凝固異常の有無による腰椎穿刺と脊髄硬膜下血腫

Association of Lumbar Puncture With Spinal Hematoma in Patients With and Without Coagulopathy

(JAMA. 2020 Oct 13;324(14):1419-1428. )

デンマークのグループからの報告です。

血液領域では中枢神経病変の評価、髄注などで腰椎穿刺をする機会が多いかと思います。また、背景疾患のために凝固異常がある場合もそこそこあると思います。その場合の脊髄硬膜下血腫の頻度はどうなのでしょう。

目的:

凝固障害の有無にかかわらず、腰椎穿刺後の脊髄血腫のリスクを決定する。

方法:

医療登録を使用したデンマーク全体のコホート研究(2008年1月1日~2018年12月31日、2019年10月30日まで追跡調査)。凝固障害は、①血小板数15万/μL未満、②PT-INRが1.4以上、③aPTT 39秒以上のいずれかを満たすものと定義された。

結果:

64 730人(年齢中央値43歳[22-62])のうち、腰椎穿刺を受けたのは合計83711人であった。血小板減少は9%、INR高値2%、APTT延長は3%であった。

脊髄硬膜下血腫が30日以内に発生したのは、凝固障害のない49,526人中99人(0.20%;95%CI、0.16%-0.24%)、凝固障害のある10,371人中24人(0.23%;95%CI、0.15%-0.34%)であった。

脊髄硬膜下血腫の独立した危険因子は、男性(調整後ハザード比[HR]、1.72;95%CI、1.15-2.56)、41~60歳(調整後HR、1.96;95%CI、1.01-3.81)、61~80歳(調整後HR、2.20;95%CI、1.12-4.33)であった。

凝固障害の重症度、疾患別にサブグループ解析してもリスクは有意に増加しなかった。外傷性腰椎穿刺は、INRが1.5~2.0(36.8%;95%CI、33.3%~40.4%)、2.1~2.5(43.7%;95%CI、35.8%~51.8%)、および2.6~3.0(41.9%95%CI、30.5~53.9%)の患者において、INRが正常な患者(28.2%;95%CI、27.7%~28.75%)と比較して、より頻繁に発生した。外傷性脊髄穿刺は、APTTが40~60秒(26.3%、95%CI、24.2%~28.5%)の患者でより多く発生した(21.3%、95%CI、20.6%~21.9%)。

結論:

今回のコホートでは、腰椎穿刺後の脊髄硬膜下血腫のリスクは、凝固障害のない患者では0.20%、凝固障害のある患者では0.23%であった。ただ、選択バイアスには注意する必要がある。

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一言:

意外と血小板数が数万程度だったり、PT-INRが2以上などでも腰椎穿刺が行われていることに驚きました。しかしながら意外とそこまで血腫の合併症は多くならないようです。一方で腰椎穿刺が行われた方を対象としたコホートであるため、明らかに無理そうなひとは除外されていることに留意する必要がありそうです。

私個人としては、髄膜炎以外では緊急でルンバールが必要な状況は少ないので、仮に凝固異常があった際にはPC輸血や凝固の補正など行った上で無理せずやっていこうと思いました。


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