRdレジメンがVRdレジメンよりも優れているかどうかを評価する。

方法:

多施設共同、非盲検、第 3 相無作為化比較試験(ENDURANCE 試験)。主な試験対象者基準は、高リスクでないこと、およびECOGのPSが0-2であることであった。36週間のVRdレジメン(3週12サイクル)またはKRd(4週9サイクル)レジメンを受けるように無作為に割り付けられた。導入療法後、レナリドマイドによる無期限または2年間の維持療法のいずれかに無作為に割り付けられた。

主要評価項目はinduction phaseのPFSとmaintenance phaseのOS。ITTで解析。

結果:

2013年12月6日-2019年2月6日、1087人の患者が登録され、VRd(n=542)またはKRdレジメン(n=545)に無作為に割り付けられた。中間解析では、PSF中央値がKRd群で34.6カ月(95%CI 28.8-37.8)、VRd群で34.4カ月(30.1-推定不能)であった(HR 1.04、95%CI 0.83-1.31; p=0.74)。OS中央値はいずれの群でも未達。

図2

Grade3-4の非血液学的有害事象は、疲労(VRd群6% vs KRd群6%)、高血糖(4% vs 6%)、下痢(5% vs 3%)、末梢神経障害(8% vs <1%)、呼吸困難(2% vs 7%)、血栓塞栓性イベント(2% vs 5%)であった。治療関連死は、VRd群で2例(1%未満)(心毒性1例、二次がん1例)、KRd群で11例(2%)(心毒性4例、急性腎不全2例、肝毒性1例、呼吸不全2例、血栓塞栓性イベント1例、突然死1例)に発生した。

結論:

KRdによるinduction therapyは毒性が高く、標準リスクのMMに対してはやはりVRdが標準療法である。

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一言:

この試験によって、新規発症の標準リスクMMかつ移植不適応またはすぐには移植を行わない患者さんに対してはKRdを選択するメリットがないことが示されました。KRD群では治療反応性はVRd群より良好でしたが、心肺、腎へのGrade3-5の毒性のために全体的な成績の改善には寄与しませんでした。

single armの第2相試験ではKRDの成績は良好でしたが、今回の試験ではメリットがないという結果でした。質の高い研究が出てくるまではclinical practiceを変更する際には注意を払う必要があります。

また、この論文での注意点として、t(4;14)が入っていない一方で、t(14;20)やhigh-risk GEP70 signatureが入っていたりと、ハイリスクの定義がやや特殊なことが挙げられます。

VRdが標準療法にとどまりましたが、今後はDRdや4剤併用療法と比べてどうなのかというデータが必要かと思います。


※ちなみに、ハイリスクの定義として末梢血中のPC割合が20%以下「または」絶対数で2000以上とあるにも関わらず、Table 1.患者背景のcirculating plasma cellsの中央値が52%というのがよくわかりませんでした。わかる方がいれば教えていただけると幸いです。

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