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メインPCを更新した

 2023年 今年買ってよかったもの で書いたように2023年の春にメインPCを更新した。HPのENVY TE02-0098というモデルである。そこで予告した通り現在は色々と手を入れて使っているのでここにまとめようと思う。

※これを書いている2024年5月現在、TE02-XXXXシリーズは既にカタログ落ちしてしまっていることに留意いただきたい。



更新の経緯と旧構成

 メインPCがいいかげん古くなってきたので更新を検討し始めた。
当時のPCのスペック&構成は大体こんな感じ。

  • OS:Windows10 Pro

  • CPU: Intel Core i7-6700K(4.00GHz-4.20GHz)

  • CPUクーラー:CoolerMasterの簡易水冷(90mmファン)

  • チップセット:Z170 Express

  • RAM:64GB(PC4-17000 16GB×4)

  • GPU:ELSA GeForce GTX 980 Ti 6GB S.A.C

  • ストレージ1:2TB SATA SSD(CT2000MX500SSD1)

  • ストレージ2:2TB SATA SSD(CT2000MX500SSD1)

  • ストレージ3:1TB SATA SSD(CT1000MX500SSD1)

  • ストレージ4:1TB SATA SSD(CT1000MX500SSD1)

  • 電源:Owltech Seasonic FOCUS+ SSR-750PX

 
 古くなってきたとはいえ事務処理程度ならこのままで十分だったのだけど、しばらく使っているうちに登山で録り溜めているGPXファイルの累積容量が100MBを超えはじめ、カシミール3Dでの操作が落ちるようになってきた。
他方、SONYに見切りをつけてSteamに手を出したという事もあり、さすがにGPUの古さは否めない。パーツの換装でだましだまし使うのはやめて更新に踏み切ることにした。

選定

ENVY TE02-0098

 身も蓋もない話だけど今のPCにした理由は初期の導入費用が安かったという点に尽きる。
Core i9-12900K/RAM 128GB/RTX3080Ti/チップセットZ690Hとカタログスペックだけだと他社のBTOを見渡しても図抜けているし、3面シルバーの外観で野暮ったくない。何より当時これがクーポン込みで30万を割る価格で販売されていたのだ。

 と言いつつ当初は自作するつもりでいた。今後の拡張を見据えた余裕のあるケースにめちゃくちゃでかい空冷のクーラーを積んでグラフィックスカードは簡易水冷に改造して……とかあれこれ構想しつつ、並行して各社BTOにもアンテナを張っていた。処分価格になったセットを安く仕入れて好みの筐体に移植する算段だったからだ。最終的に購入することになるENVY TE02シリーズだが、このモデルが米国で発表されたのは2020年と結構前だった。既存のENVY TE01系の後継として発売される予定が長引くコロナ禍や半導体不足、世界情勢の変化が絡みリリースは2022年秋頃まで延びた。その間CPU/GPUの競争が過熱して世はゲーミングPC時代に突入。購入を見込んでいたパーツの価格は乱高下し、自作するよりもBTOの方が安いという逆転現象すら起こるようになってしまった。

 結局、ウォッチしていたモデルが最安値に近づいた頃、人生の大先輩でもあり岳友でもあるTwitterのフォロワーに「これ安いですよね!安いですよねえ!?」と迫り苦り切った同意を得たところでポチーした。後日、そのフォロワーは日本銀行券にものを言わせて最新のパーツでピカピカホワイトハイエンドPCを組んでいた。どちらが幸せかは想像にお任せしよう。

見えてる地雷

 値段が安いという事はつまりどこかにコストカットされている部分があるという事でもある。ENVY TE02は同社のゲーミングPCシリーズの廉価版エントリーモデル、OMEN 25Lとほぼ同じ筐体を採用している。ケースだけでなくCPUやRAM、GPUもOMENシリーズと共用しているようでこの辺りで調達費用を抑えているらしい。その結果、BIOSが大きく機能制限されているのにK付きのCPUやOCが売りのメモリモジュールが載せられていたりと構成にちぐはぐな点が見られる。ベンチを回すのが目的ではないのでそこは目を瞑ることにした。

