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アイデンティティ

「ハリーポッター観たことないの?やっぱりねえ」とその人は笑いながら言った。ハリーポッターを、GW連休中に8作すべて観たというそのお客さまは、もう少しで会社の会長を引退する70歳の方で、いつも明るくて楽しくて面白い。GWなにしてたんですかと聞くと、ハリーポッターを観ていたという。

ハリーポッターを観たことのないわたしはナルニア派なのであのメガネの主人公と、ハーマイオニーと、金髪の男の子くらいしか知らない。あとヴォルデモート?だっけ?あとナントカ先生…は、Twitterでたまに流れてきていたから知ってはいる。だが、観たことは、まるでない。

「ハリーポッター観たことないの?やっぱりね」これこそがアイデンティティなのではないだろうか。「ハリーポッター観たことないの?なんで?」とならず、「ハリーポッター観たことないの?やっぱりね」と言われるということ。それこそが、わたしを現すものなんじゃないか。アイデンティティの確立なんじゃないか。ハリーポッターを観たことがなさそうな、ハリーポッターを観ていなくてもそれが「やっぱりねえ」と笑って済まされるような、そんな…

赤坂プリンスパークタワーへ行った。夕方、とある理由で赤坂に行くことになり、お店開店まで時間がありすぎたので「じゃあプリンスタワーで軽く飲もうか」となって連れて行ってもらった。その場所から歩いてもいける距離を、タクシー800円払って悠々と向かうその流れに浮足立つ。その人はタクシー運転手が道をすこし間違えてもまったく怒らずにこやかにいるので一緒にいて気持ちがいい。そりゃ大幅に間違えられたりすると腹も立つけど、入口ひとつや道一本はずれたくらいでイヤミを言うのには隣にいてかなわない。その人となりはタクシーに乗ったらわかるというのが持論である。

17時にもなっていない中途半端な時間帯に、ホテルのバーやラウンジを選択するっていいよね。36階の景色はぐるりと解放的で気持ちがいいことこの上ない。皇居を眺めながら乾杯をする。シャンパーニュが飲みたかったのに3種類あるものから1番上のものをろくに見もせず頼んでしまったおかげでアメリカのスパークリングを飲むはめとなった。ビールのような香りが鼻につくのを我慢しながら目の前のスカイビューイングに興じる。

そのあとはまたタクシーで移動して虎ノ門の老舗のそば屋へ。升酒を飲むとき塩を升のふちにつけてそこから啜って飲むというのを初めて知った。知らないことが多いと、楽しいね。ハリーポッターでも観てみるか?うーん、きっと観ないかな。どうだろ。ハリーポッター観るより面白いものがあったら何卒ご一報ください



嬉しい!楽しい!だいすき!