【虚偽日記】太宰?って話

 ある時、私は当時お付き合いしていた女性と川に沿った場所にある温泉地へ旅行へ出かけた。

 美味しいものを食べ、温泉を堪能した夜にフと散歩へ出かけようと提案をした。

 当日は酷い天気で昼間はマトモに出歩けなかったからというのもあったから。

 その場所は川沿いにあったというのもあって浅瀬の川もあり、汚らしい名前に反して川はとても澄んでいて綺麗だった。

 少し蒸し暑かった。
 浴衣に下駄を履いて、カポンかポンと軽快な音を鳴らし、なんとも無い話をしながらただ歩きながら私達はその浅瀬の川に近づた。

 私は下駄を脱ぎ川に片足を入れた。
 そんな時、パッと体が後ろに引っ張られた。

 足が流れに持っていかれたかと思ったが、違った。
 腕を引っ張られたのだ。

 振り返ると彼女は少し泣いていた。
 
 どうしたのだと尋ねると彼女は言った。
「どこかに行ってしまいそうな気がした」
「もう止めて」
 
 大袈裟だな。
 少しの苛立ちを覚えたが、表情が語っていた。
 本気。

 今思い返せば、なんだか死ぬだのなんだのボヤいていた気がする。

 腕を掴まれた時、表情を目にした時、私は愛されているんだと、実感したのである。
 堪らなく愛おしいと。

 川に入って死ぬ。
 私は太宰か何かだと思われている?

 少し茶化した気持ちを抱いた。

 その人はもう私の元に居ない。
 正直、誰に言われたのかも思い出せない。
 思い出そうとして、混ざる。
 思い出が。

 が、誰かにそう言われたのは確かで。

 そんな事を思い出して文を綴る。
 やっぱり私は太宰か?

 最後に軽いジョークを織り込み。
 愛していました。
 

 

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