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アトツギラボ【vol.1】

3月に開催したアトツギラボ【vol.0】を経て、4月に本格スタートした【vol.1】の様子をお届けします!今回もたくさんのアトツギさんにご参加いただき、「対話」と「言語化」にこだわった濃厚な時間を共有しました!


開催場所のこだわり

会場をどこにするのか?アトツギオタクとしてはこだわりたい部分です。場の雰囲気や醸し出す空気感というは、対話に良い影響を与え、場としての価値を高めてくれます。【vol.1】で選んだのは、最近京都でホットな場所、オープン2周年を間近に控えた”SIGHTS KYOTO”です。

SIGHTS KYOTOとは、「バー×観光案内所×コワーキングスペース」で、地元住民と観光客、京都の事業者をつなぐことで京都を持続可能な観光地にしていくための拠点。築100年以上の京町家をリノベーションした観光複合施設で、1階はクラフトビールなどが楽しめるパブ、2・3階はコワーキングスペース・ミーティングルーム。

「SIGHTS KYOTO」HPより引用 
SIGHTS KYOTO(京都市東山区)

京都・五花街の一つ宮川町。一元さんお断りな雰囲気がある通りで、一見入りにくさはありつつも一度店内に足を踏み入れると、陽気な店主と可愛い店員さんが迎えてくれるギャップに惹かれました。この陽気な店主というのが、株式会社ニシザワステイ代表取締役の西澤徹生さんです。ニシザワステイでは、従来の場を巡るだけの観光ではなく、対話を通してこそ京都の本質を感じられる新しい観光「ダイアローグ・ツーリズム」を提唱されていて、それを体現すべく開業されたのがSIGHTS KYOTOです。アトツギラボでも「対話」を軸にした交流を重視しているため、親和性を感じました。昨年京都市主催のイベントで西澤さんと出会い、アトツギラボの構想をお話したところ、会場貸しについてご快諾いただき、今回の実現に至りました。

今回のゲスト

vol.1のゲストは以前から決めていました。何らかの事情で家業に戻り、家業の強みとアトツギ自身の強みを掛け合わせ、逆境を乗り越え、成功したアトツギの事例をよく見聞きするようになりました。こうした事例があることで、次世代のアトツギが刺激を受け、挑戦しようと思う気持ちが醸成されるのは確かです。一方で、世の中には家業を継ぎたくても継げなかった人(あとつけず)がいます。この場合も広義のアトツギだと考えています。家業を継げないという状況から、自分なりの家業の継承の仕方を実現している生き方がかっこいいなと教えてくれたのが、今回のゲストである武田真彦さんです。

Masahiko Takeda

武田さんの家業は西陣織「大樋の黒共」(上質な黒帯)で、和装文化の衰退の影響を受け祖父母の代で廃業。その後、音楽家・アーティストとして、家業に残された素材・技術・歴史を継いでいく見立てを通じて、 サウンドインスタレーション、パフォーミングアーツ、現代美術、工芸など幅広い領域における作品を制作されています。こうした背景をお持ちの武田さんをゲストに迎え、【vol.1】では「家業の強みとは?その強みをどう活かしているのか?自分なりの継承とは何か?」をテーマにしました。

ラボタイム

アトツギオタクからアトツギラボの趣旨を説明した後は、参加者全員で自己紹介。このチェックインの時間があるからこそ、いい感じに場が温まります。そして、ゲストの武田さんから、家業の強みをどう活かして、現在どういった活動をしているのかを具体的にお話しいただきました。実家の工場に眠っていた大樋の黒共を使ったインスタレーション展示や電子音によるライブパフォーマンス、また、他の伝統工芸である京仏具のおりんのブランド「LinNe(南條工房)」とサウンドアーティストのコラボなど、伝統産業や伝統工芸を武田さんならではの視点で解釈し、アーティスティックな方法で表現されている点が面白いです。

武田さんのお話を踏まえて、「家業の強みは何か?それをどう活かしているか?」という問いで、3人組で対話を開始。アトツギさんからは、「家業の"強み"を自分もしかり、先代(現社長)も言えるのか不明」「初代以降、どうしても自身の商いに関する強みを明確に認識するというのは容易なものではない」といった話が出ていて、印象的でした。

対話の様子

音楽家である武田さん、実は音楽は苦手だったみたいで、「自分は好きや得意を突き詰めるよりも、なぜ嫌い(苦手)なのかを考える方が夢中になれた」と話されました。苦手に向き合ったからこそ、そこから新しい価値が生まれている点が非常に学びになります。
また、やりたいことがなかった大学生時代、幼少期から見てきた西陣織の製織にどうしたら関われるのかを祖父母に相談したら、「織物の産業は続けていくのが難しい時代だから、絶対に働くな」と怒られ、家族から、残された黒帯を捨てると言われた時は「もったいない。こんな美しいものを捨てないでくれ」と猛反発されたそうです。「自分自身は技術を継承することができなかったけれども、「自分なりの継承の仕方とは何か?」を考え、継承を大胆に見立てていくことで、新しい方法で表現したい」と熱く語られました。

「自分なりの継承とは?」という問いに対して、「父のようなアイデア力はなく、個人の能力をどう生かそうと考えていたが、自分だけでなく社員さんも含めたチームで新しい価値を生み出せば良いと気付いた」「せっかくの自分のルーツを無駄にしたくない」「先代が繋いできたものを私も繋いでいきたい」など、アトツギさん同士で思いや気付きをシェアしました。

ちなみに、武田さんは、大学卒業後すぐには就職されず、海外を放浪された後、ナイトクラブ、地域おこし協力隊、大手の空間総合プロデュース会社を経て、現在は、株式会社マガザンで、地域のアーティストやクリエイターと一緒に「多様なコミュニティの力で
文化的プロジェクトを社会実装する」仕事をされています。

パブで交流!

ラボタイム終了後はそのまま交流会。1階のパブはめちゃくちゃ交流しやすい空間で、お酒が進みます。

パブで対話は最高!
武田さんとアトツギオタク

アトツギの悩みはアトツギにしか分からないからこそ、困った時に助け合える関係性や切磋琢磨できる関係性が生まれる。そうすると、共創やビジネスマッチングが自然発生的に生まれる。そんなことを妄想しながら、こうした場を続けていくことに意味があると考えています。
最後に、今回嬉しかったことが2つあります。1つは女性のアトツギさんが3人も参加してくれたこと。もう1つがあとつぐかもの大学生(OICコネクトのアトツギイベントで出会いがきっかけ)が参加してくれたこと。幅広くアトツギを捉えているからこそ、多様なアトツギが集まるコミュニティになってほしいと願います。

アトツギラボポーズ!

和菓子の製造販売、餅や赤飯の製造小売、自転車の製造販売、町寺の副住職、石材店、真珠養殖、空調等の設備工事、不動産賃貸、自動車部品の製造、男性化粧品ブランド、仏壇・仏具製作、金融マン、起業家、学生

今回参加の愉快な仲間たち

アトツギラボ vol.1 開催概要
【日 時】2023年4月17日(水)18:30〜
【場 所】SIGHTS KYOTO
【ゲスト】音楽家・アーティスト 武田真彦 氏
【カメラ】村山俊輔


アトツギの未来は地域の未来。

to be continued…


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