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WASABI~名作「レオン」の叶わなかった未来を補う7年越しのアンサームービー~

皆さんの記憶の中に眠るあの素晴らしきB級クソ映画の思い出を掘り起こしていきたい。
そしていつか当時(2002~2008頃)の「木曜洋画劇場」の制作に携わっていた番組関係者の方と繋がり、この「木曜洋画劇場」という枠を作ってきた素晴らしい仕事への感謝の気持ちを直接伝えたい。
そんな想いの元、GOOD GUY’s THURSDAY TV SHOWは毎週木曜日にテレビ東京系列「木曜洋画劇場」で放送されていた映画の紹介をしています。


前回、ターミネーターについての記事を書きました。
そこでも触れましたが、今年公開の「メン・イン・ブラック インターナショナル」「ターミネーター ニュー・フェイト」、来年公開の「トップガン マーヴェリック」、製作が進行中の「マトリックス4」とサングラスアイコンのリバイバルムーブメントが起きています。

そんな中忘れちゃいけない90年代を代表するサングラスアイコンがもう一人います。
そいつの名はレオン。
(※以下、レオンのネタバレ含みます。ご注意を)

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レオンはあの終わり方からすると続編が作られることなんてことはまずないでしょうが…


親子のような関係になれたマチルダとレオン。
結局レオンは志半ばにしてマチルダを守るために自決をし、
残されたマチルダは一人強く生きていくことを誓っていく。

そんな悲しい結末で終わってしまった「レオン」のその後を補うような映画があることを皆さんご存じでしたか?
しかも実は僕たちの住む日本ととーーーーーっても関係深い映画。
今回はそんな隠れた珍作(?)を紹介していきます。

ジャケ

WASABI
2001・仏
監督:ジェラール・クラヴジック
出演:ジャン・レノ、広末涼子他
「木曜洋画劇場」での放送歴:2004年11月25日

「木曜洋画劇場」では1回しか放送したことがなかったのだが、「木曜洋画劇場」という枠で日本人が出ている!日本が舞台になっている!ということに衝撃を受けて妙に印象に残っていました。
広末涼子とジャン・レノが共演しているという異色のタッグですがイマイチ知られていない映画です。

1.映画「WASABI」とは

ベッソンが設立したヨーロッパ・コープの第3弾。彼が製作と脚本を手がけ、監督は「TAXi2」のジェラール・クラブジック。主演は「レオン」以来7年ぶりにベッソン映画に登場するジャン・レノと、「秘密」を見たベッソンが惚れ込んだ広末涼子。
<あらすじ>
強引な捜査で謹慎を命じられた刑事ユベール。そんな彼の元に1本の電話が入った。それは19年前に日本に住んでいたときに愛した女性、ミコの死を知らせるものだった。そして、日本に着いたユベールを待ち受けていたのは、初めて会う自分の娘ユミだった……。

(以上 映画.comより転載)


かつての恋人の死をきっかけに訪れた異国の地・日本で自分の娘と出会ったフランス人の男の話です。

制作・脚本を務めたのはフランス出身の映画監督リュック・ベッソン。
「レオン」「フィフスエレメント」など代表作。

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レオス・カラックスジャン=ジャック・ベネックスらとともにヌーヴェル・バーグ以降のフランス映画界に新しい波を起こした「恐るべき子供たち」の一人
(ジャンプ漫画の敵役みたいな肩書がカッコいい)


主人公の喧嘩っ早い問題刑事ことユベールを演じるのはジャン・レノ。
19年ぶりに訪れた日本で出会った娘ユミを前に困惑しながらもユミを追う謎の黒服たちの追跡を交わしながら心の距離を近づけていく。

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リュック・ベッソンの監督作常連。「レオン」をきっかけにハリウッドでの仕事も増え「ダ・ヴィンチ・コード」などにも出演。
近年は日本の車CMのドラえもん役でもお馴染み。


主人公ユベールの娘役ユミを演じるのは当時21歳だった広末涼子。
軍人だったユベールが19年前、任務で訪れた日本の地で愛した女性ミコとの間に生まれた女の子。
母であるミコがとある理由で亡くなり、相続金を巡って怪しい連中につけ狙われる。

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1997年に「MajiでKoiする5秒前」で歌手デビュー。現在の旦那はキャンドルジュン。

オレンジ色の髪の毛に既視感を覚えたが、これってまさに「フィフス・エレメント」のミラ・ジョボヴィッチだった。
「フィフス・エレメント」も同じくリュック・ベッソンン監督作。
オレンジ色の髪の毛の女の子に何か思い出でもあるのかな、このフランス人監督は。

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※フィフスエレメントも嫌というほどテレビで見たが、「木曜~」では放送されていなかったためこの企画では紹介ができない。


2.単体で見るとたいしたことない


「木曜洋画劇場」で放送された2004年から15年ぶりにこの映画を鑑賞してみて感じたことは「まあなんと大雑把な映画なんだ」ということだった。
もっとテンポよくしっかりアクションをしている映画だと思っていた。

