洋上慰霊祭

統合幕僚監部や海上自衛隊のホームページで海外に派遣されている海上自衛隊の艦艇における洋上慰霊祭の写真が公開されることが増えています。

洋上慰霊祭

不肖、私も海上自衛官時代に洋上慰霊祭に何度か艦艇乗員として参加し、また、最後の6年間は、洋上慰霊祭の執行者として弔辞を捧げたこともありました。海上自衛官として着任した最初の船で戦艦武蔵が沈没したシブヤン海においてレイテ沖海戦において戦没した海軍将兵に対する洋上慰霊祭に参列したのが昭和62年です。その後、30年以上経ってから同じ場所で、今度は慰霊祭の執行者として洋上慰霊祭を挙行することとなったのは、何かの御縁だったのでしょうか。

この際、私が慰霊祭の執行者として弔辞を述べることになるのですが、その内容については、自分自身の考えもあり、散々悩んだ挙句、日本海軍だけでなく日米両海軍の将兵に向けた内容としました。

海上自衛官としての30年余の勤務を通じて、結実した想いを弔辞に込めようと思いました。その内容は次のとおりです。(発言のスタンスについては賛否両論あると思います。)

「本日ここに、シブヤン海を航過するに当たり、それぞれの祖国に視力を尽くして戦い尊い命を捧げた日米両軍の将兵に対し、謹んで哀悼の意を表します。顧みれば。昭和16年12月8日の開戦以来、大戦の全期間を通じ我が国の160万トンの海軍艦艇が失われ18万人の将兵が戦没されました。

特に、この海域における海戦は海戦史上未曽有の大規模で激しい戦いとなりました。

今、往時を偲ぶとき。日米双方の海軍軍人として戦い、それぞれの祖国と御家族を想いつつ命を捧げられた皆様の胸中はいかばかりであったでしょうか。察するに余りあります。

戦後70年余りを経た今、日米両国は、自由と平和という価値を共有する国として共に繁栄を謳歌しています。

激しい戦において見えられた皆様の末裔である私たちの祖国は、いまや強固な同盟関係にあり、特に海上自衛隊と合衆国海軍は同盟の試金石となり、この地域の平和と安定に貢献しています。

かつて想像もできなかった盤石な同盟、そして同盟がもたらす繁栄は、まさに皆様の犠牲が礎であることを私たちは決して忘れません。誠を尽くし国に殉じられた皆様の精神は不滅であり、今も、私たちの心の中に脈々と生き続けています。

今次航海に当たり、皆様から受け継いだ精神を護り抜くことをお誓いするとともに、皆様のご冥福を心からお祈り申し上げます。

どうか安らかにお眠り下さい。」

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