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【エビデンスから見る】THCVとは? 違法成分THCとの比較やTHCVの効果 潜在的な可能性や用途について詳しく解説


※このnoteは約5-15分程で読むことができます。


Δ9-THCV(テトラヒドロカンナビバリン 以下THCV)は大麻草に含まれる天然のカンナビノイド成分(フィトカンナビノイド)の一種です。THCVは日本国内違法フィトカンナビノイド、Δ9-THC(テトラヒドロカンナビノール 以下THC)と分子構造が非常に似ている同族体(ホモログ)と呼ばれるもので、化学的に見るとTHCVはTHCの従兄弟のようなものです。しかし、THCVの薬理作用はTHCと比べると、正反対ともいえるもので、その特異な薬理作用から海外のカンナビノイドコミュニティでは「Caffeine or Adderall of Cannabinoids」訳: 「カンナビノイド界のカフェイン又はアデロール」などの意見が確認されています。今回はそんなユニークな特性を持つ、フィトカンナビノイドTHCVについて紹介していきます。参考文献は文末にございます。

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THCVとTHCの化学的な比較

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名称: (-)-trans-delta9-Tetrahydrocannabivarin,THCV, Δ9-THCV
IUPAC: (6aR,10aR)-6,6,9-Trimethyl-3-propyl-6a,7,8,10a-tetrahydrobenzo[c]chromen-1-ol
CAS: 31262-37-0
化学式: C19H26O2
分子量: 286.415
融点: N/A
沸点: <220℃


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名称: (−)-trans-delta9-Tetrahydrocannabinol, THC, Δ9-THC
IUPAC: (6aR,10aR)-6,6,9-Trimethyl-3-pentyl-6a,7,8,10a-tetrahydro-6H-benzo[c]chromen-1-ol
CAS: 1972-08-3
化学式: C19H30O2
分子量: 314.469
融点: N/A
沸点: 157℃

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THCVとTHCの原子配列は殆ど同じで、僅かなその違いは、THCVの側鎖がプロピル基なのに対して、THCの側鎖はペンチル基であるという点です。

期待される潜在的可能性及び薬理作用や用途

2021年12月23日時点では、pubmed(米医学文献検索サイト)で「Tetrahydrocannabivarin (THCV) 」と検索すると117件ヒットします。一方で、同サイトで同条件で「Cannabidiol (CBD)」と検索すると4,463件、また、「Tetrahydrocannabinol (THC)」と検索すると10,809件ヒットします。このことを考慮するとTHCVについての本格的な研究は始まったばかりです。限られたデータにはなりますが、THCVの潜在的な可能性や研究結果についてご紹介いたします。


食欲抑制効果はありながら、抑うつ状態になるなどの大きな副作用が認められない、肥満改善の期待(THCと同時に摂取した際には、食欲亢進状態いわゆるマンチの状態を完全になくす程ではない)
●空腹時血漿グルコースを減らす事で糖尿病の改善が期待されているようで、糖尿病の治療に繋がる可能性があります。

その他にも

エネルギー代謝の増加
不安やパニック発作に対するポジティブな効果
パーキンソン病に対する治療の期待
●抗炎症
●骨成長促進

などTHCVは様々な潜在的な可能性を有しています。


THCV薬物動態

THCVはカンナビノイド受容体タイプ1(CB1R; Type 1 Cannabinoid Recepter)アンタゴニスト(逆アゴニストまたは拮抗)として作用します。さらに、カンナビノイド受容体タイプ2(CB2R; Type 2 Cannabinoid Recepter)には部分的アゴニストとして作用します。

一方、THCはそれぞれのCB1RとCB2Rに部分的アゴニストとして作用します。

THCVの特異な特徴としては低用量ではCB1Rにアンタゴニストとして作用しますが、高用量(具体的な用量は明示されず)ではCB1Rに部分的アゴニストとして結合し、THCと比較し、いわゆるストーンやマンチの状態にならず、約1/4相当の作用が有るとの研究結果があります。

(-)-trans-Δ9-THC (Ki=40nM)(CB1R)

(Ki=36nM)(CB2R)

(-)-trans-Δ9-THCV (Ki = 75.4nM)(CB1R)

(Ki =62.8nM)(CB2R)


THCV 受容体作用メモ

CB1R アンタゴニスト
CB2R 部分的アゴニスト
GPR55 部分的アゴニスト
l-α-lysophosphatidylinositol(LPI) 部分的アゴニスト
5HT1A アゴニスト
TRPV2 アゴニスト
TRPM8 アンタゴニスト
TRPA1 アゴニスト

情報僅少。


※随時更新

参考文献

Abioye, A., Ayodele, O., Marinkovic, A. et al. Δ9-Tetrahydrocannabivarin (THCV): a commentary on potential therapeutic benefit for the management of obesity and diabetes. J Cannabis Res 2, 6 (2020). https://doi.org/10.1186/s42238-020-0016-7

Citti, C., Linciano, P., Russo, F. et al. A novel phytocannabinoid isolated from Cannabis sativa L. with an in vivo cannabimimetic activity higher than Δ9-tetrahydrocannabinol: Δ9-Tetrahydrocannabiphorol. Sci Rep 9, 20335 (2019). https://doi.org/10.1038/s41598-019-56785-1

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