 ただ、窒息ケースと言われているこの筐体に上位モデルのOMEN 45Lに載せるようなCore i9のk付き12世代とRTX3080tiの爆熱コンビを突っ込んでヒートパイプ3本(後期モデルは2本に減らされた)の120mm単発空冷でパッケージ売りする剛腕ぶりには脱帽するしかない。さすがに箱出しで使う分には一応問題のないレベルに調整されているようだが排熱処理には大いに不安が残り、長期運用を行うには疑問符が付く。

買ったばかりの標準構成 今見返すと結構すっきりしている

 マザーボードもかなり削られていて拡張性のなさが目立つ。PCI-eには空きがなく、ストレージはM.2とSATAが1つずつしか足せない。かつガワが制約の多いミニタワーなので出来る事には限界がある。
ユーザーレビューを待つまでもなく(どういう訳かTE02のレビューは極端に少なく、逆に役に立たないサクラブログだらけである)これらの情報は商品ページから窺い知れるので選定の時点で情弱仕様というのは織り込み済みだった。ならばこちらとしてはやれることをやるまでである。自分は一体何と戦っているんだろうか。

現在の構成

 先に手を入れた後の構成を記載する。(◎は購入時のまま)

密度感のある現在の構成
  • OS:Windows10 Pro

  • CPU: Intel Core i9-12900K(3.20~5.20 GHz)◎

  • CPUクーラー:Noctua NH-D12L chromax.black (+NF-A9 PWM chromax.Black.swap) 

  • チップセット:Z790H(micro-ATX)◎

  • RAM:128GB(PC4-25600 32GB×4)◎

  • GPU:NVIDIA RTX 3080Ti◎

  • ストレージ1:2TB M.2 SSD(WDS200T3X0E-EC)

  • ストレージ2:2TB SATA SSD(CT2000MX500SSD1)

  • ストレージ3:2TB SATA SSD(CT2000MX500SSD1)

  • ストレージ4:4TB SATA SSD(CT4000MX500SSD1)

  • ストレージ5:4TB SATA SSD(CT4000MX500SSD1)

  • ストレージ6:4TB SATA SSD(CT4000MX500SSD1)

  • 電源:Fractal Design Ion+ 2 Platinum 860W FD-P-IA2P-860
     

OS変更(Win11→10)

 購入時のOSを捨ててWin10をクリーンインストールする(ライセンスはそのまま利用)。

 ただし本機の場合Intel VMDが有効になっている(BIOS >> Security > Slot Security > M.2カードの全スロットがEnable)ため、OSのインストール時にNVMeのストレージが表示されない。LGA1700以降のクリーンインストールは初だったのでここで引っかかった。
対処として対象のスロットセキュリティを無効にするかIRST(Intel Rapid Storage Technology) ドライバーを別途メーカーかインテルのウェブサイトからメディア内に用意しておかなければいけない。

当該設定箇所 本機ではIntel VMDという表記を見掛けない

 IRSTドライバーについてはWin11の次期バージョンに組み込まれるという噂もあったが、つい先日別機をクリーンインストールした時も対応していなかった。結局今回はIRSTを入れてみる事にしたが、登場から数年経過しても各社の対応はばらばらだし、RAIDを組んだりしない限りぶっちゃけ不要なのでIntel VMDは無効にして進める方がいいと思う

メーカーサイトにあるsp136736.exeを展開してIRSTドライバーをメディアに仕込んでおく

 Win10にした理由はWindows11が8以下の産廃だったから生理的に受け付けないレベルのUI改変でどの操作をする際にもストレスが付いて回ったからだ。当初は弄りまわして何とか好みの操作感に近づけようとしたが、いくら弄ってもだめなものはだめだというのがはっきりしたので来るべき日が来るまで可能な限り距離を置く事にした。

 なお、OSを10に落とすとメーカーのWebサイトから落としてきたドライバーの中で当てられないものがいくつか出てくる。ほとんどはWindows Updateのオプションから引っ張って来れば必要なものは落ちてくるかと思う。

