同種移植後の生着不全に対する前処置なしのCD34陽性造血幹細胞投与

Predictors of recovery following allogeneic CD34+-selected cell infusion without conditioning to correct poor graft function

(Haematologica. 2020; 105(11): 226340. )

Haematologicaに掲載された、イギリスのグループからの報告です。2019年11月にpre-publishedされたそうですが、雑誌掲載は2020年11月です。よく知りませんが、Haematologicaってこうなのでしょうか。

同種移植後のpoor graft function(非拒絶、非再発のgraft failure)に対して、前処置なしで追加のCD34陽性細胞を投与したことは私はありません。どういう状況の場合にこのオプションが考慮されるのか、勉強のために読むことにしました。

背景・目的:

poor graft functionは、同種造血幹細胞移植後の重大な合併症である。CD34陽性細胞を前処理なしで輸注することは、移植片機能低下を改善するために用いられてきた。その機能回復の予測因子は不明であったため明らかにする。

方法:

一次性または二次性のpoor graft functionを呈した62例の患者を対象に、同じドナーからのCD34+選択幹細胞輸注を行った。

結果:

62例中47例(76%)では血液学的改善が認められ、輸血とG-CSFが不要になった。多変量解析では、回復と有意に関連したパラメータは、レシピエントとドナーのCMV-IgG(-)、活発な感染なし、レシピエントとドナーの性別の一致であった。回復は、混合ドナーと完全ドナーのキメラを持つ患者でも同様であった。5年全生存率は、完全回復を示した患者で74.4%(95%CI 59-89)、部分的な回復を示した患者で16.7%(95%CI 3-46)、無反応の患者で22.2%(CI 95%CI 5-47)であった。

結論:

合併症がほとんどないので、造血機能が回復しない移植後患者に対して試してもいいかもしれない。

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一言:

Poor graft functionは移植後5%程度みみられるようですが、「レシピエントとドナーのCMV-IgG(-)、活発な感染なし、レシピエントとドナーの性別の一致」などの条件がそろえば検討されてもよいかもしれません。

具体的には、本試験では、移植後15か月程度の時期に、中央値3.2×10^6/kgのCD34陽性細胞を投与しています。CD34陽性細胞は、ドナーにG-CSFを投与し採取し、凍結せず、24時間以内に投与しました。血球回復は投与し30日以内にみられたようです。疾患はリンパ腫関連がかなりの割合でした。

注意点は、今回検討した集団では92%の方がT-cell depletionの条件で移植を行われているという点と、コントロール群が置かれていない点です。


血縁でない限り、移植後CD34陽性幹細胞をいただくハードルはなかなか高いと思います。これとは別にpoor graft functionを対象として、EPAGなどが投与される試みも進んでいますので、こちらにも期待したいところです。

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