「血液内科」Vol.81 No.6

今月も科学評論社が出版している「血液内科」を入手しました。今月の特集は「造血幹細胞移植の最近の動向」でした。

特に興味をひかれた話題をピックアップしてコメントしてみたいと思います。

個人的にはこの号では特に、p876 日本医科大学の永田先生の「MDSのクローン進化と予後」とp832 岡山大工の遠西先生の「TMEM30A」の話を楽しく読みました。前者は永田先生らが2019年にNature communicationに投稿された論文の解説です。MDSが一段と深く理解できる素晴らしい解説でした。当然かもしれませんが、変異は無秩序に入っていくものではないんですね。どれとどれが起こりやすいか、どれが排他的なのか臨床的にはどういう意味をもつかなど、知識が整理されました。

後者は遠西先生らがずっと追ってきたDLBCLにおけるTMEM30A変異の概観が述べられており、臨床的にも生物学的にも非常にエキサイティングです。


特集

p766 都立駒込病院の遠矢先生のHLA半合致移植についての話。この分野は今後適応がどんどん拡大していくと思いますので、よい整理になりました。もう少し紙面があれば、疾患別の解説も読んでみたかったです。

生着不全に対するCBTとの比較の話、再移植でHLA半合致ドナーを選ぶケースはままあると思いますが、その際には1回目の移植とは不一致HLAが重複しないようにするなど重要な点を復習しました。


p800 九州大学の加藤先生の免疫チェックポイント阻害薬などの移植との影響についての話。

Mogamulizumab、抗PD-1は同種移植の際のGVHDと深いかかわりがありますが、その辺の知識の整理に最適でした。移植の前と後でGVHDの起きやすい差はどうか、期間をあけるとしたらそれぞれどれくらいがよさそうか、など。起こりやすい副作用から対処法までカバーされており素晴らしい解説でした。

話題

p838 大阪大学の村上先生の「PIGT変異によるPNHの発症機構」。

これまで何となく名前だけは知っていたPIGT変異によるPNHについて、私はあまり理解できていませんでした。本場の先生がPIGA変異のPNHと対比しながら、全体像を過不足なく解説されているので、すっきりと頭に入ってきました。面白いので一読をおすすめします。


p845 宮崎大学の栃木先生の「IMiDs誘導性血小板減少の機序解明」。

Lenを使用した際に血小板が減ってきますが、この際の骨髄中の巨核球は減少していません。その原因を探った研究です。私はこの論文をBloodに掲載されてすぐに読みましたが、流れが非常に美しい論文で、感動しました。


つらつらとコメントしてみましたが、ぴんときたものがあればぜひ読んでみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?