臨床血液、今月何読みましたか?(2020年10月)

・・どこかで聞いたようなフレーズですが、國松先生の某企画とは何の関係もありません。

「臨床血液」は、日本血液学会に所属している先生のもとに毎月届く学会誌です。ここに症例報告を載せるのは若手血液内科医の登竜門になっています(個人の意見です)。

毎号届くものの、よし、あとから読もうと思って数ある本の中に埋もれていく経験をされている先生は多いのではないでしょうか。

この企画では、私が臨床血液に目を通して、脊髄反射的に浮かんだコメントを記していきます。「ほう、そんな症例が載っているのか」と、パラりと臨床血液をめくる先生が少しでも増えれば、と願っています。


ひとつめ。

p1469 東京医科歯科大学からの報告です。

汎血球減少症から4年を経て骨髄原発リンパ腫と診断され、最終的には何と同種移植まで必要であった、という報告です。非常にまれな骨髄原発リンパ腫ですが、その経過を知ることのできる貴重な報告になっています。

骨髄原発リンパ腫のレビューをみていると、最も多い病型はDLBCLのようですが、PTCLやHLもあるそうです。特に、PTCLの診断をつけるのは難しそうです。TCR再構成をみれば診断がつくのでしょうか。TCR再構成は、いつもどのリージョンを出したらいいか迷います。


ふたつめ。

p1476 市立札幌病院からの報告です。

尿崩症を契機に発症したErdheim-Chester病の一例です。ECDは珍しい疾患であるので、経過を確認しておくといいと思います。

この報告では、発症の6年も前から口渇、多飲、多尿があったようです。糖尿病とも書いてありませんから、ECDによる症状と思いますが、こんなに前から症状が出てくるんですね。ECDの27-47%に尿崩症を合併するそうなので、頭に入れておく必要がありそうです。PETで非常に特徴的な画像が得られますので、確認しておくとよいと思います。


最後です。

p1544 学会報告ですが、広島赤十字・原爆病院より。

AA-PNH症候群に対してEPAGを使ってみたというもの。

PNHクローンが20%程度の症例にEPAGを使ってみたところ造血は回復したものの、その後溶血発作がでたそうです。

EPAG後のPNHクローンサイズが書いてないのが残念でした。PNHクローンが拡大するのか、正常クローンに置き換わるのか気になるところです。症例がまとまれば、ぜひ報告していただきたいです。


今月は以上です。

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