ストレージ換装その他

 いよいよハード面に手を着けていく。実はブートドライブの換装はOSのクリーンインストール時に並行して実施していたのだけどややこしくなるので別項とした。

 ということでまずはブートドライブの換装。
CPU、GPUの他、もう一つの熱源であるSSD(WD black SN810 1TB)をWD Black SN770 2TBに交換した。Gen.4で速度もそこそこあり低発熱という優等性だ。熱対策は不要らしいけどこのストレージはグラフィックスカード下に収めることになるので念のためにヒートシンクを取り付けておく。
装着したのはSilver StoneのSST-TP02-M2という片面タイプ。サイズはぎりぎりでなんとかグラフィックスカードに干渉せずに収まっている。SSDが優秀なのかヒートシンクの効果なのかは分からないが普段は30℃後半から40℃台で安定している。

WD Black SN770+SST-TP02-M2

 ストレージ増設のためもう1つのM.2スロットにはM.2→SATA変換ボードを差した。SilverStoneのECS07という型のものである。同様の機能を提供する安価な商品はいくつかあるが信頼性の高そうな本機にした。これで本体分の空きポートを含めSATAストレージを6本差すことができるようになった。

ECS07 基盤は天面しか露出しない

 そこに旧PCで使用していたSATA SSD群を接続する。
元々用意されている2.5/3.5ストレージベイのマウンタを取っ払ってCrucial MX500を2本突っ込み、さらに天面のスイッチ類付近のスペースに3本収めた。
固定具などは用意されていないので手元にあった適当なHDD/SSDマウンタにねじ止めしてケース内にテープ留めしただけである。SATA線や電源のテンションがあるのでコネクタに負荷が掛かっていなければ大丈夫だろう。あまりおすすめはしない。

正面側中・上段に無理矢理SATA SSDを収める


 ちなみに元のSSDは速度が出る分結構熱を持つらしく、対策で大きめのヒートシンクにサンドイッチされていた。初期不良の有無とWin10の安定化を確認した後は外付けSSDにでもして使おうかとも思ったけど早々に処分してしまった。

標準のWD Black SN810と重量級ヒートシンク

エアフロー改善

 とにかく排気が心許ない(背面に90mmが1基のみ)なのでこれを改善していく。どういうつもりだかトップメッシュなのに天板で蓋がされている謎設計なのでこれを取っ払い排気配置でNoctuaの120mmを取り付ける(かなり固いけどカバー部分はゲート構造で開口可能)。なお、ケースの設計が意地悪で120mmファンが絶妙に2基並べられない。

天面が鉄板でカバーされている

 フロントとリアはそれぞれ120mmと90mmのFOXCONN(鴻海)製のファンが1基ずつ付いているのでNoctuaに換装して静音化を図る。エアフローはオーソドックスな前・底面吸気、背・天面排気の構成にした。

  • 天面:Noctua NF-A12x25 Chromax.Black ×1(排気)→追加

  • 前面:Noctua NF-A12x25 Chromax.Black ×1(吸気)→交換

  • 背面:NF-A9x14 HS-PWM chromax.black.swap ×1(排気)→交換


グラフィックスカードを冷やせ

 本機には最大の熱源たるRTX 3080Tiが搭載されている。一定以上の負荷を掛けるとこれでもかという位に風切り音がするし、

追加した天面ファンから暖房器具かという位の温風が立ち昇る。天面はスぺースの都合でファン1基分しか積めないので簡易水冷化は諦め、カード下にケースファンを設置して風量を得る事にした。

OMENシリーズと共通のRTX 3080Ti

 まずはカードに平行する形で120mmファンを1基設置。これはブランクスロットに長尾製作所のステー(SS-NPCIFSTY120PRO-V)をオフセットした。所定の位置にねじ止めすると干渉するため瞬間接着剤でブラケットをずらして貼り付ける。

ステーを瞬間接着剤で留めるなど

本当はこのステーに120mmを2基並べるつもりだったけどマザーボードに唯一残されたSATAポートに干渉したため、次善策として底面に140mmを1基置いた。

  • 内部:Noctua NF-A12x25 Chromax.Black ×1(吸気)→追加

  • 底面:Noctua NF-A14x25 Chromax.Black ×1(吸気)→追加

エアフロー概念図


 実の所、対策前後でGPUの温度をちゃんと監視していなかったので冷えたかどうかという効果の話はできない。ただ、先に増設したSATA SSDのうち140mmファンからの風が当たるであろうストレージ4~6に比べ、ストレージベイに収めたストレージ2,3は常に10℃ほど高くなっているためエアフローの強化には寄与している事は確からしい。