中盤、ゲームセンターでユミの仲間たちと遊んでいるところを黒服に襲撃され、ユベールが迎え撃つというシーンがある。
このゲーセンシーンの懐かしさが半端ない。
90年代の日本のポップな空気感が詰まっていて見ごたえがある。
※ちなみにエンドロールではPUFFYの曲が流れる。

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ユミのボーイフレンド役のイカつい兄ちゃん役として出演する渋川清彦(当時はまだ芸名がKEEだったかな?)と
ダンスダンスレボリューションを踊るジャン・レノが拝めます。

個人的にはこのゲーセンでのシーンが本作の盛り上がりにおける山場だと思っている。

映画全般に関して盛り上がりの緩急が足らず、
ユミが隠された父娘の秘密を知るくだりもあまりに唐突すぎて肩透かしを喰らったり、
タイトルのWASABIの理由もほんとーーーにとってつけたようなしょーもなさがあり「あれ?こんな映画だったけ?」て自分でびっくりしている。

小さい頃遊んでいた公園に足を運ぶと自分の記憶の中の公園より遥かに狭く感じて「あれ、ここってこんな小さかったっけ?」って感覚に陥ったことはないでしょうか。
なんだかそんな感覚だ。


3.「レオン」への回答~7年の歳月を経て~


ここからはこの映画が製作された意図の個人的な考察だ。

本作「WASABI」の脚本を務めたのは言わずもがな知れた「レオン」のリュック・ベッソン。
名作「レオン」と比較すると脚本がリュック・ベッソンで主演がジャンレノというのが全く同じだ。
そして本作ではジャン・レノは本当の父親という「レオン」と違う設定ではあるが、
「歳離れた男と娘が追手から逃れながら心を通わせていく」という基本的なプロットはも変わらない。

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また、「レオン」のマチルダ、「WASABI」のユミの年齢の関係性にも注目したい。
各作品が制作された年は
・「レオン」=1994年
・「WASABI」=2001年
この間には7年の歳月が経っている。

ジャン・レノから守られる少女という役どころにも
・レオンのマチルダは12歳
・「WASABI」のユミは19歳
同じく7年の歳の差がある。
これはただの偶然だろうか。

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ナタリー・ポートマン演じる「レオン」のマチルダ。
1994年制作。12歳という設定。


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広末涼子演じる「WASABI」のユミ。
「レオン」の7年後の2001年制作。19歳という設定。
マチルダのようにいろいろな洋服を着替えてジャン・レノに自慢するというシーンがある。セルフオマージュもいいとこだ!!


もしも偶然出ないとすればここには両作の脚本を書いたリュック・ベッソンの私的な想いが込められているのではないかと思う。

「レオン」では最後、ジャン・レノ演じるレオンはマチルダを残して死んでしまう。

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マチルダの家族の仇、スタンスフィールドを巻き込み手りゅう弾で自爆するレオンの最期。


リュック・ベッソンはこの映画をあまりにも悲しい結末にしてしまったと反省したうえで、レオンのその後の物語として補完できる作品を作りたかったのではないだろうか。それこそが「WASABI」だ。

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しかしそのまんま同じような物語を作るわけにもいかず、2番煎じとさせないために見出したのが異国の地・日本を舞台にして物語に国際性を持たせるという要素だったのではないだろうか。

そして「WASABI」におけるラストで、ユミは父親ユベールのもとで無事に誕生日を迎え、19歳から20歳の成人となる。
ちなみにレオンでは劇中、マチルダの「人生って大人になっても辛いの?」というセリフがある。

7年の時間差が一致していることや大人になるくだりから推測するに本作はどう考えても「人生って大人になっても辛いの?」というセリフの答え、「WASABI」から「レオン」への7年越しの返答としか思えない。

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あくまで「WASABI」を別ものの映画として「レオン」に寄せないために、話を湿っぽくもアクション描写を過激にもしなかったと考えれば、作品全体に漂うチープな感じや物語のメリハリのなさもどこかうなずける。
むしろレオンほど敵が強そうな奴らばかりじゃなくて良かった。
驚くほど弱いラスボスで傷一つ追わなくて本当に良かったよ。

そんな風に「レオン」へのアンサームービーとして捉えてしまうと妙に納得のいく心の中に涼しい風が吹きわたる良作になる。

「レオン」のラストシーンに涙した人にこそ是非見てほしい。
大人になることを受け入れたマチルダと、そのそばに寄り添えることのできたレオンという『もしも』の世界をそこに見出す1作なのである。

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※2019年11月19日現在、Netflix、Prime Video、U-NEXTにて配信中ですよ!!



4.最後に

省略しましたがこの映画、音楽が90年代って感じでサイコーです。
挿入歌がProdigy


エンドロールがPUFFY

このブログをはじめてから思うことは年代を追った音楽の知識も身に着けたいなということです。


以上、GOOD GUY’s THURSDAY TV SHOW第3回目でした。
次回もお楽しみに!!!

≪前回記事はこちらから≫
ターミネーター1~最新作公開記念!今だからこそ観てほしいシリーズの原点~

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