とある日のアイドル温度(室温18℃)

CPUクーラー換装

 第二熱源のCPUの冷却能力を上げていく。
許容高144mmのこのケースにぎりぎり収まる120mm空冷はNoctuaのNH-D12Lしかない(実際には1mmオーバーする)。chromax.black版が国内で発売されるのを待ってすぐに購入した。

NH-D12L chromax.black +NF-A9 PWM chromax.black.swap

 これにNF-A9 PWM chromax.black.swapを取り付けてデュアルファン運用にしている。なぜ90mmファンなのかというと、搭載されている変形120mmファンが単品販売されていないというのと、仮に同型のファンを増設した場合、メモリモジュールに干渉してクーラーの最大高を超えてしまうためである。

 その懸案事項だったクーラーの最大高だが、想定の範囲内でしっかりとはみ出してくれた。それでもサイドパネルは閉まったので一安心。ガラスパネルだったらこうはいかなかった可能性が高い。むしろ接触したヒートパイプの熱をスチール板のパネルが奪っている感じなのである意味好都合?

ほんの少しはみ出しているがパネルは閉まった


 デュアルファン化にあたりNoctuaに問い合わせて適合するクリップを送ってもらっている。SFC15-BKという型らしい。
デュアルファンの費用対効果について議論しはじめると悲しくなのでやめよう。ましてやNoctuaのファン追加となると感情論でしか整理が付けられない気がする。「見えてる地雷」の項でやれることをやるまでと述べたはずだ。

取り寄せたファンクリップ 色も合わせてあるのはさすがNoctua


 なお、NH-D12L chromax.blackの入手までは個人的にかなり待った。Noctuaのロードマップでは2023Q4リリース予定だったものが2024Q1にずれた上、リリースが発表されたのは2024Q1も終わりかけの3月後半、さらに日本での発売は4月末だったのでPCの購入から丸1年は標準のクーラーを使っていた事になる。その間に問題があったかというと実はほとんどなく、きちんとCore i9-12900Kを冷やしてくれた。よく見るとストレージやRAMに干渉しないよう天面側にオフセットされているし、NH-D12Lと似たアプローチで120mmファンが収まるように形状が工夫されている。さすがにやかましかったのでファンだけはNoctuaに交換したけど。

標準のクーラー 何気に高性能?

 ちなみにLGA1700以降はCPUソケットILMの押さえが強く、CPUが設計上反るというので対策用のマウントフレーム(ThermalrightのLGA 17XX-BCF-GRAY)に交換している。これはPCを購入して一番最初に手を入れた部分でもある。もはやグリスの塗り直しの時以外に拝むことはないパーツだけど各社ともにうるさいデザインなんとかならんのか……。

CPUマウンタを換装


電源交換

 変換効率の良い電源に換装する。安定性とケーブルの取り回しの良さでFractal Design Ion+ 2 Platinum 860W FD-P-IA2P-860を選定した。

Fractal Design Ion+ 2 Platinum 860W FD-P-IA2P-860

 当然だけど専用設計の電源からフルモジュラー式に変更するのはなかなか骨の折れるものだった。裏配線ができるといっても数ミリしか空間は確保されていないので余ったケーブル長をどこに収めるかで発狂しそうになった。UltraFlexケーブルでなければ厳しかったと思う。

裏配線で無理が出たのでATX 20+4pinケーブルはスリーブを剥いた(電源そば)


 微々たるものだろうけど変換効率が上がれば電源からの発熱も低減できるし、ついでにちょっとだけ容量が増えるのはうれしい。ファンは常時回転にしているけど何気に一連の作業で最も静音化につながった換装だったことには驚いた。

総括

 客観的なデータはないものの手入れの甲斐あってかそこそこ静かで冷える端末になった。動作も快適そのものである。なお、極力節約しながらパーツを揃えたとはいえ追加で掛った費用については考えたくない。
次は自作するかケースとマザーボード買って載せ替えよう!以上!

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